可愛いΩのナカセカタ

三日月

文字の大きさ
上 下
250 / 461

247 Ω

しおりを挟む
 自分の言葉で機嫌を直した疾風は、手に持っていたペットボトルの蓋を開けた。その動作を見ているだけで、頬が火照ったのが自分でもわかる。

 薬の服用は、種類によって試合出場取消に関わるものがある。だから、訓練生の頃から風邪薬さえ避けていたんだ。そのせいか、三十過ぎてからの錠剤は苦手、水を飲んでも喉をなかなか通過しない。

 病室に運び込まれてから、疾風が預かってくれていた処方薬とその説明書を見比べながら一緒に確認したんだが、痛み止めに整腸剤、解熱剤と抗生物質・・・薬漬けすぎじゃないかとその量と種類に驚いた。
 その日の昼食の後に初めて飲んだんだが・・・その内の一粒を飲むだけで疲れてしまった。味は苦くもなかったんだが、喉につっかえてつっかえてたった一粒でコップの水を飲み干してしまった。
 一日三度の点滴にも薬は入っているだろうから、無理して全部飲まなくて良いだろうと安易に考え残りは諦めた。だが、それが良くなかったらしい。残りの薬を枕の下に隠して、二人で昼寝をしていたら途中で痛みに襲われ目が覚めた。
 多少の痛みなら堪えられるし、このまま目を閉じていればその内寝れるかと思っていたら、隣で寝ていた疾風に直ぐ気付かれ、看護師を呼ばれてしまった。そこで、体温計を渡され、熱も高くなっていることまでバレて。疾風からは、理由がわかった途端、冷ややかな瞳で怒られた。

 これまで、疾風にからかわれることはあっても怒られることが無かったからな。怒られたことが嬉しくて、二人の距離が段々縮まってるのかな、と。呑気にニヤついてしまった自分を疾風は見逃してはくれなかった。


「唇柔らかくして」


 緊張して固く結んでしまう唇を、フニフニ指先で遊ばれる。あぁ、本当に恥ずかしい。ここに来てからの疾風は、自分を羞恥で爆発させたいんだろうか。
 これ以上疾風を見ることが出来なくて、ギュッと目を固く閉じた。
しおりを挟む
感想 103

あなたにおすすめの小説

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

目が覚めたら囲まれてました

るんぱっぱ
BL
燈和(トウワ)は、いつも独りぼっちだった。 燈和の母は愛人で、すでに亡くなっている。愛人の子として虐げられてきた燈和は、ある日家から飛び出し街へ。でも、そこで不良とぶつかりボコボコにされてしまう。 そして、目が覚めると、3人の男が燈和を囲んでいて…話を聞くと、チカという男が燈和を拾ってくれたらしい。 チカに気に入られた燈和は3人と共に行動するようになる。 不思議な3人は、闇医者、若頭、ハッカー、と異色な人達で! 独りぼっちだった燈和が非日常な幸せを勝ち取る話。

ヤクザと捨て子

幕間ささめ
BL
執着溺愛ヤクザ幹部×箱入り義理息子 ヤクザの事務所前に捨てられた子どもを自分好みに育てるヤクザ幹部とそんな保護者に育てられてる箱入り男子のお話。 ヤクザは頭の切れる爽やかな風貌の腹黒紳士。息子は細身の美男子の空回り全力少年。

いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜

きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員 Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。 そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。 初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。 甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。 第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。 ※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり) ※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り 初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。

上司と俺のSM関係

雫@更新不定期です
BL
タイトルの通りです。

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

初心者オメガは執着アルファの腕のなか

深嶋
BL
自分がベータであることを信じて疑わずに生きてきた圭人は、見知らぬアルファに声をかけられたことがきっかけとなり、二次性の再検査をすることに。その結果、自身が本当はオメガであったと知り、愕然とする。 オメガだと判明したことで否応なく変化していく日常に圭人は戸惑い、悩み、葛藤する日々。そんな圭人の前に、「運命の番」を自称するアルファの男が再び現れて……。 オメガとして未成熟な大学生の圭人と、圭人を番にしたい社会人アルファの男が、ゆっくりと愛を深めていきます。 穏やかさに滲む執着愛。望まぬ幸運に恵まれた主人公が、悩みながらも運命の出会いに向き合っていくお話です。本編、攻め編ともに完結済。

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

処理中です...