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36 計略の王子様
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この後、車の外に出た陽太様は、睨み合っていた二人を大きな声で叱られてね。
俺も車から出てくるように呼んでくださったよ。
でも、でもね?
俺が扉から出ようとしたらね。
清人様は、さっきみたいにしゃがんで手を差し出しに来てくださってて。
とっても眩しい笑顔で早くおいでと呼びかけてくださってて。
その背後には、まだ怒りが鎮まらない飛鳥様が仁王立ちされていたんだよ?
俺がそんなところに出れるわけないよっ
清人様の顔も、色んなことがありすぎて真っ直ぐ見れないし。
飛鳥様の怖い顔なんてなにかされる前触れにしか思えないし。
清人様が、すぐに下りてこない俺の手を掴もうとされたんだけど。
俺はその手に捕まる前に、もう一方の扉から転がるように出て慌てて陽太様の背中に隠れたよ。
ここが一番安全で安心出来るからねっ
「なーんで遥馬が陽太さんの側に行くのよ?
遥馬の番は、そこの愚弟でしょう」
「そう言うなよ、飛鳥。
先輩Ωの俺を頼ってくれてるんだ。
変異種Ωになったことを受け入れるのには時間がかかる。
清人に番の責任を取らせる以前に、ハルちゃんには覚えてもらいたいこともあるしな」
「あぁ、遥馬は最近Ω堕ちしたのよね。
それで愚弟を仕事場でフェロモンレイプ?
愚弟の様子じゃ同意があったようだけれど、犯罪でしょう?
責任なんて、我が菊川家が取る必要ないわよ。
こんなちんちくりん、いくら愚弟でも連れて歩くには不憫よ」
今まであったことを何も知らされてない飛鳥様が、急に俺が清人様に噛まれたとしか思えない現場に居合わせたらね。
お尋ねになりたいことや言いたいことが、たくさん出てくると思うんだよ。
陽太様が、それにスラスラと淀みなく答えていらっしゃるのが凄いなぁ、なんて。
無人の廊下を四人で連れ立って歩きながら、他人事みたいに聞いていたんだけどね。
バフッ
急に陽太様が止まられたから、背中にぶつかってしまったよ!
「わわわわっ、すみま……」
「飛鳥、その言葉は使うな」
謝るよりも先に、陽太様が隣を歩いていた飛鳥様を窘められていた。
確かに、Ω堕ちって差別用語だし知っていても使うことは避けられてる。
俺も・・・言われるのは好きじゃない。
傷付いたことが伝わったからなのか、隣を歩いていた清人様の目もスッ細まり飛鳥様を捕らえていたんだけどね。
僕はそれどころじゃなくて、陽太様に、すみませんとありがとうございましたを改めて言い直そうと息を吸い込んだんだよ。
なのに、陽太様は急に俺の背中に手を回されて、飛鳥様の方にグイッと押し出されるからびっくりっ
飛鳥様も、ギョッとされてますよっ
俺も車から出てくるように呼んでくださったよ。
でも、でもね?
俺が扉から出ようとしたらね。
清人様は、さっきみたいにしゃがんで手を差し出しに来てくださってて。
とっても眩しい笑顔で早くおいでと呼びかけてくださってて。
その背後には、まだ怒りが鎮まらない飛鳥様が仁王立ちされていたんだよ?
俺がそんなところに出れるわけないよっ
清人様の顔も、色んなことがありすぎて真っ直ぐ見れないし。
飛鳥様の怖い顔なんてなにかされる前触れにしか思えないし。
清人様が、すぐに下りてこない俺の手を掴もうとされたんだけど。
俺はその手に捕まる前に、もう一方の扉から転がるように出て慌てて陽太様の背中に隠れたよ。
ここが一番安全で安心出来るからねっ
「なーんで遥馬が陽太さんの側に行くのよ?
遥馬の番は、そこの愚弟でしょう」
「そう言うなよ、飛鳥。
先輩Ωの俺を頼ってくれてるんだ。
変異種Ωになったことを受け入れるのには時間がかかる。
清人に番の責任を取らせる以前に、ハルちゃんには覚えてもらいたいこともあるしな」
「あぁ、遥馬は最近Ω堕ちしたのよね。
それで愚弟を仕事場でフェロモンレイプ?
愚弟の様子じゃ同意があったようだけれど、犯罪でしょう?
責任なんて、我が菊川家が取る必要ないわよ。
こんなちんちくりん、いくら愚弟でも連れて歩くには不憫よ」
今まであったことを何も知らされてない飛鳥様が、急に俺が清人様に噛まれたとしか思えない現場に居合わせたらね。
お尋ねになりたいことや言いたいことが、たくさん出てくると思うんだよ。
陽太様が、それにスラスラと淀みなく答えていらっしゃるのが凄いなぁ、なんて。
無人の廊下を四人で連れ立って歩きながら、他人事みたいに聞いていたんだけどね。
バフッ
急に陽太様が止まられたから、背中にぶつかってしまったよ!
「わわわわっ、すみま……」
「飛鳥、その言葉は使うな」
謝るよりも先に、陽太様が隣を歩いていた飛鳥様を窘められていた。
確かに、Ω堕ちって差別用語だし知っていても使うことは避けられてる。
俺も・・・言われるのは好きじゃない。
傷付いたことが伝わったからなのか、隣を歩いていた清人様の目もスッ細まり飛鳥様を捕らえていたんだけどね。
僕はそれどころじゃなくて、陽太様に、すみませんとありがとうございましたを改めて言い直そうと息を吸い込んだんだよ。
なのに、陽太様は急に俺の背中に手を回されて、飛鳥様の方にグイッと押し出されるからびっくりっ
飛鳥様も、ギョッとされてますよっ
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