可愛いΩのナカセカタ

番外編

嵐に舞う雪 １０

　雪さんは、自分がΩだったことを受け入れた時に、自分を売った人間に見当はついていたらしい。この点に関しては、ノーリアクションだった。
　ただ、自分のような人間は単に客がつかずに教育も無いのだと、良いように解釈していたらしい。俺が買い取っていたことでそれが免れていた事実に関しては、なんの冗談だと取り合ってくれなかった。


「逆、ですよ、雪さん。
　雪さんのようなΩを希望するβやαは、山ほどいます」


　多少跳ねっ返りの方が、発情期や誘発剤を使ったときとの落差があって好まれる。雪さんの性格だけでも寄ってくる客はいるんだ。


「ハッ、とんだ悪趣味だな」


　あのとき鼻で笑った雪さんは、実感が乏しく理解する気も無いようだった。信じようとする気もないのが、その態度から現れていた。ベットの上で胡座をかいて、余裕たっぷり。
　雪さんは、ここに来るまで堕ちたΩを買う側、扱う側だった経験もあって無意識に認めたくない気持ちもあったんだろう。

　雪さんのアングラでの価値は、アルビノと言うだけじゃない。更に付加価値として、もっと特異な客を呼び寄せるものがある。

　それは、その背中に走る昇龍と周りを彩る紅の牡丹。見事な手彫り刺青の芸術作品は、白い肌に映えて・・・きっと抱いているときは、汗にまみれ厭らしくその背をくねらせることだろう。