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22 夏休み side 命

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「なぁ、なぁ、おっちゃん!
たこ焼きひとつくぅださぁいな!
おっきぃの、入れてーや?
外より中のタコがやで?」

「おっ、にぃちゃんの話し方、K市からきてんのか?
本場のたこ焼き知ってるんやったら、おまけしとくし感想聞かせてくれ!
絶対本場より旨いで!」

「えぇで!
めっちゃ食べんの楽しみやわ!」


軽快なおしゃべりでお店の人と話す三枝君。
僕は、ポンポン飛び交う話を聞き取るのがやっとだよ。
けぇちゃんも隣で黙って見ていた。

菊川君とかなちゃんは、隣の焼きとうもろこし屋さんの列に並び出して、竹居君は「探し物があるから、適当に遊んで適当に帰るから!」と見えなくなってしまった。
松野君と麻野君とも合流できないし、皆大丈夫かな?

たこ焼き屋さんの前で待っている間、三枝君はたこ焼き器が家にあって自分もクルクル回して作れるんだと身ぶり手振りで教えてくれた。
三枝君は、匂いや歌声、外見、踊り、巣作りなどで相手を魅了し変異種Ωに変えてしまうαの特化型一族の中でも求愛給餌特化型の笹部君がΩに作り替えてしまった元β。

ご飯もお菓子も作れるのは、相手の特性に合わせて御両親が教えたんじゃないかな。
特化型一族は相手に受け入れられないことが多いから、徐々にその数は減っていて。
御珠神社にも、相談に訪れる人が多い。

三枝君には、菊川家の送迎車の中で本当は変異種Ωになっていたことをどう思っているのか改めて聞いたことがある。
僕には、βに戻すことも、力になれることも無いんだけど、思い詰めて欲しくなかったから。

三枝君は、ビックリしてから直ぐ破顔して「えーえー、みこちゃん心配してくれてたん?本当とか本当やないとか俺には無いで?変異種Ωになったんは、笹部君と俺の・・・んー、違うな!俺の運命やねん」って。
笑顔で断言してくれた。
小さい頃の自分がしてしまった代償じゃなくて、運命だって言い切れるのが三枝君の凄いところ。

翌週三枝君に会ったとき、僕は祖神様に三枝君の名前を含めて直接御祈祷した恋愛成就の御守りを渡したよ。
三枝君はとても喜んでくれて、いつも身につけると受け取ってくれた。
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