可愛いΩのナカセカタ

三日月

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 日も暮れて、窓枠の外に広がる夜空を眺めながらペットボトルの冷えた水に口をつける。食事の時間を気にして一回で済ますつもりが、どんだけオーバーしたんだ?
 由良を喰らうと開き直った俺は、完全に自分の発情に呑まれた。由良が引きずられて発情Ωと化しても、満足出来ずに気を失うまでヤリまくった。盛りのついた十代でもあるまいし、三十過ぎて発情に狂うとか・・・由良のギリギリを見極める余裕もない、こんな無茶な抱き方はいつ以来だ?
 布団にくるまり、ぐったりと横たわってる由良の脇で胡座をかきながらその寝顔に目を落とす。赤く腫れた瞼を濡れタオルで覆っているから、口ぐらいしか感情は読めない。けどなぁ、笑ってんだもんな。
 身体は、牙で噛まれて血だらけの傷だらけ。暫く消えない青あざも内出血の跡もそこかしこに残っているし、下半身はズタボロでヘロヘロ。なのに、かんなり幸せそうに笑ってる。
 乾いた唇をなぞると、ハムッと唇で優しく挟まれる。チューチュー軽く吸ってくるから、よっぽど喉が乾いてるんだな。代わりに、水で濡れた唇で覆うと指と同じく口内の水を求めてくる。
 風呂に入れようかと思ったが、昂りすぎた発情が完全には落ち着かなかったからな。追加で襲う可能性が高すぎて、終わったまんまで布団に仰向けに寝かせただけ。散々啼いて喚いて悲鳴を上げて、由良の口はカラッカラだ。そろそろ起こして水を与えるか。


「由良、水飲む?」

 
 肩をゆっくりと揺さぶり、話しかけると。濡れタオルを顔の上から避けて、「(んん、飲、みたい)」と口が動いた。由良の声は、掠れすぎて消え入りそうだ。並みの人間なら、吐く息の音も拾えないな。

 由良の身体を起こし、口移しで水を与える。由良は、コクコク喉を鳴らしてから、「はふぅ」と力無く一息。その手首にはくっきり俺の手形がついていて、ずれた布団の下から鬱血した跡が咲き乱れた華のように広がった胸が覗く。由良は身体に力が入らないらしく、俺に凭れたまま、自分の手首を見て笑っている。由良は、俺に跡をつけられるのが好きだからな。


「(ここに来てから、嬉しいことばかりだ)」

「無理に話さなくても良い。
唇の形で読めるから」


 相当喉を痛めたな。由良はわかったと頷いたが、それ以上は話さずに黙って俺に身体を預けてくる。シャツ一枚越しに、由良の熱がじわりじわり伝わってきた。
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