617 / 621
36 計略の王子様
11
しおりを挟む
「清人、お前も今のでわかったろ?
ハルちゃんが危険な状況に陥っても、止められてねぇ。
微塵も正常な判断が出来ねぇくらい、浮かれてるってことがな。
今のお前の役割は、椅子だ、椅子。
動くな、口を出すな。
良いな?」
「・・・」
言葉遣いは荒かったけれど、陽太様の声は、さっきまであんなに怒っていたのとは別人みたいに優しかった。
清人様に、一言一言言い含めるように穏やかに語り掛けられてるみたい。
清人様は、納得・・・は、してないのかな?
俺を膝の上に乗せたあとは、ギュッとお腹に回った腕に力を込め、うなじに唇をふわりと寄せながら溜め息で応えてられていた。
うぅ、くすぐったいよ、清人様。
気を紛らわせるためにも、正面に座られた陽太様と目を合わせて・・・ヒヤッとしたよ!
声はあんなに優しく聞こえたのに、目が、目があっ
怒りを滞留して爆発寸前の飛鳥様並に怖いっ
まるで、「これでわからなかったら強硬手段に出るぞ」って迫ってるみたいだよ!
俺と目があった途端、ニッコリ微笑んでくださいましたが、目の奥は清人様を冷徹に値踏み中。
やっぱり親子なんだなぁって、なんだか納得しちゃったよ。
俺が怖がったのが伝わったみたいで、バツが悪そうに頭を掻きながら「まぁ、なんだな」と、強引に話題を変えられた。
「俺も、焦ってことを進めようとしてたし、当事者のハルちゃんの考えも聞かなきゃな」
「あ、ありがとうございますぅ」
声が震えちゃう。
自分から言うぞって勢いをつけようとしたけど、いざとなると一歩も踏み出せそうになかったからね。
だって、相手は、陽太様と、清人様なんだから。
二人を前にして、俺から話を切り出すタイミングなんてわからなさすぎる。
「あ、あの、俺は、が、学校に行きたいです」
緊張して掠れた声で、つっかえそうになりながらもなんとか言い切れた。
陽太様の口が開いてなにか言いかけられたけれど、すぐにムグッと閉じてくださったよ。
ビクッと清人様の身体も抱っこされてる俺ごと震えたけど、次の言葉を待ってくださっているのが背中越しに伝わってくる。
よし、頑張れ、俺。
皆と卒業したい、卒業したい、卒業したいっ
キッと気合を入れて、お腹から声を絞り出す。
「ら、来年になったら、進学とか就職で町から出ていく子もいて、中学の卒業のときよりもバラバラになるんです。
だから、あの、残りの時間を一緒に過ごしたいし、み、皆で卒業したいんです」
よーし、最後まで言えたぁっ
心の中でガッツポーズ。
中退するのは、陽太様が俺のうなじの噛み跡を心配されて言ってくださったことだけど、なんとか隠して3月まで通いたい。
清人様に隠すのを嫌がられても、説得、は、うん、俺は出来そうにないからね。
陽太様にも手伝っていただいて、なんとかならないかな。
「その、俺がβなのは変わらないし、今の高校を卒業ちゃんとしたいです。
えっと、あの、清人様のことは、その、すすすすす、好きなんですっ
でも、その、けけけけ結婚とか、へ、変異種Ωのふりとか、それはあの、か、考えもついてなかったからびっくりしちゃってて」
耳まで真っ赤になっているのがわかるくらい顔が熱い。
陽太様に告げるのは、清人様本人に言うときとは別の恥ずかしさで思わず目を閉じちゃったよ。
ギュウッと清人様の腕に力を込められ、俺もその腕をギュウッと抱えるようにして胸に引き寄せる。
清人様のこと、好きです。
大好きです。
畏れ多いなとか、思っちゃったりするけど。
今日の清人様の牙を見て、嬉しくて堪らない俺がいて。
清人様のこと、独り占めして、こんなふうにギュウッて俺からもしたいんです。
ハルちゃんが危険な状況に陥っても、止められてねぇ。
微塵も正常な判断が出来ねぇくらい、浮かれてるってことがな。
今のお前の役割は、椅子だ、椅子。
動くな、口を出すな。
良いな?」
「・・・」
言葉遣いは荒かったけれど、陽太様の声は、さっきまであんなに怒っていたのとは別人みたいに優しかった。
清人様に、一言一言言い含めるように穏やかに語り掛けられてるみたい。
清人様は、納得・・・は、してないのかな?
俺を膝の上に乗せたあとは、ギュッとお腹に回った腕に力を込め、うなじに唇をふわりと寄せながら溜め息で応えてられていた。
うぅ、くすぐったいよ、清人様。
気を紛らわせるためにも、正面に座られた陽太様と目を合わせて・・・ヒヤッとしたよ!
声はあんなに優しく聞こえたのに、目が、目があっ
怒りを滞留して爆発寸前の飛鳥様並に怖いっ
まるで、「これでわからなかったら強硬手段に出るぞ」って迫ってるみたいだよ!
俺と目があった途端、ニッコリ微笑んでくださいましたが、目の奥は清人様を冷徹に値踏み中。
やっぱり親子なんだなぁって、なんだか納得しちゃったよ。
俺が怖がったのが伝わったみたいで、バツが悪そうに頭を掻きながら「まぁ、なんだな」と、強引に話題を変えられた。
「俺も、焦ってことを進めようとしてたし、当事者のハルちゃんの考えも聞かなきゃな」
「あ、ありがとうございますぅ」
声が震えちゃう。
自分から言うぞって勢いをつけようとしたけど、いざとなると一歩も踏み出せそうになかったからね。
だって、相手は、陽太様と、清人様なんだから。
二人を前にして、俺から話を切り出すタイミングなんてわからなさすぎる。
「あ、あの、俺は、が、学校に行きたいです」
緊張して掠れた声で、つっかえそうになりながらもなんとか言い切れた。
陽太様の口が開いてなにか言いかけられたけれど、すぐにムグッと閉じてくださったよ。
ビクッと清人様の身体も抱っこされてる俺ごと震えたけど、次の言葉を待ってくださっているのが背中越しに伝わってくる。
よし、頑張れ、俺。
皆と卒業したい、卒業したい、卒業したいっ
キッと気合を入れて、お腹から声を絞り出す。
「ら、来年になったら、進学とか就職で町から出ていく子もいて、中学の卒業のときよりもバラバラになるんです。
だから、あの、残りの時間を一緒に過ごしたいし、み、皆で卒業したいんです」
よーし、最後まで言えたぁっ
心の中でガッツポーズ。
中退するのは、陽太様が俺のうなじの噛み跡を心配されて言ってくださったことだけど、なんとか隠して3月まで通いたい。
清人様に隠すのを嫌がられても、説得、は、うん、俺は出来そうにないからね。
陽太様にも手伝っていただいて、なんとかならないかな。
「その、俺がβなのは変わらないし、今の高校を卒業ちゃんとしたいです。
えっと、あの、清人様のことは、その、すすすすす、好きなんですっ
でも、その、けけけけ結婚とか、へ、変異種Ωのふりとか、それはあの、か、考えもついてなかったからびっくりしちゃってて」
耳まで真っ赤になっているのがわかるくらい顔が熱い。
陽太様に告げるのは、清人様本人に言うときとは別の恥ずかしさで思わず目を閉じちゃったよ。
ギュウッと清人様の腕に力を込められ、俺もその腕をギュウッと抱えるようにして胸に引き寄せる。
清人様のこと、好きです。
大好きです。
畏れ多いなとか、思っちゃったりするけど。
今日の清人様の牙を見て、嬉しくて堪らない俺がいて。
清人様のこと、独り占めして、こんなふうにギュウッて俺からもしたいんです。
1
お気に入りに追加
886
あなたにおすすめの小説
完結・虐げられオメガ側妃が敵国に売られたら、激甘ボイスのイケメン王に味見されました
美咲アリス
BL
虐げられオメガ側妃のシャルルは敵国への貢ぎ物にされた。敵国のアルベルト王は『人間を食べる』という恐ろしい噂があるアルファだ。けれども実際に会ったアルベルト王はものすごいイケメン。しかも「今日からそなたは国宝だ」とシャルルに激甘ボイスで囁いてくる。「もしかして僕は国宝級の『食材』ということ?」シャルルは恐怖に怯えるが、もちろんそれは大きな勘違いで⋯⋯? 虐げられオメガと敵国のイケメン王、ふたりのキュン&ハッピーな異世界恋愛オメガバースです!
Ωの不幸は蜜の味
grotta
BL
俺はΩだけどαとつがいになることが出来ない。うなじに火傷を負ってフェロモン受容機能が損なわれたから噛まれてもつがいになれないのだ――。
Ωの川西望はこれまで不幸な恋ばかりしてきた。
そんな自分でも良いと言ってくれた相手と結婚することになるも、直前で婚約は破棄される。
何もかも諦めかけた時、望に同居を持ちかけてきたのはマンションのオーナーである北条雪哉だった。
6千文字程度のショートショート。
思いついてダダっと書いたので設定ゆるいです。
初心者オメガは執着アルファの腕のなか
深嶋
BL
自分がベータであることを信じて疑わずに生きてきた圭人は、見知らぬアルファに声をかけられたことがきっかけとなり、二次性の再検査をすることに。その結果、自身が本当はオメガであったと知り、愕然とする。
オメガだと判明したことで否応なく変化していく日常に圭人は戸惑い、悩み、葛藤する日々。そんな圭人の前に、「運命の番」を自称するアルファの男が再び現れて……。
オメガとして未成熟な大学生の圭人と、圭人を番にしたい社会人アルファの男が、ゆっくりと愛を深めていきます。
穏やかさに滲む執着愛。望まぬ幸運に恵まれた主人公が、悩みながらも運命の出会いに向き合っていくお話です。本編、攻め編ともに完結済。
いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜
きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員
Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。
そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。
初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。
甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。
第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。
※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり)
※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り
初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。
僕の番
結城れい
BL
白石湊(しらいし みなと)は、大学生のΩだ。αの番がいて同棲までしている。最近湊は、番である森颯真(もり そうま)の衣服を集めることがやめられない。気づかれないように少しずつ集めていくが――
※他サイトにも掲載
孕めないオメガでもいいですか?
月夜野レオン
BL
病院で子供を孕めない体といきなり診断された俺は、どうして良いのか判らず大好きな幼馴染の前から消える選択をした。不完全なオメガはお前に相応しくないから……
オメガバース作品です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる