525 / 911
20 夏休み side 翔
13
しおりを挟む
階段を一段上がるごとに、緊張で掌に汗が滲み、喉が渇いてくる。
笹部先輩と二人で話すのは初めてだ。
以前、菊川先輩に挨拶に伺った時は、笹部先輩以外にも松野先輩や竹居先輩もいたしな。
笹部先輩は、俺が立ち上がったときに挨拶に行こうとしていることには気付いたようだ。
気にするなと首を軽く左右に振られたが、こちらとしてはそういうわけにもいかない。
笹部先輩は、苦笑いをしてコートに目を向けてしまった。
挨拶の時も緊張はしていたけれど、菊川先輩が俺に対して威圧も査定もせず受け入れてくれていたから、他の三人からフェロモンをぶつけられることは無かった。
笹部先輩は、菊川先輩の群れにいても他の二人とは違って向かってくる相手には容赦なく牙を剥いていた好戦的な人だ。
ここがβがメインの場所だとわかっていても、何か気に障ることをしてしまったら・・・どうなるかわからない怖さがある。
実際に、その現場に居合わせるというか。
見てはいないけれど、笹部先輩のフェロモンを肌で感じたことがあるからなぁ。
眉間に皺が寄りそうになり、そっと指の背で伸ばした。
笹部先輩の威圧フェロモンで、そのとき敵対していたαが敗北したのは間違いない。
俺が感じたのはそのフェロモンの余波。
中等部の渡り廊下に、野次馬になって眺めていたβがバタバタ倒れているのが見えていても、助け起こすために近付くことが出来なかった。
背後から首を握り潰されるような、リアルな死まで直結する感触がここから暫く抜けなかったし。
笹部先輩と同じ高さまでたどり着いたとき、思わず首の背に手を当てていた。
笹部先輩と二人で話すのは初めてだ。
以前、菊川先輩に挨拶に伺った時は、笹部先輩以外にも松野先輩や竹居先輩もいたしな。
笹部先輩は、俺が立ち上がったときに挨拶に行こうとしていることには気付いたようだ。
気にするなと首を軽く左右に振られたが、こちらとしてはそういうわけにもいかない。
笹部先輩は、苦笑いをしてコートに目を向けてしまった。
挨拶の時も緊張はしていたけれど、菊川先輩が俺に対して威圧も査定もせず受け入れてくれていたから、他の三人からフェロモンをぶつけられることは無かった。
笹部先輩は、菊川先輩の群れにいても他の二人とは違って向かってくる相手には容赦なく牙を剥いていた好戦的な人だ。
ここがβがメインの場所だとわかっていても、何か気に障ることをしてしまったら・・・どうなるかわからない怖さがある。
実際に、その現場に居合わせるというか。
見てはいないけれど、笹部先輩のフェロモンを肌で感じたことがあるからなぁ。
眉間に皺が寄りそうになり、そっと指の背で伸ばした。
笹部先輩の威圧フェロモンで、そのとき敵対していたαが敗北したのは間違いない。
俺が感じたのはそのフェロモンの余波。
中等部の渡り廊下に、野次馬になって眺めていたβがバタバタ倒れているのが見えていても、助け起こすために近付くことが出来なかった。
背後から首を握り潰されるような、リアルな死まで直結する感触がここから暫く抜けなかったし。
笹部先輩と同じ高さまでたどり着いたとき、思わず首の背に手を当てていた。
1
お気に入りに追加
1,440
あなたにおすすめの小説
【完結】幼馴染から離れたい。
June
BL
隣に立つのは運命の番なんだ。
βの谷口優希にはαである幼馴染の伊賀崎朔がいる。だが、ある日の出来事をきっかけに、幼馴染以上に大切な存在だったのだと気づいてしまう。
番外編 伊賀崎朔視点もあります。
(12月:改正版)
嘘の日の言葉を信じてはいけない
斯波良久@出来損ないΩの猫獣人発売中
BL
嘘の日--それは一年に一度だけユイさんに会える日。ユイさんは毎年僕を選んでくれるけど、毎回首筋を噛んでもらえずに施設に返される。それでも去り際に彼が「来年も選ぶから」と言ってくれるからその言葉を信じてまた一年待ち続ける。待ったところで選ばれる保証はどこにもない。オメガは相手を選べない。アルファに選んでもらうしかない。今年もモニター越しにユイさんの姿を見つけ、選んで欲しい気持ちでアピールをするけれど……。
欠陥αは運命を追う
豆ちよこ
BL
「宗次さんから番の匂いがします」
従兄弟の番からそう言われたアルファの宝条宗次は、全く心当たりの無いその言葉に微かな期待を抱く。忘れ去られた記憶の中に、自分の求める運命の人がいるかもしれないーー。
けれどその匂いは日に日に薄れていく。早く探し出さないと二度と会えなくなってしまう。匂いが消える時…それは、番の命が尽きる時。
※自己解釈・自己設定有り
※R指定はほぼ無し
※アルファ(攻め)視点
僕の番
結城れい
BL
白石湊(しらいし みなと)は、大学生のΩだ。αの番がいて同棲までしている。最近湊は、番である森颯真(もり そうま)の衣服を集めることがやめられない。気づかれないように少しずつ集めていくが――
※他サイトにも掲載
完結・虐げられオメガ側妃が敵国に売られたら、激甘ボイスのイケメン王に味見されました
美咲アリス
BL
虐げられオメガ側妃のシャルルは敵国への貢ぎ物にされた。敵国のアルベルト王は『人間を食べる』という恐ろしい噂があるアルファだ。けれども実際に会ったアルベルト王はものすごいイケメン。しかも「今日からそなたは国宝だ」とシャルルに激甘ボイスで囁いてくる。「もしかして僕は国宝級の『食材』ということ?」シャルルは恐怖に怯えるが、もちろんそれは大きな勘違いで⋯⋯? 虐げられオメガと敵国のイケメン王、ふたりのキュン&ハッピーな異世界恋愛オメガバースです!
上手に啼いて
紺色橙
BL
■聡は10歳の初めての発情期の際、大輝に噛まれ番となった。それ以来関係を継続しているが、愛ではなく都合と情で続いている現状はそろそろ終わりが見えていた。
■注意*独自オメガバース設定。■『それは愛か本能か』と同じ世界設定です。関係は一切なし。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる