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第八章 決戦!ペリドット領
197、火曜は兄がパーティー仕様
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火曜日。オリビアはジョージ、リタとともに朝から馬車に揺られながら、クリスタル領を目指した。八時間の道のりは遠く、昨日乗ったレオンの馬車が少しばかり恋しい。
「いいかげん、この長旅もしょっ中だと疲れてしまうわね。私にもっと魔力があったら、きっとテレポートを練習したわ」
「わかる~。それか昨日乗った王子様の馬車乗りたいっすね」
「ジョージ! そんな恐れ多いこと言うな!」
三人でいつものように会話をしてみるものの、緊張感が拭えない。領地に戻れば大仕事が待っている。オリビアは今にも雨が降り出しそうな厚い雲に覆われた空を眺め、そっと目を瞑った。
夕方、長旅を終えたオリビアは馬車から降り、凝り固まった体を伸ばした。
「よかった。夕食には間に合ったわね」
「オリビア様、おかえりなさいませ」
屋敷の門前にはセオが待っていた。オリビアから荷物を受け取り、リタとジョージにも挨拶している。
「オリビア、リタ、ジョージ! 待っていたぞ!」
「お兄様!」
「エリオット様!」
門から屋敷に向かっていると両開きの扉が開き、兄のエリオットがやってきた。しばらく外出を控えている上に先日の事件もあり、彼もストレスが溜まっていたようだ。オリビアたちの到着を心待ちにしていたのが、笑顔からも身につけているよそ行きの衣装からも見て取れた。
「食事の用意ができているぞ。さあ、早く行こう!」
「「はい」」
オリビアは兄に圧倒され、荷物の荷解きもせず直接食堂に向かった。
「お兄様、今日もお父様はいないのですか?」
「ああ。例の事件で娼館や警備の者と話していて、毎日帰りが遅いんだ」
「そうですか、お母様は?」
食卓に兄以外いないのが不思議で聞いてみる。エリオットはふうと息を吐き、肩をすくめた。
「昨日、実家があるオニキスから戻られたのだが、事件を知って伏せってしまった。数日したら起きてくるとは思うが……」
オリビアとエリオットの母キャサリンは、厳格な貴族であるオニキス家出身の生粋のお嬢様だ。繊細な女性で、悲しみや恐怖など負の感情が許容量を超えると、すぐに寝込んでしまう。きっと娘と変わらぬ年頃の少女の死に、彼女の心が耐えられなかったのだろう。
「早く事件が解決するといいのですが。ところでお兄様、その派手な格好は一体どうなさったのでしょうか?」
オリビアは兄の衣装に視線を移した。彼は「ああ、これはな」と言って口の端を上げる。
「そんな感じで領地も家も暗いからな。俺だけでも明るく、装いも豪華にしてみんなの気分を晴れやかにしたいと思ったんだ。どうだオリビア、パーティーみたいで楽しいだろう?」
「え、ええ、そうですね」
ダンスパーティーのような衣装はそのせいか。輝く長い金髪を手で後ろに流し、得意げに笑う兄を見て、オリビアは口元を引きつらせながら笑みを返した。
その後はジョージやリタと一緒に、兄の気が済むまでカードゲームをして過ごしたオリビア。本当はセオに調査の進捗を確認したかった。だが自分自身も短期間での王都と自領の往復に疲れていたので、まずはしっかり体を休めることにしたのだ。
あと二晩でリアムに会える。夜、ベッドに潜り込んだオリビアは遠い王都にいる恋人を思い浮かべながら眠りについた。
>>続く
「いいかげん、この長旅もしょっ中だと疲れてしまうわね。私にもっと魔力があったら、きっとテレポートを練習したわ」
「わかる~。それか昨日乗った王子様の馬車乗りたいっすね」
「ジョージ! そんな恐れ多いこと言うな!」
三人でいつものように会話をしてみるものの、緊張感が拭えない。領地に戻れば大仕事が待っている。オリビアは今にも雨が降り出しそうな厚い雲に覆われた空を眺め、そっと目を瞑った。
夕方、長旅を終えたオリビアは馬車から降り、凝り固まった体を伸ばした。
「よかった。夕食には間に合ったわね」
「オリビア様、おかえりなさいませ」
屋敷の門前にはセオが待っていた。オリビアから荷物を受け取り、リタとジョージにも挨拶している。
「オリビア、リタ、ジョージ! 待っていたぞ!」
「お兄様!」
「エリオット様!」
門から屋敷に向かっていると両開きの扉が開き、兄のエリオットがやってきた。しばらく外出を控えている上に先日の事件もあり、彼もストレスが溜まっていたようだ。オリビアたちの到着を心待ちにしていたのが、笑顔からも身につけているよそ行きの衣装からも見て取れた。
「食事の用意ができているぞ。さあ、早く行こう!」
「「はい」」
オリビアは兄に圧倒され、荷物の荷解きもせず直接食堂に向かった。
「お兄様、今日もお父様はいないのですか?」
「ああ。例の事件で娼館や警備の者と話していて、毎日帰りが遅いんだ」
「そうですか、お母様は?」
食卓に兄以外いないのが不思議で聞いてみる。エリオットはふうと息を吐き、肩をすくめた。
「昨日、実家があるオニキスから戻られたのだが、事件を知って伏せってしまった。数日したら起きてくるとは思うが……」
オリビアとエリオットの母キャサリンは、厳格な貴族であるオニキス家出身の生粋のお嬢様だ。繊細な女性で、悲しみや恐怖など負の感情が許容量を超えると、すぐに寝込んでしまう。きっと娘と変わらぬ年頃の少女の死に、彼女の心が耐えられなかったのだろう。
「早く事件が解決するといいのですが。ところでお兄様、その派手な格好は一体どうなさったのでしょうか?」
オリビアは兄の衣装に視線を移した。彼は「ああ、これはな」と言って口の端を上げる。
「そんな感じで領地も家も暗いからな。俺だけでも明るく、装いも豪華にしてみんなの気分を晴れやかにしたいと思ったんだ。どうだオリビア、パーティーみたいで楽しいだろう?」
「え、ええ、そうですね」
ダンスパーティーのような衣装はそのせいか。輝く長い金髪を手で後ろに流し、得意げに笑う兄を見て、オリビアは口元を引きつらせながら笑みを返した。
その後はジョージやリタと一緒に、兄の気が済むまでカードゲームをして過ごしたオリビア。本当はセオに調査の進捗を確認したかった。だが自分自身も短期間での王都と自領の往復に疲れていたので、まずはしっかり体を休めることにしたのだ。
あと二晩でリアムに会える。夜、ベッドに潜り込んだオリビアは遠い王都にいる恋人を思い浮かべながら眠りについた。
>>続く
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