可愛いΩのナカセカタ

230 α

｢あ、あぁ、ごめん、ごめん・・・いやぁ、ランドセル、ねぇ｣


　りっちゃんは、口元を掌で隠し立ち上がると、集中治療室の扉を見ながら「へぇ～」と呟いている。俺にはわからなかったが、ランドセルに何か意味があるのか？隠していても、りっちゃんの締まりの無い唇が透けて見えるようだ。ニヤニヤと目元も笑って見える。まるで自分は解っているぞと、高見にいるような態度も勘に障る。


｢なんなんだよ、気持ち悪いな。
　こんなときに何で笑っていられるんだ？｣


　俺が言うのもなんだが、不謹慎じゃねぇの？俺の番が治療中だぞ？俺は長椅子から立ち上がると、無言で右頬スレスレに足蹴り。りっちゃんは避けきれずに、白髪混じりの髪が風圧で乱れて揺らいだ。

　今の俺は、石を砕けず消化不良。由良の安否もはっきりしないからイラついているんだ。
　

｢お、怒るなよ、ぼっちゃん。
　それって、アレだよ、きっと。
　アレって、アレ、Ωの巣作り。
　発情期前に、たまにΩが番相手の服や持ち物を囲うやつだよ｣