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第七章 オリビアの魔法
175、契約締結!1
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「ジョージ、アレを持ってきてくれる?」
「はい、かしこまりました」
同席していたジョージはオリビアの机から紙と万年筆、ナイフを手に取ってオリビアに差し出した。それを受け取り、オリビアはレオンとリアムに一枚ずつ紙を手渡す。
「オリビア嬢、これは……」
「契約書?」
受け取ったふたりは内容に目を通しながら首を傾げた。オリビアは困惑する彼らを見て無理はないと思いつつ、説明を始める。
「申し訳ありません。私の魔法ですが、気軽に明かせるものではないのです。なので魔法について話す際は秘密を守るための契約をしています。おふたりとも内容を確認し、サインと母印をお願いしますわ」
「ああ……」 「わかった」
レオンとリアムが真剣な目で契約書を読み、万年筆を手に取った。順番にサラサラと自分の名を書き、ナイフで親指を切って名前の隣に押しつける。
「殿下、切った指をお出しください。私の魔法で回復します」
「リアム……ありがとう」
リアムがレオンの手を取り魔法で切った指を治癒させる。続いて彼は自分の指も同様に治した。
「オリビア嬢、私たちの準備はできた。契約書を受け取ってくれ」
「ありがとうございます」
オリビアはふたりから差し出された契約書を受け取りテーブルに並べて置き、その上に自分の手を置いた。そして、目を閉じ魔力を流しながら契約の呪文を唱える。
「契約を司る始祖、カエデ・オニキスよ、その力を其方の末裔である我に与えたまえ……」
契約書から、まばゆい光が放たれる。周りの人間が目を瞑っている中、オリビアはそれに耐えながら契約の呪文を唱え続けた。
「我、オリビア・クリスタルは、リアム・アレキサンドライト、レオン・ダイヤモンド=ジュエリトスと書に記されし血の契約を交わす。始祖よ、この契約と我らの魂を繋ぎ、命が尽きるまで守り続けよ、契約締結!」
「うっ……!」
「これは?」
一瞬、突風が吹き光とともに収まる。レオンとリアムはそれぞれ手元を見て顔をしかめたり首を傾げていた。オリビアは彼らに優しい口調で語りかける。
「お話しし忘れていましたが、契約の証として体に契約紋が刻まれます。すぐに消えますからご安心を」
契約紋が刻まれた手を見ていたレオンとリアムが、紋が消えるのを見ながら瞬きをしていた。オリビアはその様子を見ながら、この先の話では彼らはきっと困惑してしまうだろうと苦笑いを浮かべた。
「オリビア嬢、君は契約魔法が使えるのか?」
「驚いたよ……」
「ええ、母が契約魔法に強いオニキス家出身ですからその血が濃く出ているようです。ですが、私がお話ししたいのは、もう一つの魔法の話なのです」
「「もうひとつ?」」
首を傾けるレオンとリアムに、オリビアは黙って頷いた。
「はい。私には使える魔法がもう一つあるのです。それは……『繋ぐ』というものです」
「「繋ぐ?」」
先ほどと同じように首を傾げるふたりを見て、オリビアは息を漏らした。
「ふふっ……。おふたりとも、息ぴったりですわね。少し長くなりますが、昔話をさせてください」
赤面するレオンとリアムに笑いかけながら、オリビアは遠くを見つめ、自分の魔法を自覚した当時のことを思い出していた。
>>続く
「はい、かしこまりました」
同席していたジョージはオリビアの机から紙と万年筆、ナイフを手に取ってオリビアに差し出した。それを受け取り、オリビアはレオンとリアムに一枚ずつ紙を手渡す。
「オリビア嬢、これは……」
「契約書?」
受け取ったふたりは内容に目を通しながら首を傾げた。オリビアは困惑する彼らを見て無理はないと思いつつ、説明を始める。
「申し訳ありません。私の魔法ですが、気軽に明かせるものではないのです。なので魔法について話す際は秘密を守るための契約をしています。おふたりとも内容を確認し、サインと母印をお願いしますわ」
「ああ……」 「わかった」
レオンとリアムが真剣な目で契約書を読み、万年筆を手に取った。順番にサラサラと自分の名を書き、ナイフで親指を切って名前の隣に押しつける。
「殿下、切った指をお出しください。私の魔法で回復します」
「リアム……ありがとう」
リアムがレオンの手を取り魔法で切った指を治癒させる。続いて彼は自分の指も同様に治した。
「オリビア嬢、私たちの準備はできた。契約書を受け取ってくれ」
「ありがとうございます」
オリビアはふたりから差し出された契約書を受け取りテーブルに並べて置き、その上に自分の手を置いた。そして、目を閉じ魔力を流しながら契約の呪文を唱える。
「契約を司る始祖、カエデ・オニキスよ、その力を其方の末裔である我に与えたまえ……」
契約書から、まばゆい光が放たれる。周りの人間が目を瞑っている中、オリビアはそれに耐えながら契約の呪文を唱え続けた。
「我、オリビア・クリスタルは、リアム・アレキサンドライト、レオン・ダイヤモンド=ジュエリトスと書に記されし血の契約を交わす。始祖よ、この契約と我らの魂を繋ぎ、命が尽きるまで守り続けよ、契約締結!」
「うっ……!」
「これは?」
一瞬、突風が吹き光とともに収まる。レオンとリアムはそれぞれ手元を見て顔をしかめたり首を傾げていた。オリビアは彼らに優しい口調で語りかける。
「お話しし忘れていましたが、契約の証として体に契約紋が刻まれます。すぐに消えますからご安心を」
契約紋が刻まれた手を見ていたレオンとリアムが、紋が消えるのを見ながら瞬きをしていた。オリビアはその様子を見ながら、この先の話では彼らはきっと困惑してしまうだろうと苦笑いを浮かべた。
「オリビア嬢、君は契約魔法が使えるのか?」
「驚いたよ……」
「ええ、母が契約魔法に強いオニキス家出身ですからその血が濃く出ているようです。ですが、私がお話ししたいのは、もう一つの魔法の話なのです」
「「もうひとつ?」」
首を傾けるレオンとリアムに、オリビアは黙って頷いた。
「はい。私には使える魔法がもう一つあるのです。それは……『繋ぐ』というものです」
「「繋ぐ?」」
先ほどと同じように首を傾げるふたりを見て、オリビアは息を漏らした。
「ふふっ……。おふたりとも、息ぴったりですわね。少し長くなりますが、昔話をさせてください」
赤面するレオンとリアムに笑いかけながら、オリビアは遠くを見つめ、自分の魔法を自覚した当時のことを思い出していた。
>>続く
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