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第八章 決戦!ペリドット領

205、演習場にて

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 演習場はペリドット領主個人の持ち物で、定期的に騎士団に貸出をしていた。先日の騎士団襲撃事件で、ペリドットは騎士団だけではなく演習場も攻撃を受け被害があったと公表。そして今も演習場への道は封鎖され、立ち入りができなくなっていたのだ。

「まずはこの辺に馬車を隠しましょう」

「「はい」」

 オリビアは御者に隠れているよう指示し、ジョージ、リタ、セオと道の端から森に入った。セオが先頭を歩き、オリビアたちを誘導する。

「セオ、よくこんな道知っていたわね」

「演習場は借り物ですからね。周りの地形や万が一の避難経路など、念の為調べていました。当時は何の役にも立たず怪我をしてご迷惑をかけてしまいましたが……」

 感心し目を輝かせるオリビアに、セオは振り向いて肩をすくめた。気恥ずかしそうに苦笑している。以前の黒ローブ魔導士による騎士団襲撃事件は、彼にとって痛い思い出なのだろう。

「こちらが近道です。道が悪いのでお手をどうぞ、オリビア様。リタさんジョージさんも気をつけて」

「ありがとう、セオ」

 オリビアは差し出されたセオの手を取り、こぶし大の石ころや木の枝葉が落ちている悪路を進んだ。一瞬振り向いて見てみると、後ろを歩くリタとジョージはバランスを崩すことなく歩いている。先ほどの市街地の道と変わらないと言わんばかりに涼しい顔している。

「皆さん、一度止まってください」

 セオが足を止め、上着の内ポケットから小さな双眼鏡を出した。遠くを眺め、再びポケットにそれをしまう。

「演習場が見えました。誰かがいるみたいです。ここからは目立たぬよう身を縮め、ゆっくり進みましょう」

 オリビアはセオに向かって首を大きく縦に振った。リタ、ジョージも同様に返事をした。身を屈めながら静かに歩みを進める。

「「うおおおお!!」」

 まるで地鳴りのようだった。それが人の声だとわかったのは、前方に大勢の人間が整列し、片手を空に掲げていたのが見えたからだ。

「あれは……黒いローブ?」

 葉の生い茂った枝の隙間から、演習場が見えた。切り立った崖に囲まれた円形の地面は荒れていない。それどころかきちんと整備されていそうだ。大砲などの武器もいくつかあり、今も問題なく演習場として機能しているようだった。

「私や騎士団を襲った連中と同じ格好です」

 セオが整列している黒ローブの連中を睨みつける。その間も黒ローブの集団は何度も声をあげ、手を下げてはまた掲げる。何かの決起集会のように見える。

「何をしているのかしら……」

「集中して聞いてみましょう」

 オリビアはセオの呼びかけに頷き、リタとジョージにも目で合図した。全員で黒ローブの集団に注目し、必死になって耳を傾ける。すると、わずかに声が聞こえてきた。集団の先頭に向かい立つ人間が、何かを口元に当て、全体に呼びかけている。おそらく魔道具で声を大きくしているのだろう。オリビアは聞き逃すまいとさらに集中した。

>>続く
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