ヘタレαにつかまりまして ２

18 運命の人

20

ヤマは、よっぽど清人さんの対応に疲れているのか、他にΩの俺にはわからない理由があるのか。
少し俺に身体を預けてきて、覆い被さったまま動かない。
清人さんの気に障らないよう、俺を隠れ蓑にしてるみたいに大人しい。
俺も、黙って待っていた方が良さそうだなと感じて、そのままの体勢で二人の帰りを待つことにした。




「よっしっっ
お待たせっっ」


半時間以上は待っていたように思う。
バーンッと勢いよく扉が開いたときに、この重たい空気から解放されるのかとホッとしたんだが。
入ってきた陽太さんが、遥馬さんを引きずって現れたので驚いた。

両手で遥馬さんの右手をしっかりと捕まえているから、もしかして扉を蹴飛ばして開けたんだろうか？
部屋の中に遥馬さんが入ると、陽太さんは当たり前のように足で扉を閉めている。
足での開閉は、常習犯なのかもしれないな。

部屋の中に入らされた遥馬さんは、明らかに挙動不審。
閉じた扉のノブに左手を精一杯伸ばして、なんとか掴もうと抵抗している。


「よ、よ、陽太さんんんんんっ
俺、まだ、心の準備がぁあっっ」


出ていくまでと随分様子が違うな。
遥馬さんは目に涙を溜めて半泣きだが、陰鬱な雰囲気は全く残っていない。
陽太さんは満面の笑みで、抵抗をものともせずに清人さんの方へ進んでいる。

うん、これは・・・思わずニヤッと笑ってしまい陽太さんとも目が合う。
陽太さんは、今度は怒らずに笑い返してくれた。


「そうか、そうなんだな」


直接清人さんにはお二人が伝えるだろうから、こっそり嬉しさを噛み締める。


「カナ、何かあった？」


ヤマに、ひっそりと漏らした声を聞かれていたようだ。
陽太さん達が戻ってきて、ヤマの拘束も緩んだ。
右手を握られて、隣にピタッと引っ付いて来てくれる。

俺がここで話したら、うっかりヤマが大きな声を出すかもしれない。
それに、理由もわかって安心出来たからだろうな。
ヤマにはまだわからず、俺には分かっているこの珍しい状況が楽しくなってきたぞ。


「まだ内緒」


陽太さんの真似をして、ヤマに向かってシーッと唇の前で左の人差し指を立ててクスリと笑った。