例えβに生まれても

31 撮影の王子様

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｢この名前、清人も覚えがあるでしょう？」


絵コンテの追記された注意書きを指差すお姉さん。
清人様は興味がないみたいで、身体を起こして見ようともされない。


「清人信者の一人で、今回久しぶりに帰国した清人との話題作りも狙いながら、だけど貴方に会いたい私情が優先だと思うわ。
広報企画部の面子もあって、使うかどうかは出来上がり次第だけど、2パターン撮影することになったのよ。
ただし、今回はCGを使用しないことを売りにもしてるから、貴方が牙さえ出さなければ....香水をつけたβがαにさえ優る踏み台比較に使われるんじゃないかしらね。
まぁ、あっちは自信満々で挑んできてるんでしょうけど｣


トントンと、お姉さんはもう一度書かれた名前を指で叩く。
お姉さん、笑顔なんだけど悪い顔になってますよ！

同じ会社で働いているのに、面子とか....社会人って大変だなぁ。
清人様は、無言のままだった。
何も言い返されないから、不思議でね。
チラッと隣を見てみたら、清人様の目は、お姉さんの方を見てなかったよ。

清人様、お姉さんの話をちゃんと聞かれていたのかな？
椅子の背にもたれて。
じーっと後ろから俺を、俺のうなじを見てた。

ずっと見られてたの？？
知ってしまったら、その熱視線でジリジリとうなじに穴が開いちゃいそうだよ！