魔法道具のお店屋さん

森野ゆら

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4章

薬草を求めて

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「ご、5万ギラ?!」

 薬屋さんの店内で私の裏返った声が響いた。
 高っ……高すぎる。とてもじゃないけど、買えないよ。
 桁、まちがえてない? 疑うように見ると、薬屋さんのおじさんはひげをさすった。

「このネツトレ草は今在庫がなくてね。価格が高騰してるんだ。お嬢ちゃん、5万ギラなんて大金持ってないだろ?」

「はい……」

「そうだろなぁ」

 薬屋さんのおじさんがハァとため息をついて、私も続けてため息をつく。
 朝一番に町で一人しかいないお医者さんの所に行ったんだけど、どうしてか、すごい人だかり。
 待ってる人の長い列までできていて、お医者さんに会うことはできなかった。
 並んでいる人の話が耳に入ってきたけど、今、変な病気が流行ってるみたい。
 お兄ちゃんもその流行り病にかかっちゃったのかな?
 仕方なく、熱に効くっていう薬草をもらいに薬屋さんに来たんだけど……5万ギラとかありえないよ。
 
「正規の値段で売ってやりたいんだけど、まー、お嬢ちゃんだけ特別扱いもできないんだよ。悪いね。まぁ、買えない人達は、ネツトレ草を直接、スクト山に取りにいってるみたいだけど」

「スクト山にあるんですか?」

「あぁ。でも、頂上付近にしかないし、みんなが取りに行って、もう残ってないってウワサだよ。あの山、険しくてなかなか登るのは大変だから。子どものあんたには無理だ。もし、どうしてもって言うなら大人に行ってもらいな」

「そ、そうですね。……ありがとうございます」

 おじさんに頭を下げて、薬屋さんを出た。
 はぁ。まさか、ネツトレ草があんなに高いなんて。
 普段は千ギラもしないのに。
 もう、こうなったらスクト山に採りに行くしかないよね。
 だって、お兄ちゃん、今朝もすっごく辛そうだったもん。
 早く何とかしてあげたい。
 険しかろうが、何だろうが、行って薬草を採ってくるしかない。
 よしっ、と気合を入れてスクト山の方へ向かって歩いていると、見覚えのある人が川沿いで佇んでいた。
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