例えβに生まれても

32 区別の王子様

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｢タマ、黙れ｣


ひぇっ

どこかにいかれていた清人様が、こちらにいつのまにか戻ってこられていたみたい。
全然俺達は気付いてなくて、不意に鏡の後から顔が出てきてヒヤッと心臓が冷水を浴びたみたいに縮んだよ。
清人さんは、無表情で俺の隣にいた蔦次さんを眺めてね。
身体の熱も、一瞬で奪うんじゃないかと思えるくらい冷たい声と眼差しを浴びせた。

欅平さんのメイクで、いつにも増してお綺麗な清人様にそんなこと言われたら、カチンと身体が凍っちゃうよ！
隣にいただけでも、身がすくんじゃう。
蔦次さん、身体をガチガチにさせてたんだけどね。
欅平さんから、「頑張りなさい」って慰めるみたいに肩を叩かれて、なんとか仕事を再開された。

欅平さんは、清人さんを見ないように見ないように避けながら、黙って出していた道具を片付け始めた。

お、俺だけやることがないんだけど、今のうちに変更点を聞いてみようっ


｢き、清人様.......あの｣

｢ハル、準備は出来たみたいだな｣


俺は話している途中だったのにな。
清人様は、俺の顔をじっと見つめて満足気に頷き。
膝を折って優しく微笑みながら、俺に向かって手を差し出された。

欅平さんは、慌てて身体に掛けられていた大きな布を取ってくれたよ。