上 下
4 / 6

豹変

しおりを挟む
「すいませ~ん、わたくし、刑事の定岡というものですが、成瀬さんですか?」


「はい、そうですが。」


刑事はそう言うと、続けて口を開いた。



「Y区で連続殺人事件が起きてるんですが、この顔に見覚えないですか?」



美香は3人の写真を見せられた。



「あー、会った事ありますけど、何か?」


手に汗をかきながら、冷静さを保とうとした。


「タワーマンションのエントランスの防犯カメラに犯行時刻と思われる時間帯にあなたが映ってたんでね?」


「確かに行きましたけど、私は何もしてませんし、ただお酒を呑んで帰りましたよ?」


しかし、刑事は美香の言い分に聞く耳を持たない。



「とりあえず、署でゆっくり聞きますので、ご同行お願い出来ますか?」



そして、私は怒りをあらわにした。




「あ?やってないって言ってんだろ!私がやったっていう証拠あんのかよ!」





刑事の2人組は目を合わせて頷いた。




そして、私は強引に署へと連行された。




取調室にて、刑事は美香へ問いただす。



「成瀬さん、最初に殺害された25歳男性、杉内 拓哉さんの携帯から、あなたとのやり取りがあるんですが、あなたは最後に会った次の日に、お酒に酔っていて覚えていないと送信していますね?つまり、殺していたとしても覚えていないということにもなりますよね?」



「それは、もう1回会うのはやめておこうと思っての嘘ですよ…」


しかし、刑事は続けて問いただす。


「そうですか、しかしね?被害者の携帯3台から、あなたの指紋と一致した指紋が検出されてるんですよ。」


「殺害された3人は、全員"毒殺"、何か知ってますよね?」



私は否定をし続けた。





「だって、私やってないもん…」





数十時間に及ぶ、取り調べは遂に終わりを迎えた。


そのまま、警察病院へと連行され、精神鑑定を受けることとなった。




翌日、鑑定結果は異常なし。



私はやっとの思いで解放された。




美香が逮捕されなかったのは、犯行動機が無く、唯一の証拠だった指紋は一致したが、出会い系アプリで知り合い、会ってる観点から、携帯を触るという行為はあり得ないと言い切れない、見つかった頭髪もあったが、会っている為、頭髪がある事は矛盾はないとして、釈放されたのだ。





私は急いで会社の上司へ連絡、事情説明をし、明日から出社することを伝えたが、精神面的な部分も考慮し、3日間休むこととなった。




直也に連絡し、直也と真由美と3人でご飯を食べることとなった。




直也宅へ。




これまでの経緯を説明した私は堪えていた涙が崩れ落ちた。


そんな私に、直也は優しく声掛けてくれた。



「大変なことがあったな。嫁は研究の仕事があって、俺も日中は仕事に行くけど、それでも良かったら、しばらくの間は俺の家に居ると良い。」



2人は私を心配して家に泊めてくれることになった。



2人の優しさに安堵した。
気持ちが柔らいだ。









そして、私は"裏切り者"へと変わっていった。






しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ユートピア

紅羽 もみじ
ミステリー
一見、何の変哲もない事件。しかし、その裏を探っていくと歪み切った人間たちの思惑が交錯していた。 「彼ら」を救えるのは、事実か、虚実か。

残響鎮魂歌(レクイエム)

葉羽
ミステリー
天才高校生、神藤葉羽は幼馴染の望月彩由美と共に、古びた豪邸で起きた奇妙な心臓発作死の謎に挑む。被害者には外傷がなく、現場にはただ古いレコード盤が残されていた。葉羽が調査を進めるにつれ、豪邸の過去と「時間音響学」という謎めいた技術が浮かび上がる。不可解な現象と幻聴に悩まされる中、葉羽は過去の惨劇と現代の死が共鳴していることに気づく。音に潜む恐怖と、記憶の迷宮が彼を戦慄の真実へと導く。

アサシンのキング

ミステリー
経験豊富な暗殺者は、逃亡中に不死鳥の再生を無意識に引き起こし、人生が劇的に変わる。闇と超自然の世界の間で、新たな力を駆使して生き延びなければならない。

「鏡像のイデア」 難解な推理小説

葉羽
ミステリー
豪邸に一人暮らしする天才高校生、神藤葉羽(しんどう はね)。幼馴染の望月彩由美との平穏な日常は、一枚の奇妙な鏡によって破られる。鏡に映る自分は、確かに自分自身なのに、どこか異質な存在感を放っていた。やがて葉羽は、鏡像と現実が融合する禁断の現象、「鏡像融合」に巻き込まれていく。時を同じくして街では異形の存在が目撃され、空間に歪みが生じ始める。鏡像、異次元、そして幼馴染の少女。複雑に絡み合う謎を解き明かそうとする葉羽の前に、想像を絶する恐怖が待ち受けていた。

天使さんと悪魔くん

遊霊
ミステリー
キュートで笑顔が素敵な 天使さんと、いつも無感情でトゲトゲしてる 悪魔くんと普通な人間 同助のキズナの物語.... ある日突然主人公の一心同助(ドースケって呼んで)の家に天使さんと悪魔くんが訪ねてきた。 異次元からやってきた天使さんと悪魔くんは現世に居場所がなく仕方なくたまたま見かけた同助の家に居候することに。 困る同助はこのまま外にいたら何をしでかすか分からない二人を仕方なく受け入れる。 天使さんと悪魔くんは無事元の世界へ帰ることができるのか....? ※R15 全文がピエロで愚かです。

おさかなの髪飾り

北川 悠
ミステリー
ある夫婦が殺された。妻は刺殺、夫の死因は不明 物語は10年前、ある殺人事件の目撃から始まる なぜその夫婦は殺されなければならなかったのか? 夫婦には合計4億の生命保険が掛けられていた 保険金殺人なのか? それとも怨恨か? 果たしてその真実とは…… 県警本部の巡査部長と新人キャリアが事件を解明していく物語です

時計の歪み

葉羽
ミステリー
高校2年生の神藤葉羽は、推理小説を愛する天才少年。裕福な家庭に育ち、一人暮らしをしている彼の生活は、静かで穏やかだった。しかし、ある日、彼の家の近くにある古びた屋敷で奇妙な事件が発生する。屋敷の中に存在する不思議な時計は、過去の出来事を再現する力を持っているが、それは真実を歪めるものであった。 事件を追いかける葉羽は、幼馴染の望月彩由美と共にその真相を解明しようとするが、次第に彼らは恐怖の渦に巻き込まれていく。霊の囁きや過去の悲劇が、彼らの心を蝕む中、葉羽は自らの推理力を駆使して真実に迫る。しかし、彼が見つけた真実は、彼自身の記憶と心の奥深くに隠された恐怖だった。 果たして葉羽は、歪んだ時間の中で真実を見つけ出すことができるのか?そして、彼と彩由美の関係はどのように変わっていくのか?ホラーと推理が交錯する物語が、今始まる。

ルナティックティアーズ・アスタリスク

AYA
ミステリー
「託した未来、揺るがない希望」  銃社会と化した2025年の日本。  フランスからの帰国早々、高校生の流雫(るな)は出迎えた澪(みお)と共にとある少女の襲撃事件に遭遇し、助ける。その半日後、アルスは彼女と全く同じ少女をパリの空港で目撃する。それはフランスの新宗教、太陽騎士団の聖女アリスだった。  翌日、流雫は前日助けた少女と再会する。彼女の名はプリィ。流雫がフランス人だった頃、何度か遊んだ仲だった。  そのプリィが告げたのは、アリスは自分をベースとしたクローンと云う事実だった。しかし、そのクローンのデータが流出していることが発覚する。  日本とフランス、2つの国を跨ぐサスペンスアクション。技術と宗教倫理に挟まれる人工生命体の在り方とは。6発の銃弾で、大きな陰謀に立ち向かえ。

処理中です...