例えβに生まれても

28 完遂の王子様

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｢確かに番にするとは聞いてたけど、牙なんか出したことないくせにって...本人がその気でも、実現するわけないわって思っていたのよ。
なのに、まさか、こんなβ相手にあの清人が牙なんて...｣


ブツブツ呟くお姉さん。
顔に穴が空いちゃうくらい、ジッッと睨んでこられるから、身体がすくんで動けないよ。
目も反らせないし、お姉さんの気迫に圧倒されてしまって息が詰まるっ

今まで、たまに怖いけど優しいお姉さんって思っていたのに。
まるで別人みたいなんだけどっ
優しさがどっかに消えちゃったよ！

お姉さんは、小さくふっと息を吐くと。
殺気まで盛られていた顔から、能面みたいに表情が一切消えて。
ツカツカ、息がかかる至近距離まで近づいてきてね。
ガンっと目がチカチカするくらい、強く額に額をぶつけてこられた。

痛いのと、びっくりしたのとで頭が真っ白。

お姉さんは、ヨロヨロ後退った俺の額に体重をかけながら距離をギリギリまで詰めて、冷ややかに言葉を紡いだ。


｢あなた、清人に牙まで捧げられて、番にならないとかふざけたこと言うんじゃないわよ？
何が気に入らないのか知らないけど、βの分際で断るとか許されないわ｣


お姉さーーーんっ
どうしちゃったんですかっっ