534 / 911
21 夏休み side 倭人
3
しおりを挟む
誰もいないかと思って、ノックもせずに客間の扉を開けると先客がいた。
部屋の奥に置かれた家具に掛かっている布を、背伸びしながら取り外している遥馬さん。
既に両手には抱えきれないくらい布を持っている状態で、更にもう一枚取ろうとして上手くいかなかったのかつま先立ちで手を伸ばしていた。
ゾッとする光景を前に、扉のノブを握ったまま固まってしまう。
遥馬さんは、フラフラしながら俺に気付いてニコッと笑顔を向けてくれたけど。
俺には笑顔を返す余裕なんて微塵もなかった。
「な、何やってるんですかっ」
「え、何って・・・用意なんだけど??
今日はここ使わないんだっけ?」
事の重大さに気付いていない遥馬さんは、なんとか布を手繰り寄せることに成功。
落ちてきた布をキャッチして、両手に集めた白い布をヨイショッと抱え直し、困った顔で部屋を見渡す。
どうやら最後の一枚だったらしく、もし違ったら全部掛け直さなきゃいけないのかと考えていることが表情に出ていた。
南の離れは、兄貴の領域。
家族でも、普段から入ってくるのを心底嫌っていて使用人も置いていない。
兄貴の性格なんだろうな。
使っていない部屋の家具には、全て埃避けの布が掛けてあるらしい。
前回ここを使わせてもらってから、三日と空けずに使うことになっていても習慣になっているのか家具に埃避けの布を覆わせていたようだ。
遥馬さんは、わざわざそれを外してくれていた、だけ、なんだけどさぁ。
「いや、合ってるけど・・・遥馬さんにこんなことさせたなんて兄貴に知らされたら、俺がヤバイんで今回限りにしてください」
ありがとうございましたと形ばかりの御礼を言ってから、遥馬さんの手から布を受取り近くのテーブルにまとめて置いてしまう。
病院で遥馬さんの妊娠が確定してから、兄貴の過保護っぷりには拍車がかかってる。
物を持たせたなんてことが知られたら・・・ブルッ
部屋の奥に置かれた家具に掛かっている布を、背伸びしながら取り外している遥馬さん。
既に両手には抱えきれないくらい布を持っている状態で、更にもう一枚取ろうとして上手くいかなかったのかつま先立ちで手を伸ばしていた。
ゾッとする光景を前に、扉のノブを握ったまま固まってしまう。
遥馬さんは、フラフラしながら俺に気付いてニコッと笑顔を向けてくれたけど。
俺には笑顔を返す余裕なんて微塵もなかった。
「な、何やってるんですかっ」
「え、何って・・・用意なんだけど??
今日はここ使わないんだっけ?」
事の重大さに気付いていない遥馬さんは、なんとか布を手繰り寄せることに成功。
落ちてきた布をキャッチして、両手に集めた白い布をヨイショッと抱え直し、困った顔で部屋を見渡す。
どうやら最後の一枚だったらしく、もし違ったら全部掛け直さなきゃいけないのかと考えていることが表情に出ていた。
南の離れは、兄貴の領域。
家族でも、普段から入ってくるのを心底嫌っていて使用人も置いていない。
兄貴の性格なんだろうな。
使っていない部屋の家具には、全て埃避けの布が掛けてあるらしい。
前回ここを使わせてもらってから、三日と空けずに使うことになっていても習慣になっているのか家具に埃避けの布を覆わせていたようだ。
遥馬さんは、わざわざそれを外してくれていた、だけ、なんだけどさぁ。
「いや、合ってるけど・・・遥馬さんにこんなことさせたなんて兄貴に知らされたら、俺がヤバイんで今回限りにしてください」
ありがとうございましたと形ばかりの御礼を言ってから、遥馬さんの手から布を受取り近くのテーブルにまとめて置いてしまう。
病院で遥馬さんの妊娠が確定してから、兄貴の過保護っぷりには拍車がかかってる。
物を持たせたなんてことが知られたら・・・ブルッ
1
お気に入りに追加
1,440
あなたにおすすめの小説
【完結】幼馴染から離れたい。
June
BL
隣に立つのは運命の番なんだ。
βの谷口優希にはαである幼馴染の伊賀崎朔がいる。だが、ある日の出来事をきっかけに、幼馴染以上に大切な存在だったのだと気づいてしまう。
番外編 伊賀崎朔視点もあります。
(12月:改正版)
嘘の日の言葉を信じてはいけない
斯波良久@出来損ないΩの猫獣人発売中
BL
嘘の日--それは一年に一度だけユイさんに会える日。ユイさんは毎年僕を選んでくれるけど、毎回首筋を噛んでもらえずに施設に返される。それでも去り際に彼が「来年も選ぶから」と言ってくれるからその言葉を信じてまた一年待ち続ける。待ったところで選ばれる保証はどこにもない。オメガは相手を選べない。アルファに選んでもらうしかない。今年もモニター越しにユイさんの姿を見つけ、選んで欲しい気持ちでアピールをするけれど……。
完結・虐げられオメガ側妃が敵国に売られたら、激甘ボイスのイケメン王に味見されました
美咲アリス
BL
虐げられオメガ側妃のシャルルは敵国への貢ぎ物にされた。敵国のアルベルト王は『人間を食べる』という恐ろしい噂があるアルファだ。けれども実際に会ったアルベルト王はものすごいイケメン。しかも「今日からそなたは国宝だ」とシャルルに激甘ボイスで囁いてくる。「もしかして僕は国宝級の『食材』ということ?」シャルルは恐怖に怯えるが、もちろんそれは大きな勘違いで⋯⋯? 虐げられオメガと敵国のイケメン王、ふたりのキュン&ハッピーな異世界恋愛オメガバースです!
僕の番
結城れい
BL
白石湊(しらいし みなと)は、大学生のΩだ。αの番がいて同棲までしている。最近湊は、番である森颯真(もり そうま)の衣服を集めることがやめられない。気づかれないように少しずつ集めていくが――
※他サイトにも掲載
欠陥αは運命を追う
豆ちよこ
BL
「宗次さんから番の匂いがします」
従兄弟の番からそう言われたアルファの宝条宗次は、全く心当たりの無いその言葉に微かな期待を抱く。忘れ去られた記憶の中に、自分の求める運命の人がいるかもしれないーー。
けれどその匂いは日に日に薄れていく。早く探し出さないと二度と会えなくなってしまう。匂いが消える時…それは、番の命が尽きる時。
※自己解釈・自己設定有り
※R指定はほぼ無し
※アルファ(攻め)視点
上手に啼いて
紺色橙
BL
■聡は10歳の初めての発情期の際、大輝に噛まれ番となった。それ以来関係を継続しているが、愛ではなく都合と情で続いている現状はそろそろ終わりが見えていた。
■注意*独自オメガバース設定。■『それは愛か本能か』と同じ世界設定です。関係は一切なし。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる