可愛いΩのナカセカタ

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｢大丈夫、には、見えないな｣


　集中治療室前の長椅子に腰掛けていたら、ペットボトルのお茶とコンビニのおにぎりが三種類入った袋が視界を塞いだ。無言のまま会釈だけして受け取ると、腕の主、りっちゃんは俺の横にそのまま腰を降ろした。

　どうやら、事後処理を終えて戻って来たらしい。椿頭家まで出張って来たから、今回のことは萩野家とあのαの家だけで済ませる範疇は越えてしまった。いろいろ三者で揉めたんだろう。俺と由良を病院に下ろし、りっちゃんは一旦あの現場に戻っていたが、顔には「戻りたくない」とでかでか書いていたからな。
　アングラでは、Ωに仕事を効率良く回すことばっかりやってるし、ややこしい仕事は久し振りだったはずだ。りっちゃんの頭には、また白髪が増えてるんじゃないか？
　だが、そんなりっちゃんに心配されるくらい、俺もヤバい状態。


｢ん"ーそうかも。
ヤバイんだよね、なんか、この状況が薄い膜が張ってるみたいに現実味がなくて気持ちが落ち着かないのに、この辺はずっと痛い｣


　さっきからキリキリ痛む腹部を抑える。慌ただしく出入りする看護師を見るたびに、酷くなってる。感じたことがないくらいの冷たいプレッシャーに頭が重い。