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25 体育祭

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「なぁ、三枝。
お前が一方的に怒らせたという話は、勘違いじゃないか?」

後ろめたいことがあると、笹部の顔にデカデカ書いてあるぞ?
俺自身には心当たりがないし、あれは三枝を見ていたことを俺に見られて気まずいんじゃないか?

笹部のコートで試合が始まり、速攻でボールを手にした笹部は相手のクラスに一撃。
歓声が上がり、側にいた女子からハイタッチを求められ無視している。
あ、強引に手を合わせられてるな。

昔から、笹部は幼馴染みの三人以外とは距離を取っていたのに珍しい。
ヤマの群れも増えているし、少しは協調性を学んだのか?
俺の背中から顔を出して見ていた三枝は、「笹部君、流石やなぁ」と嬉しそうだ。
だが、背中から出る気はないらしい。

先週の金曜日。
生徒会室で、笹部がフェロモンをぶちまけた日から、三枝は笹部を怒らせてしまったと落ち込んでいる。
ヤマ以外の生徒会役員は、あの強力で暴力的なフェロモンに笹部の強さを改めて実感させられた。
ついあの馬鹿の日頃の言動に忘れてしまうが、ヤマの群れでは次席。
俺はαほどマウントを認識する能力は無いが、馬鹿の強さは肌で感じたしな。


「勘違いやないよ。
あんとき、笹部君、俺のこと睨んでたしぃ」


三枝は、俺の背中に額を押し付けたまま力なく呟く。
笹部に変異種Ωに変えられたβだと察知されず、自然と好意をもってもらいたい、なんて難題に取り組む三枝にはかなりの痛手だったようだ。


「お菓子渡したんが、あかんかったんかなぁ。
それとも、他になんやしてしもたんかなぁ」


この言葉を聞くのは何度目だ?
それに返す言葉は、毎回同じ。
ハッキリと今回も言い切る。


「悩んでいても、答えなんてわからないだろう。
さっさと本人に聞いた方が早い」

「そんなんよぅせぇへんっ
かなちゃんなら出来るんかもしれへんけど」

「いくら考えても、笹部がどう思ってるかなんて分からないんだ。
手っとり早いし、本人に直接確認すれば間違いない」

「それは、わかるけど・・・でも、もし聞いてな?
謝っても許してもらえへんこととか、直しようがないこととかやったら、俺どないしたらえぇん?」


いや、だから、なんでそんなに笹部のことになると悲観的なんだ?
三枝の迷走を一週間近く聞かされている俺は、頭が痛くなってくる。
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