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第五章 交差する陰謀

127、ジョージの密会2

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 ジョージの問いかけに、オリーブは頷き一瞬視線を巡らせてから答えを口にした。

「……ペリドット伯爵家」

「え、ペリドットって、あの?」

 ジョージはそれ以上の言葉が出なかった。このままだと、ここ最近起きたきな臭い出来事の大半が線で結ばれそうだ。

「そう、クリスタルの隣の領地でマルズワルトとの国境がある、あのペリドット領さ。そういえば、ペリドット領で演習をした騎士団員たちが帰り道で何者かに襲われる事件があったみたいだね」

「そうっすね……」

 ジョージは急に発覚した事態に自身の頭をフル回転させていた。とりあえず騎士団襲撃事件とハイランドシープとペリドットが繋がった。

 マルズワルトはハイランドシープの輸入のみに関わっているのか、それとも?

 ラピスラズリとの関係も見えない。まだ謎は多い。

「今のところハイランドシープの輸入以外に、マルズワルトが関わった証拠はない」

「なるほど」

 ジョージの疑問を察したかのようにオリーブが淡々と話した。彼女はさらに言葉を重ねる。

「ただ、ラピスラズリとペリドットには繋がりがある。それもかなりうさん臭いのがね」

「え……」

「ペリドット伯爵の妻エヴァは、元々ラピスラズリ侯爵の愛人だったんだよ。それを侯爵は十年前に自分の養女にして、彼女をペリドット家に嫁がせた。これで実質、侯爵は伯爵の義父となったのさ」

「イカれてるとしか思えないね」

 自らが貴族の愛人の息子という立場もあり、ジョージはラピスラズリ侯爵のしたことに憤りを覚えた。
 目の前でオリーブが視線をやや下に落とし息を吐いていた。彼女は自分の境遇を知っているから、いたたまれなくなったのだろう。
 気を落ち着かせるため、少しぬるくなりはじめた紅茶を飲む。

「それに、ラピスラズリは侯爵家でありながら王都と隣接する領地を持っているんだ」

「それはおかしいんじゃない? 確か、王都に隣接できるのは公爵家の領地だけだ。そこから扇状に侯爵家、伯爵家が続くはずっすよ」

 ジュエリトス国内での領地の分布は王宮の奥の山に神殿があり、神職者と王族のみ出入りできる聖域となっている。それを守るように王宮があり、さらに王都がある。王都に隣接する土地は公爵家が囲み、万が一公爵家が土地を手放す場合は別な公爵家に引き継がれるのが暗黙のルールなはずだ。

 なぜここでラピスラズリ侯爵家が?

 ジョージはオリーブに問いかけるような視線を投げかけた。彼女はそっと頷いた。

>>続く
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