可愛いΩのナカセカタ

番外編

完敗デス ８

　意識を取り戻し、身も心も凍りつかせたあの場ではないことをすぐに理解する。身体の自由を取り戻していることに感謝する。あの場で無ければどこでもいい。楽に息が出来ることって素晴らしい。


「ん・・・ここ、は・・・」

「やったぁ～
由良、由良ぁ、風音、起きたよ！」


　自分の部屋とは違う、天井と布団の香り。あどけない声は、世良？ここって、まさか・・・


「良かった、心配してたんだぞ？」


　ひ・・・っ

　布団の中から飛び出し、顔を出した人物から対極の壁まで逃げる。ハ、ハハハ・・・こうなってみると、はっきりわかる。あの人の、いや、あの方の執着ぶりが。


「風音？」


　心配して近づいてきたあの方の唯一の人間、由良に両手を振って、頭を振って、あるなら尻尾も耳も下げて全面降伏を伝えたくなる。あたしは、なんて恐ろしいことをしていたんだと、過去の全てをやり直したくなる。


「だ、大丈夫だから、大丈夫だから！」


　それ以上、近づかないでっ！もう、充分わかったから。疾風様の特別は由良だけだって！疾風様のフェロモンに包まれた由良に、今近寄られると発狂しそうっ