可愛いΩのナカセカタ

番外編

嵐に舞う雪 ２０

「暴行傷害事件で立件しようと思ったら先に帰ってるし、帰ってきてからずっと無言だし」

「・・・俺が被害者で警察の世話とか、ありえねーっつぅの。
　だいたい、てめぇも、喋らねぇし・・・」


　は？裾が引きちぎられた服をそのまま着て、ご飯出されてる身にもなって欲しい。雪さんがそう言うところを気にしないのはわかっていても、他の人間の手に奪われそうになった現実を突きつけられ、自分の不甲斐なさを痛感させられていたんだ。
　雪さんを守りきれない自分の弱さを棚に上げて、雪さんに俺以外の臭いがついているのも許せない。俺は、雪さんに関しては自分勝手で小さい人間なんだ。着替えろと言って素直に聞くことが無いだけに、風呂場に放り込んでやろうかと思ったくらい。


「連絡無しで大学に入るし」


　最近は、未然に防げてますが、何度も拉致され、襲われたことがあるんですから、自助努力をして欲しい。大学には、バカ学生も多いんです。こちらに来るときは、駅まで俺が迎えにいくと言っておいたのに。


「そ、れは、たまたま、そぅだよ、たまたま、こー足がだな」

「白い男が連れ込まれてると聞いて、俺がなにも感じなかったとでも？」


　うぐぅっと黙る雪さん。本当に、勘弁して欲しい。薄暗い部室の中で、複数のαやβに囲まれていた雪さんの姿に、どれだけこの人は俺にゾッとさせれば気が済むのかと怒りで身震いしたほどだ。
　雪さんは、アルビノΩという存在は。俺が考えていた以上に人を呼ぶ。大人しく部屋で飼われるような雪さんは、雪さんじゃ無いけれど。

　いい加減、閉じ込めたい。

　親父様には、「考える時間はやったのに、番にするからだ」と馬鹿にされるんだろうけど。