可愛いΩのナカセカタ

三日月

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「どういうことだっ、どういうことだぁーーー?!」


 輝良の食い気味な反応に、疾風は目を細める。自分の頭にそっと疾風が触れてきて、優しい指先の動きででわかった。任せておけと、安心させてくれる。
 わざと話をそらしてくれたんだな。
 
 輝良の方は、ショック・・・と言うよりも、好奇心がバリバリ音を立てて隠しきれずに滲みすぎだ。興奮し過ぎて、でも、どこか楽しそうで。顔が笑っている。
 そんな輝良の反応がおかしくて、俺もつられて笑ってしまった。


「おいっ、詳しく聞かせろっ
由良とどこで出会ったんだ?
と、言うか、お前が中学生とか、どこをどう見たら信じられるんだ?」

「全部」


 ニヤニヤ嗤って答える疾風は、完全に輝良で遊ぶ気だな。そのあとも、出会った場所や番になるまでをいくらしつこく聞かれたんだが、「プロらしく妄想して当てろ」と挑発してうまく輝良を乗せていた。まぁ、輝良も色々、自分なら思いもつかないようなことまでうんうん唸りながら考えてはくれたが、当たるわけがないよな。

 結局、当たらないままリハビリの時間が来る迄に栄寿さんが迎えに来て帰っていった。最後まで恨めしそうに栄寿さんを睨んでいたな。栄寿さんに「もっと居たいっ」とごねていたが、「あんたのザル頭にもう一度スケジュールを叩き込みましょうか?」と両頬をつねられ涙目になっていた。
 自分の知っている輝良は、神童と周囲の大人たちから持て囃され、新しいことを次々に吸収し、様々な分野で賞をいくつも獲っていた。その輝良がザル頭とか・・・そう言われても、輝良が「ごめんにゃさいぃ」と謝っているのが不思議でジッと見てしまった。
 輝良は、流石に恥ずかしかったみたいだ。「違うぞ、由良!俺はちゃんと出来る兄だぞっ」と、赤くなった頬を擦りながら弁解してくれたんだが、こんな姿もあるんだなぁと驚いた。
 
 昔から、いつも後を追ってその背に隠れていた自分に、輝良は優しくて。「俺に任せておけっ」と、悪く言われることが多かった自分を庇ってくれていた。なんでも出来る自慢の兄だったんだが・・・離れていた間の輝良のことも知りたく、次は輝良のことも聞かせて欲しいとお願いしたら「任せておけっ」と変わらない笑顔で答えてくれた。

 輝良は、眩しいくらいに輝良のまま。全然変わってない。一度は堕ちた自分と違い、輝良は真っ直ぐ突き進み堕ちない生き方でここにたどり着いたんだろうな。その笑顔を見ただけでも、安心できた。
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