可愛いΩのナカセカタ

三日月

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番外編

真似っこ、お揃い、あのひとと 20

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 目覚めた雪さんの入院は、追加で一週間と診断された。やはり、違法な薬を使われているので検査を重ねる必要があるらしい。平日の放課後は、病院に寄ってからアングラでの強制合宿コース。休日は、朝からアングラに籠もって夕方雪さんに会いに行った。
 由良を泣かせた連帯責任の名のもと、一律同じ内容のアレコレをするよう親父様からお達しが来ていたけれど。いつも通りの指示に従っていても雪さんを守るレベルには届かない。

 喜々としてその倍量をこなす風音のようにはいかないが、真似て少しは追いつこうと無理をしたら途中で気を失いその風音に介抱されていた。では、他の方向からアプローチしようと、フェロモン強化を狙ってみたものの、親父様のような強大な力が目覚めるわけでも無く・・・自分の力の範囲内で出来る小手先の技術しか身につかなかった。短期間でのフェロモン操作の上達を、凪には「たいしたものですよ」と慰められたが。凪が俺の年には、離れた標的に照準を合わせてフェロモンを放つといった、今の俺には到底出来ないことを取得していたのを知っている。自分の取り柄の無さに失望、落胆。こんなことでは、雪さんを守ることなんて到底出来ない。

 退院の日。
 雪さんが居ない間にすっかり荒れていた家の掃除をしてから、病院へ迎う。その足取りは重く、視線も自然と下っていた。鬱々考え込んでいたから視界も狭くなっていたようで、会計を終えた雪さんが玄関入ってすぐのベンチで待っていてくれたのにも気付けなかった。


「あほ嵐っ
 てめぇは、だーれを迎えに来てんだ?」

「・・・あ、雪さん」


 久しぶりに見る普段着の雪さんが新鮮で、反応も遅れてしまった。またボタンをせずに胸元をちらつかせて・・・俺に力があれば、雪さんがどんな格好をしていても手を出してくる輩はいないのにな。
 一際目立つ真っ白な髪を帽子に隠していても、雪さんの透けるような肌や赤い瞳は立っているだけで目を引く。


「まぁた、ウジウジしてんのかよ?
 もうケガもだいたい治ってんだから、しけた顔をしてんなよ、根暗坊主が」


 酷い目にあった雪さんに気を使われ、咄嗟に「すみません」と頭を下げていた。雪さんは、その指でクシャクシャに俺の髪を掻き混ぜたあと、ペチッと軽く叩いた。


「アホ、さっさとけぇーるぞっ」
 

 歩き出した背中を追いかけ、慌ててその肩に掛かっている荷物を取り上げる。退院許可も降りて、見える場所に包帯も無い。歩き方に不自然さも無いけれど・・・横顔を盗み見ると、時折眉をひそめて痛みを散らそうとしていた。

 俺が今回のことを気に病んでるせいで、雪さんに無理をさせている。申し訳なくて、無意識の内にカバンを持つ手に力を込めていた。
 身体能力やフェロモンの強化を諦めるつもりは無いけれど、雪さんを守るために俺が出来ることがもっと他にないか探そう。探して、この手で雪さんを守るんだ。

 雪さん、俺、もっと強くなりますから。
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