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2章
うれしい大量注文
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心がぽかぽかと温かい。思わずステップを踏んでしまいそうになる。
さっき、デリーさんが言ってくれた言葉がうれしくてたまらない。
お父さんが店をやっていたのは、もう何年も前。
お父さんのこと、覚えててくれて、しかも認めてくれてる人がいるなんて。
ふわふわした気持ちで帰ってきたら、お店の前でちょこんと座っている白いモフモフした子が見えた。
「クウちゃん!」
声をかけると、クウちゃんが私の方へトトッとかけてきた。
クウちゃんを抱き上げて、よしよしと頭をなでる。
「いつもありがとね、クウちゃん。もしかして私が帰るの待っててくれた?」
うなずくように頭を下に向けるクウちゃん。
のぞきこんだクウちゃんの瞳の色は、森を映した湖みたい。
「今日はね、落とし物を届けに行ってたの。ミレイってやつの」
クウちゃんの瞳が一瞬だけふわっと大きくなる。
同時に、ガチャリとドアノブをまわす音がした。
びくりと耳をふるわせたクウちゃんは、私の腕から飛び降り、走って逃げちゃった。
「おー。セアラ、帰ってきたか。遅かったじゃねぇか! 待ちくたびれたぞ」
ふぁとあくびをしながら出てきたお兄ちゃんは、何だかにやけてる。
「どうしたの? お兄ちゃんが出迎えてくれるなんてめずらしい」
「実はさ、大量注文が入ったんだ! なんと、百個も!」
「百個!?」
「マギさんがさっき来てさ、注文してくれたんだ。この前買った、たまご型ペンダントがすごく気に入ったって。親戚に配りたいからって」
「そうなんだ! やったね! っていうか、マギさん、どれだけ親戚いるんだ……」
マギさんは、うちの数少ないお得意様。
定期的にお兄ちゃんが作った道具を買いに来てくれるんだ。
この間買ってくれた(たまご型ペンダント)は、たまご型水晶がついていて、その日の天気で色が変わるんだ。
晴れの日は、オレンジ。曇りはグレイシルバー、雨の日はブルーっていう具合に。
しかも虫よけになるんだよ。
おしゃれに虫よけができるっていうのがウリなんだ。(チラシも作ったんだから!)
いつもマギさんはたくさん買ってくれるけど、今回は百個も注文って……すごい!
やった! まとまったお金が入ってくるよ!
しばらくごはんを買うのも困らない。ひゃっほーい。
「また十日後くらいに取りにくるって。いや~忙しくなるなぁ」
お兄ちゃんは困った顔を作りながらも、口元がにやけてしまってる。
そういう私もにやけちゃってるけど。
「よーし、今度大通りに行って、セアラの服を買おう!」
「え? いいの?」
「ちょっとはオシャレしたいってぼやいてただろ?」
「お兄ちゃんだって、新しい工具がほしいって言ってたでしょ?」
「まぁ、そうだけど。でも、セアラには日頃我慢させちゃってるしな。あ、髪飾りも買ってやろうか?」
お兄ちゃんの手がポンポンと私の頭の上で弾む。
たくさん注文が入った時は、こうやってお兄ちゃんと喜び合えるのがとってもうれしい。
魔法道具店、やっててよかったなって思えるんだ。
さっき、デリーさんが言ってくれた言葉がうれしくてたまらない。
お父さんが店をやっていたのは、もう何年も前。
お父さんのこと、覚えててくれて、しかも認めてくれてる人がいるなんて。
ふわふわした気持ちで帰ってきたら、お店の前でちょこんと座っている白いモフモフした子が見えた。
「クウちゃん!」
声をかけると、クウちゃんが私の方へトトッとかけてきた。
クウちゃんを抱き上げて、よしよしと頭をなでる。
「いつもありがとね、クウちゃん。もしかして私が帰るの待っててくれた?」
うなずくように頭を下に向けるクウちゃん。
のぞきこんだクウちゃんの瞳の色は、森を映した湖みたい。
「今日はね、落とし物を届けに行ってたの。ミレイってやつの」
クウちゃんの瞳が一瞬だけふわっと大きくなる。
同時に、ガチャリとドアノブをまわす音がした。
びくりと耳をふるわせたクウちゃんは、私の腕から飛び降り、走って逃げちゃった。
「おー。セアラ、帰ってきたか。遅かったじゃねぇか! 待ちくたびれたぞ」
ふぁとあくびをしながら出てきたお兄ちゃんは、何だかにやけてる。
「どうしたの? お兄ちゃんが出迎えてくれるなんてめずらしい」
「実はさ、大量注文が入ったんだ! なんと、百個も!」
「百個!?」
「マギさんがさっき来てさ、注文してくれたんだ。この前買った、たまご型ペンダントがすごく気に入ったって。親戚に配りたいからって」
「そうなんだ! やったね! っていうか、マギさん、どれだけ親戚いるんだ……」
マギさんは、うちの数少ないお得意様。
定期的にお兄ちゃんが作った道具を買いに来てくれるんだ。
この間買ってくれた(たまご型ペンダント)は、たまご型水晶がついていて、その日の天気で色が変わるんだ。
晴れの日は、オレンジ。曇りはグレイシルバー、雨の日はブルーっていう具合に。
しかも虫よけになるんだよ。
おしゃれに虫よけができるっていうのがウリなんだ。(チラシも作ったんだから!)
いつもマギさんはたくさん買ってくれるけど、今回は百個も注文って……すごい!
やった! まとまったお金が入ってくるよ!
しばらくごはんを買うのも困らない。ひゃっほーい。
「また十日後くらいに取りにくるって。いや~忙しくなるなぁ」
お兄ちゃんは困った顔を作りながらも、口元がにやけてしまってる。
そういう私もにやけちゃってるけど。
「よーし、今度大通りに行って、セアラの服を買おう!」
「え? いいの?」
「ちょっとはオシャレしたいってぼやいてただろ?」
「お兄ちゃんだって、新しい工具がほしいって言ってたでしょ?」
「まぁ、そうだけど。でも、セアラには日頃我慢させちゃってるしな。あ、髪飾りも買ってやろうか?」
お兄ちゃんの手がポンポンと私の頭の上で弾む。
たくさん注文が入った時は、こうやってお兄ちゃんと喜び合えるのがとってもうれしい。
魔法道具店、やっててよかったなって思えるんだ。
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