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16 社宅

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三枝の足下で膝を折り、番避けと抑制剤の説明を丁寧にしていた萩野がそれを終えて立ち上がった。
樟葉は、黙って三枝の様子を見守っている。


「今お渡しした抑制剤は、あくまで緊急処置。
発情してから使われるものです。
発情期の周期に合わせて事前に錠剤を服用し、発情自体を抑えることも可能ですが、そちらは体質等の詳しい検査が必要ですからね。
後日、御両親とこちらの病院を受診して処方して貰ってください」


「えぇっ・・・おとんとおかんに言わなあかんの?」


三枝の表情が、また不安に染まる。
手に握っていた抑制剤を机に戻し、途方にくれた顔で萩野を見上げた。


「三枝様は未成年ですしね。
それに、一緒に生活される御両親の理解と協力は必要ですよ」


確かにな。
一番身近な家族に、Ωであることを隠し通すことは危険だ。
心づもり無しに、突然目の前で三枝が発情したら、近くにいるαから遠ざける等のフォローもして貰えないだろう。
Ωになった息子を受け入れてくれるのか、その不安も大きいが。

萩野の正論に、「そっかぁ」と三枝は力なく項垂れた。
発情を実際に体験するまでは、検査結果を信じたくない、信じられない気持ちは残る。
今の段階から、人に知られたくない気持ちもわかる。
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