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番外編
真似っこ、お揃い、あのひとと 17
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◼嵐 18歳の場合◼
打撲、裂傷、内出血・・・それぞれ適正な処置を受け、病院の個室ベットで眠る雪さん。顔から白さが更に抜け落ちて、浅い呼吸は布団の上からでは確認できないほど。命に別状はない、とは言われたが。
雪さんが生きているのか、何度も口元に顔を近づけて確かめてしまうほどその身体は微動だにしない。抑制剤と鎮静剤、解熱剤に避妊薬。効果の強い薬を併用しなくてはならない状況が、また繰り返されたことに・・・自分の力の弱さが、雪さんに悪影響にしかならないこの状況に。
「・・・すみません」
冷たい雪さんの手を優しく握り、心を込めて謝罪する。痛々しい拘束の跡を包帯で隠した手首に、涙が落ちては吸い込まれる。泣いて謝ることしかできない自分の不甲斐なさを思い知る。この人を、ただ自分のものにしたいという幼い俺の我が儘が招いたのは。この人を傷つける、終わりが見えない連鎖。
番になってから平和に過ぎたのは、初めの二年間。萩野の番避けを貸与してもらった、絶対強者に守られた二年の猶予期間だけ。それが外れた途端、手を出せずに待ち構えていたヤツラが次々現れた。希少なアルビノΩを闇市場で売りさばこうと、雪さんを狙い、青嵐達に何度も助けられた。
雪さんが拉致られた先で、身体を蹂躙されたのもこれが初めてじゃない。番以外を受け入れることがどれほど耐え難いか。それはαの俺には想像しかできないけれど。「因果オーホーってヤツだな」と、毎回意識を取り戻した雪さんは、全てを自嘲で受け流し俺を一度も責めない。過去に自分がしてきたことだから気にすんなと、嗤って俺に言い聞かせる。そんなことで、流せるような痛みじゃないのに。俺がそれを言わせてしまっている。
今回雪さんを救出してくれた風音は、強姦までされた事態に「油断していた」と罰が悪そうだった。それは、雪さんのフォローを群れのリーダーである青嵐へ一任している俺も同罪だからなにも言えない。ここしばらくは、拉致だけで済ませる相手も続いていた。そんな油断もあった。
萩野の番避けを外した途端、拉致されたとき。俺から雪さんに、もう一度萩野の番避けをつけるようにお願いしたけれど。俺の情けない、捨てきれないプライドを見透かされて断られ。そのあと何度同じ目にあっても、雪さんは俺がお願いしようとすると「気にすんな」と先手を打って俺を慰めて話を終わらせる。
頼りない、力もない、我が儘な俺に雪さんは全部を預けてくれているのに。俺はなにも報いることが出来ない。
出来の悪い弟を見る目で俺を赦しつづける雪さん。
因果応報だと俺をかばわないでください。
今の雪さんが傷つけられるのは、番の俺があなたを守れていないからだ。所属する群れの力、青嵐達の力を知ってもまだ手を出されるのは、番相手の俺が隙だらけだからだ。
きっと今回も、雪さんは「因果応報」の言葉で何事も無かったように流すんでしょうね。こんな俺を番相手に選んだのは自分なんだと、俺を責めることなくいつもの日常に戻ろうとするんでしょうね。
身の程知らずな俺に、雪さんはこれから先もずっと縛られたままなのに。
打撲、裂傷、内出血・・・それぞれ適正な処置を受け、病院の個室ベットで眠る雪さん。顔から白さが更に抜け落ちて、浅い呼吸は布団の上からでは確認できないほど。命に別状はない、とは言われたが。
雪さんが生きているのか、何度も口元に顔を近づけて確かめてしまうほどその身体は微動だにしない。抑制剤と鎮静剤、解熱剤に避妊薬。効果の強い薬を併用しなくてはならない状況が、また繰り返されたことに・・・自分の力の弱さが、雪さんに悪影響にしかならないこの状況に。
「・・・すみません」
冷たい雪さんの手を優しく握り、心を込めて謝罪する。痛々しい拘束の跡を包帯で隠した手首に、涙が落ちては吸い込まれる。泣いて謝ることしかできない自分の不甲斐なさを思い知る。この人を、ただ自分のものにしたいという幼い俺の我が儘が招いたのは。この人を傷つける、終わりが見えない連鎖。
番になってから平和に過ぎたのは、初めの二年間。萩野の番避けを貸与してもらった、絶対強者に守られた二年の猶予期間だけ。それが外れた途端、手を出せずに待ち構えていたヤツラが次々現れた。希少なアルビノΩを闇市場で売りさばこうと、雪さんを狙い、青嵐達に何度も助けられた。
雪さんが拉致られた先で、身体を蹂躙されたのもこれが初めてじゃない。番以外を受け入れることがどれほど耐え難いか。それはαの俺には想像しかできないけれど。「因果オーホーってヤツだな」と、毎回意識を取り戻した雪さんは、全てを自嘲で受け流し俺を一度も責めない。過去に自分がしてきたことだから気にすんなと、嗤って俺に言い聞かせる。そんなことで、流せるような痛みじゃないのに。俺がそれを言わせてしまっている。
今回雪さんを救出してくれた風音は、強姦までされた事態に「油断していた」と罰が悪そうだった。それは、雪さんのフォローを群れのリーダーである青嵐へ一任している俺も同罪だからなにも言えない。ここしばらくは、拉致だけで済ませる相手も続いていた。そんな油断もあった。
萩野の番避けを外した途端、拉致されたとき。俺から雪さんに、もう一度萩野の番避けをつけるようにお願いしたけれど。俺の情けない、捨てきれないプライドを見透かされて断られ。そのあと何度同じ目にあっても、雪さんは俺がお願いしようとすると「気にすんな」と先手を打って俺を慰めて話を終わらせる。
頼りない、力もない、我が儘な俺に雪さんは全部を預けてくれているのに。俺はなにも報いることが出来ない。
出来の悪い弟を見る目で俺を赦しつづける雪さん。
因果応報だと俺をかばわないでください。
今の雪さんが傷つけられるのは、番の俺があなたを守れていないからだ。所属する群れの力、青嵐達の力を知ってもまだ手を出されるのは、番相手の俺が隙だらけだからだ。
きっと今回も、雪さんは「因果応報」の言葉で何事も無かったように流すんでしょうね。こんな俺を番相手に選んだのは自分なんだと、俺を責めることなくいつもの日常に戻ろうとするんでしょうね。
身の程知らずな俺に、雪さんはこれから先もずっと縛られたままなのに。
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