447 / 911
17 メモ
2
しおりを挟む
「あ、あんなぁ」
振り絞られた三枝の声は、固く、弱く、そしてどうしようもなく震えていた。
どれだけの恐怖と、戦っているのだろう。
左右に揺れて定まらない瞳は、涙を浮かべ、今にも崩れそうだ。
貰い泣きしそうになる。
樟葉も俺も、こんなに近くにいるのについていてやることしかできない。
少しはここにいることで、三枝の力になっているんだろうか。
もっと、三枝に何かしてやりたいのに。
緊迫した雰囲気に包まれたダイニング。
マシンガントークを止めどなく打ち出していた頼子さんも、穏やかな笑みを絶やさなかった道成さんも、固唾を飲んで見守る。
全員の目が、瞳を潤ませた三枝に集中していた。
「ぉ、ぉれぇ、俺なぁっ
お・・・ぉめ、Ωになっててん!」
三枝は、御両親の顔を最後まで見ることができず、目を閉じてなんとか言い切った。
悲鳴のような告白。
ポロポロと涙が頬を伝う。
三枝の唇から、堪え切れない嗚咽が漏れる。
こ、こんなとき、どうしたらいいんだ?!
御両親は、思いがけない告白に呆然。
三枝が、冗談や嘘で言っているわけじゃないのは理解されたんだろう。
ヘナヘナと、二人揃って椅子に腰を下ろした。
ショックが大きいせいか、すぐには言葉が出てこないようだ。
「・・・三枝君、座って?」
樟葉は立ち上がり、その席を三枝に譲る。
右手で背中を擦ったまま、三枝の手を握った左手は離さない。
三枝は、言われるがまま椅子に腰掛け、とうとう声をあげて泣き出してしまった。
振り絞られた三枝の声は、固く、弱く、そしてどうしようもなく震えていた。
どれだけの恐怖と、戦っているのだろう。
左右に揺れて定まらない瞳は、涙を浮かべ、今にも崩れそうだ。
貰い泣きしそうになる。
樟葉も俺も、こんなに近くにいるのについていてやることしかできない。
少しはここにいることで、三枝の力になっているんだろうか。
もっと、三枝に何かしてやりたいのに。
緊迫した雰囲気に包まれたダイニング。
マシンガントークを止めどなく打ち出していた頼子さんも、穏やかな笑みを絶やさなかった道成さんも、固唾を飲んで見守る。
全員の目が、瞳を潤ませた三枝に集中していた。
「ぉ、ぉれぇ、俺なぁっ
お・・・ぉめ、Ωになっててん!」
三枝は、御両親の顔を最後まで見ることができず、目を閉じてなんとか言い切った。
悲鳴のような告白。
ポロポロと涙が頬を伝う。
三枝の唇から、堪え切れない嗚咽が漏れる。
こ、こんなとき、どうしたらいいんだ?!
御両親は、思いがけない告白に呆然。
三枝が、冗談や嘘で言っているわけじゃないのは理解されたんだろう。
ヘナヘナと、二人揃って椅子に腰を下ろした。
ショックが大きいせいか、すぐには言葉が出てこないようだ。
「・・・三枝君、座って?」
樟葉は立ち上がり、その席を三枝に譲る。
右手で背中を擦ったまま、三枝の手を握った左手は離さない。
三枝は、言われるがまま椅子に腰掛け、とうとう声をあげて泣き出してしまった。
1
お気に入りに追加
1,435
あなたにおすすめの小説
親友だと思ってた完璧幼馴染に執着されて監禁される平凡男子俺
toki
BL
エリート執着美形×平凡リーマン(幼馴染)
※監禁、無理矢理の要素があります。また、軽度ですが性的描写があります。
pixivでも同タイトルで投稿しています。
https://www.pixiv.net/users/3179376
もしよろしければ感想などいただけましたら大変励みになります✿
感想(匿名)➡ https://odaibako.net/u/toki_doki_
Twitter➡ https://twitter.com/toki_doki109
素敵な表紙お借りしました!
https://www.pixiv.net/artworks/98346398
別れてくれない夫は、私を愛していない
abang
恋愛
「私と別れて下さい」
「嫌だ、君と別れる気はない」
誕生パーティー、結婚記念日、大切な約束の日まで……
彼の大切な幼馴染の「セレン」はいつも彼を連れ去ってしまう。
「ごめん、セレンが怪我をしたらしい」
「セレンが熱が出たと……」
そんなに大切ならば、彼女を妻にすれば良かったのでは?
ふと過ぎったその考えに私の妻としての限界に気付いた。
その日から始まる、私を愛さない夫と愛してるからこそ限界な妻の離婚攻防戦。
「あなた、お願いだから別れて頂戴」
「絶対に、別れない」
【R18BL】世界最弱の俺、なぜか神様に溺愛されているんだが
ちゃっぷす
BL
経験値が普通の人の千分の一しか得られない不憫なスキルを十歳のときに解放してしまった少年、エイベル。
努力するもレベルが上がらず、気付けば世界最弱の十八歳になってしまった。
そんな折、万能神ヴラスがエイベルの前に姿を現した。
神はある条件の元、エイベルに救いの手を差し伸べるという。しかしその条件とは――!?
国外追放者、聖女の護衛となって祖国に舞い戻る
はにわ
ファンタジー
ランドール王国最東端のルード地方。そこは敵国や魔族領と隣接する危険区域。
そのルードを治めるルーデル辺境伯家の嫡男ショウは、一年後に成人を迎えるとともに先立った父の跡を継ぎ、辺境伯の椅子に就くことが決定していた。幼い頃からランドール最強とされる『黒の騎士団』こと辺境騎士団に混ざり生活し、団員からの支持も厚く、若大将として武勇を轟かせるショウは、若くして国の英雄扱いであった。
幼馴染の婚約者もおり、将来は約束された身だった。
だが、ショウと不仲だった王太子と実兄達の謀略により冤罪をかけられ、彼は廃嫡と婚約者との婚約破棄、そして国外追放を余儀なくされてしまう。彼の将来は真っ暗になった。
はずだったが、2年後・・・ショウは隣国で得意の剣術で日銭を稼ぎ、自由気ままに暮らしていた。だが、そんな彼はひょんなことから、旅をしている聖女と呼ばれる世界的要人である少女の命を助けることになる。
彼女の目的地は祖国のランドール王国であり、またその命を狙ったのもランドールの手の者であることを悟ったショウ。
いつの間にか彼は聖女の護衛をさせられることになり、それについて思うこともあったが、祖国の現状について気になることもあり、再び祖国ランドールの地に足を踏み入れることを決意した。
【完結】女神に殺されて死神にされました。でも助けた令嬢がドストライクで困ってます
黄色いひよこ
恋愛
『運命の女神フォルトゥナ』の御使いは、この世の者とは思えない神の造りし造形と呼ばれる美しい青年であった。
魂の美しさに比例して、魂が輝く度に美しさを増す彼。
その反面、心は彼に魅了される人々に傷付けられて傷を負っていた。
そんな中、彼は女神に請われるまま、漆黒の衣装を身に纏い、顔の半分と半身を異形の仮面と変化で隠し、己の身体よりも巨大な大鎌を振り抜いてゆく。
その姿は、『死神』そのものだった。
そんな彼が初めて出逢った少女は、『ヒロイン』と呼ばれる少女に無惨に惨殺される悲しい『悪役令嬢』であった。
フォルトゥナが彼に下した命は、『悪役令嬢』と言われる彼女の、その悲惨なループを断ち切る事。
彼は、『悪役令嬢』こと、キャサリン=レイアース侯爵令嬢の、運命の歯車を変える事が出来るのか。
心優しき『悪役令嬢』と、御使いと言う名の『死神』との、心の交流と愛の行方を描くダークファンタジー此処に開幕!
※ 全部書き終わっております。
後は更新して行くだけですのでご安心下さい。
【完結】そんなに側妃を愛しているなら邪魔者のわたしは消えることにします。
たろ
恋愛
わたしの愛する人の隣には、わたしではない人がいる。………彼の横で彼を見て微笑んでいた。
わたしはそれを遠くからそっと見て、視線を逸らした。
ううん、もう見るのも嫌だった。
結婚して1年を過ぎた。
政略結婚でも、結婚してしまえばお互い寄り添い大事にして暮らしていけるだろうと思っていた。
なのに彼は婚約してからも結婚してからもわたしを見ない。
見ようとしない。
わたしたち夫婦には子どもが出来なかった。
義両親からの期待というプレッシャーにわたしは心が折れそうになった。
わたしは彼の姿を見るのも嫌で彼との時間を拒否するようになってしまった。
そして彼は側室を迎えた。
拗れた殿下が妻のオリエを愛する話です。
ただそれがオリエに伝わることは……
とても設定はゆるいお話です。
短編から長編へ変更しました。
すみません
【続篇完結】第四皇子のつがい婚―年下皇子は白百合の香に惑う―
熾月あおい
BL
嶌国の第四皇子・朱燎琉(α)は、貴族の令嬢との婚約を前に、とんでもない事故を起こしてしまう。発情して我を失くし、国府に勤める官吏・郭瓔偲(Ω)を無理矢理つがいにしてしまったのだ。
その後、Ωの地位向上政策を掲げる父皇帝から命じられたのは、郭瓔偲との婚姻だった。
納得いかないながらも瓔偲に会いに行った燎琉は、そこで、凛とした空気を纏う、うつくしい官吏に引き合わされる。漂うのは、甘く高貴な白百合の香り――……それが燎琉のつがい、瓔偲だった。
戸惑いながらも瓔偲を殿舎に迎えた燎琉だったが、瓔偲の口から思ってもみなかったことを聞かされることになる。
「私たちがつがってしまったのは、もしかすると、皇太子位に絡んだ陰謀かもしれない。誰かの陰謀だとわかれば、婚約解消を皇帝に願い出ることもできるのではないか」
ふたりは調査を開始するが、ともに過ごすうちに燎琉は次第に瓔偲に惹かれていって――……?
※「*」のついた話はR指定です、ご注意ください。
※第11回BL小説大賞エントリー中。応援いただけると嬉しいです!
光のもとで1
葉野りるは
青春
一年間の療養期間を経て、新たに高校へ通いだした翠葉。
小さいころから学校を休みがちだった翠葉は人と話すことが苦手。
自分の身体にコンプレックスを抱え、人に迷惑をかけることを恐れ、人の中に踏み込んでいくことができない。
そんな翠葉が、一歩一歩ゆっくりと歩きだす。
初めて心から信頼できる友達に出逢い、初めての恋をする――
(全15章の長編小説(挿絵あり)。恋愛風味は第三章から出てきます)
10万文字を1冊として、文庫本40冊ほどの長さです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる