可愛いΩのナカセカタ

番外編

高嶺のΩちゃん ５

　次兄の凪と長姉の風花は29歳の双子。

　凪兄貴は、由良の実家、椿頭家を継ぐために養子に入ってるから一人だけ苗字が違う。こっちは強制した訳じゃなくて、高校で進路を決めるときに自分から選んだんだって話だ。しっかりしてるよな。
　由良似の外見で優しく見えるけど、怒ると怖い。穏やかな笑顔で静かに怒るタイプ。αには珍しいハラコン(孕親コンプレックス)。

　大学出てから政治家のじい様の秘書になって連れ回されてたらしいんだけど、今は自分が国会議員になってバリバリ答弁してる。テレビ中継とか、何言ってるのか俺にはさっぱりわからないんだけどね。格好良いのはわかる。
　お年玉や小遣いを一番多くくれるし、俺には家族で一番甘い。籍は別れたけど一緒に住んでて、同じ部屋を使ってる。そろそろ椿頭の屋敷に引っ越すよう政界を引退したじい様から言われてる。
　｢世良に何かあったら合法的に処罰してやるからな｣、が本気の人。


　風花姉貴は、そう、俺の進学先の中学校で養護教諭してる。医師免許も持ってて研修医もしていたのに、資格を取り直して転職。凪よりも怒ると怖い。相手を蔑視しながら静かに怒るのは凪と同じ。目元は由良似だけど雰囲気は親父様。多分、俺の高校進学が決まったらまた先回りしてると思う。

　他の兄姉に比べたら、大人しめ。大口開けて笑ったりしない。
　作り笑いは、俺にとっては恐怖。綺麗に笑うから、勘違いして見とれる人もいるんだけど。見たら逃げろって相手に叫んでやりたい。だいたい作り笑いのときは最上級に怒ってるから。
　俺が保育園の時に、俺がΩだって分かって嫌がる親がいてさ。迎えにきた凪と風花に、Ω用の保育園に入れる方が良いんじゃないかって勧めてきたらしいんだよ。で、二人して相手に笑顔を向けたのを見てさ。あのときは、死人が出るんじゃないかってゾッとした。ただ、そこからどうなったか怖ったわりに覚えてないんだけど、死んではないと思う。次の日には、そこの子どもは転園してったって先生が言ってたし。
　
　料理は由良仕込みで美味しい。普段はα女性の気の強さを影に潜めて大人しくしてるから、おもてになる。俺の番相手が出来るまでは、自分のことは二の次だって相手にしないけど。

　怖いものを聞いたとき、親父様と由良の涙だって言われたんだけど。それは、家族での共有事項です。