俺の番クン

三日月

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俺の番クン

交際 成立

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「いえ、僕は嬉しかったです」


暁はキッパリと言い切り、今までで一番可愛い笑顔を向けてきた。
年齢の割に小生意気な言葉を使うけど、こう言う顔は年相応だな。
和平に似て、つんつんしだした凛太郎より何倍も可愛いじゃねぇか⋯言ってることは意味不明だけど。


「凛太郎君とは、幼稚舎からずっと進路が同じなんです。
父兄参観に三人仲良く来られているのを見たことがありますし、凛太郎君から御家族の話を聞いて羨ましく思っていたんです。
僕の母親は⋯僕を産んで出ていってしまったので」


凛太郎が家のことを話すくらい仲が良いのかと笑顔に癒やされつつ聞いていたら、突然翳りのある表情でボソリと呟かれ焦る。
「そ、そうか」と、挙動不審で狼狽える俺に暁の方が気を使って話を変えてくれた。
いや、戻された。


「一樹が僕の番だとわかって、本当に嬉しかったんです」

「いやいや、同級生産んでるんだぞ?
そこは引くとこだろう」

「僕には、引く要素では無いですね。
あぁ、でも、僕と一樹の子どもが産まれたら、凛太郎君からからかわれそうですね⋯そのときは、一緒にからかわれましょう」

「はぁ?!」


にこやかに大人びた微笑みを向けられ、思わず声が裏返る。
こんなチビッコから、俺と自分の子どもの話をされるとか、どうなってるんだっ


「いや、マジで無理だわ。
プロジェクトで選ばれた相手だって言っても、この年の差じゃ考えられない。
Ωから断ったら外聞もあるだろうし、そっちから断ってくれて良いから」


さっさと帰ろうと席を立つ。
このジュース代は会計で払えば良いのか?
扉から出ていこうとしたら、藤原総支配人の引いた椅子から飛び降り先回りした暁に正面から抱きつかれた。
腰にまとわりつく腕の細さも、勢い良く飛び込んできた割に軽い体重も、凛太郎より一回り小さくて華奢。
改めて、こんな子どもが十年に一度の相手だと思うと情けなくなる。
俺の遺伝子、どうなってんだろう。


「待ってくださいっ、一樹っ
まだ僕は小さくて、相手にされないのは想定してました。
胸が痛いし初めての失恋で辛いけど、一樹に断れるのは仕方ないんだと解ってます。
だから、ここからはお願いです。
僕の命を助けると思って、この話を受けていただきたいんですっ」

「な、何を突然⋯」


しがみついて離れない暁は、顔を真っ赤にさせて必死に言い募ってくる。
命とか、大袈裟だろうと思ったけど、背後に控えていた藤原総支配人が「ご説明します」と暴露してくれた鳳グループの内紛は鷹司の非じゃないことを知った。
この一ヶ月の間に、暁めがけて仕掛けられた嫌がらせ諸々件数が酷いっ

こんな小さい子ども相手に⋯無意識に膝を屈めてその細い肩を抱きしめてしまう。
そりゃ、暁の爺さんも金に糸目もつけずに番プロジェクトを乗っとるわけだ。
このプロジェクトのマッチングに対する信頼性はかなり高い。
暁に相手がいると分かれば、周りの目を気にして下手に手を出せなくなり、表立って暁を傀儡に仕立てようとする嫌がらせの数は減るかもしれない。

それに⋯

暁は、片親だった父親も亡くしてるんだ。
頼る大人が一人でも近くにいた方が良いだろう。
他の家の利権争いなんて興味ないし、難しい話は手伝ってやることも出来ないし、番になるのも無理だけど。


「わかった。
番プロジェクトに参加中のフリで良ければするよ」

「いつまでですかっ」


大人しく抱かれていた暁が、キッと挑むように俺を見上げる。
確かに、期限は切っておいた方が良いか。
ずっと俺が側にいると、逆に邪魔になることもあるだろうし。


「えっと⋯そうだな。
暁が18歳になるまで、とかかな」


俺がこのプロジェクトに申し込んだ年。
その頃なら、暁に年相応の相手がマッチングされるだろうし。
俺は、十年待って暁だったんだから、ひょいひょい急に相手が出てくるとも思えないしな。
番プロジェクトで相手を見つけるのは、もう諦めるしかないだろう。
これも、何かの縁、番以外の縁が俺と暁の間に繋がったってことだな。
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