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第五章 交差する陰謀

130、ジョージの週末2

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 翌日、雨はやんでいたがどんよりとした濃い灰色の雲が空を覆っていた。
 ジョージは朝、主人と同僚を見送ってからゆっくりと準備をして昼過ぎに寮を出た。そして、先日訪れた繁華街の奥の寂れた宿屋にやってきた。

「旦那、オリーブちゃんに会いにきたのかい?」

「ああ、そうだよ。彼女は部屋にいる?」

 カウンターにはこの前と同じ年配の女性が立っていた。しかし、今日は無愛想ではなかった。

 初めから黄ばんだ歯を見せて笑い、さらには心なしか声が高い。

 きっと先日渡した紙幣と今日の高級品で身を包んだ姿が効果的なのだろう。明らかに自分を上客として扱う彼女に、ジョージは苦笑しつつ紙幣を渡した。

「オリーブちゃんは部屋にいますよ。ごゆっくり」

「ありがとう」

 紙幣を受け取り、女性は歯茎まで剥き出しにして満面の笑みを浮かべた。
 ジョージはそれをなるべく視界に入れないようにしながら急いで客室へ続く階段を登った。

(ていうか『旦那』って……。俺まだ十七歳なんだけど)

 二階に上がって廊下を歩き、五号室と書いたドアをノックする。

「はーい! ジョージ、とりあえず入ってちょうだい」

「おじゃましまーす」

 オリーブがドアを開け入室を促すので、ジョージは部屋の中に入って先日も座った椅子に腰を下ろした。オリーブはジョージに目もくれず、鏡の前で耳飾りを合わせていた。

「そっちのパールのやつにしなよ」

「ん? ああ、これかい。いいねえ」

 ジョージは鏡越しに指差しをして耳飾りを選んだ。オリーブが耳に合わせ、口角を上げる。次に彼女は赤い口紅で唇を染めた。

「よし、いい女! 待たせたねえ」

「姐さんがさらにきれいになるなら、いくらでも待ちますよ」

 ジョージの軽口に、オリーブが目を細める。

「本当に口が達者だねえ。さ、行くよ」

「へいへい」

 ジョージはオリーブと宿屋を出て、広場まで来た道を戻った。そしてタウンハウスなどがある通りに並行な隣の道に入っていく。店構えや置いているものが明らかに高級そうな服屋や靴屋、化粧品店などが並んでいた。

「ここは貴族のタウンハウスの隣の通りだから、高級店が多いのさ」

「うーん、ゼロが一個多いってやつっすね」

「まあね、その奥のブティックが例の店さ。さらにお高いよ。客も選ぶ」

「ふうん」

 高級店を数軒通り、ついに目当ての店の前に辿り着いたジョージ。ガラス張りのショーウィンドウに、仕立ての良さそうなドレスとタキシードが飾ってあった。たしかに客を選ぶ金額だ。

「よろしければ、中の洋服もご覧ください」

「ああ、ぜひ」

 ジョージがショーウィンドウを見ていると、中から店員の男性がやってきて声をかけてきた。どうやら自分たちは客として認められたようだ。案内されるままジョージは店内に進む。

>>続く
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