可愛いΩのナカセカタ

266 Ω

　嵐のように現れて去っていった輝良達を見送ると、女性看護士の方がリハビリの時間だと迎えに来てくれた。疾風に「無理しすぎるなよ」と言われ、担当の先生にも「今日は初めてですからこれぐらいで」と抑えるように言われてしまい、予定より少し早く病室に戻って来る。
　扉を付き添いの看護士の方に開けてもらい、車椅子を回して部屋の中に入ると。疾風は、布団に潜っていた。


｢疾風、読んでたのか？
全部18禁だぞ｣


　手には輝良が持ち込んだ小説がページを開いて収まっていた。紙袋に戻す時間が無く、慌ただしくリハビリに行ってしまったから布団の下に隠したままだった・・・


｢ん"、何を今さら。
　あのバカが売れていると豪語してたし、あと中学で流行ってたタイトルもあったしな。
由良も読んでみたら？｣

｢18禁が流行る中学って・・・ダメじゃないのか？｣


　疾風はそれには答えず、表紙を閉じて枕元に置くと靴を引っ掻け自分の顔を覗きに来てくれた。リハビリ後に俺の体調に変わりがないか伺って、指で頬を擽り反応をその狐目で楽しんで。車椅子から軽々自分を抱き上げると、ベットまで運んでくれた。

　これは、自分が負傷しているのに気を使ってだと分かっていても。疾風に優しく扱われるのは嬉しい。