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24 体育祭 side 陸

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「・・・旨かった?」

「うん、美味しかったよ?
リックリクも意地張らずに、海と空と交換して食べたらよかったのに」


あっさり肯定され、ジワリ、涎が口の中に広がる。
やっぱ、旨かったか・・・だよなぁ。
旨そうな匂いしてたしな。

俺にとって、チョコレートは特別だ。
あの日の贖罪を考えるなら、チョコレート絶ちしたって足りねーくらいだが。
あのとき、分けあって口に含んだチョコレートの美味しさと満ち足りた気分は何度でも反芻したくなるくらい強力で抗えない。

二度と会うことも、一緒に食べることも出来ないなら、思い出のチョコレートをと口にしているうちに好物になった。

岬に気付かれないよう生唾を飲み込み、クッソーと前髪をかきむしりたくなる手で目の前の人参をぶつ切りにしていく。

三枝から受け取ったあの大きさも重みも、再現できそうなくらい手にその感触が残っている。

万一、三枝が俺に好意を持つように変わっていたら変異種Ωにしちまうし、直接これを食うわけにはいかないがと惜しむ気持ちで袋を眺め。
海と空と交換して、そっちのを食べることになるのは仕方ないと諦めながら。
自然と緩んじまう口を隠してたんだ。

一度食いそびれている三枝の作ったチョコレートの菓子を、また食べる機会があるとは思ってなかったからな。
ただでさえ好物なんだぜ?
それが俺を想って作られたものじゃなくても、安心して食べることが出来る手作りのチョコレート菓子なんて・・・食いたいに決まってるだろーがっ

あのときの俺は、かなり浮かれていた。

前回は、三枝を泣かせてたし。
今回、笑顔で渡されたのも大きかった。

なのに。


「こらこら、リックリク!
せっかくご飯作ってるんだから、そんな険しい顔しないのっ」

「わーってるよ」


岬に苛立ちを見抜かれる。
あれから5日、岬に食われて3日も経ってんのに未練たらたら。
万一なんかねーんだし、さっさとあの場で食っておけば良かったぜ。
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