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第二章 王都にお引越し! クラスメイトは王子様
38、狡猾な王子と無骨な騎士2
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オリビアはレオンに誘われ、彼とその護衛と共に二階席へ向かった。
会場中が拍手をしながら彼らを見送っている事に居心地の悪さは感じる。しかし人混みから離れられる事にオリビアは安堵していた。
レオンと二階の席のソファに向かい合って腰掛ける。給仕係が二人の前に飲み物を差し出した。
「オリビア嬢、改めて明日からよろしく」
「こちらこそ、よろしくお願いいたします」
お互いグラスを軽く持ち上げ、乾杯しグラスに口をつける。
「君が酒を飲むかわからなかったからジュースにしたけど、良かったかな?」
「はい、私は飲酒はしませんから。レオン殿下はお酒をお召しになるのですか?」
「もう十五歳だからね。嗜む程度には」
「そうでしたか。私も十五歳になった時、飲んではみたのですが、合わなかったみたいで」
「そう。これ、飲んでみる?」
「いいえ。遠慮いたしますわ」
ジュエリトス王国では成人する十五歳から酒などの嗜好品が解禁される。
レオンは白葡萄の発泡酒を飲んでいた。グラスの中で、小さな気泡が下から上へゆっくりと上がっている。
十五歳の誕生日に、ジョージに乗せられボトルごと酒を飲んで二日酔いを経験した悲惨な思い出がオリビアの頭をよぎり、キッパリと断った。
「そう、残念。ところで君は領地で店を経営してると聞いたんだけど本当?」
「はい。私も兄もそれぞれ店を経営しております」
二階席であまり人目につかなくなったせいか、レオンとも少し肩の力を抜いて話せるようになっていた。
「へえ、かなり人気と聞いたんだけど、どんなお店?」
「え! カ、カフェでございます」
さすがに、どんなカフェか話す勇気はなかった。
「今度行ってみたいなあ」
「はい。クリスタル領は辺境にありますので難しいかもしれませんが、機会がありましたら是非お立ち寄りくださいませ」
オリビアはどうせ来ないだろうとたかを括り、社交辞令の笑顔を浮かべた。しかしレオンにはお見通しのようだった。彼から先程までとは打って変わって、やや意地悪な笑みを向けられ、一瞬オリビアは身構えた。
「どうせ来るわけないと思っているね。必ず行くから案内してもらうよ?」
「は! はい! かしこまりました……」
自分の考えを見透かされ、恥ずかしくなったオリビア。軽く俯き返事をすると飲み物を一口飲んでその場を取り繕う。
ふと顔を上げると二階席の反対側に、見覚えのある赤髪の騎士を見つけた。深い緑色の瞳は真っ直ぐにこちらを見ているのがわかる。
「リアム様……」
「ん? どうしたの? ああ、リアムか。知り合いなの?」
レオンの問いかけに「は、はい」とオリビアは頷く。
「ふうん。じゃあ呼んでみようか。ねえ、リアム・アレキサンドライトをここに」
「かしこまりました」
レオンが護衛に指示し、数分後には騎士団の制服に身を包んだリアムが目の前に現れた。彼は到着早々まずレオンに敬礼する。
「レオン殿下、お待たせいたしました。お呼びでしょうか」
「やあリアム。君の小隊、隊員が半減して解体になったと聞いたが今日は警備で?」
「はい! 三番小隊の支援で本日は会場内の警備にあたっております」
「そう。彼女と知り合いなんだって? まあ座りなよ」
「はい、失礼いたします!」
リアムがオリビアとレオンの間のソファに腰掛ける。同じサイズなはずなのに、彼のソファだけ随分と小さく見える。
オリビアがリアムに目を向けると、彼は緊張の面持ちで膝の上で拳を握り、前を見据えていた。
レオンがその様子を見て、グラスを手に持ち酒を一口飲んでから軽く口角を上げる。
「ふたりはどこで知り合ったの? 領地も遠いでしょう?」
>>続く
会場中が拍手をしながら彼らを見送っている事に居心地の悪さは感じる。しかし人混みから離れられる事にオリビアは安堵していた。
レオンと二階の席のソファに向かい合って腰掛ける。給仕係が二人の前に飲み物を差し出した。
「オリビア嬢、改めて明日からよろしく」
「こちらこそ、よろしくお願いいたします」
お互いグラスを軽く持ち上げ、乾杯しグラスに口をつける。
「君が酒を飲むかわからなかったからジュースにしたけど、良かったかな?」
「はい、私は飲酒はしませんから。レオン殿下はお酒をお召しになるのですか?」
「もう十五歳だからね。嗜む程度には」
「そうでしたか。私も十五歳になった時、飲んではみたのですが、合わなかったみたいで」
「そう。これ、飲んでみる?」
「いいえ。遠慮いたしますわ」
ジュエリトス王国では成人する十五歳から酒などの嗜好品が解禁される。
レオンは白葡萄の発泡酒を飲んでいた。グラスの中で、小さな気泡が下から上へゆっくりと上がっている。
十五歳の誕生日に、ジョージに乗せられボトルごと酒を飲んで二日酔いを経験した悲惨な思い出がオリビアの頭をよぎり、キッパリと断った。
「そう、残念。ところで君は領地で店を経営してると聞いたんだけど本当?」
「はい。私も兄もそれぞれ店を経営しております」
二階席であまり人目につかなくなったせいか、レオンとも少し肩の力を抜いて話せるようになっていた。
「へえ、かなり人気と聞いたんだけど、どんなお店?」
「え! カ、カフェでございます」
さすがに、どんなカフェか話す勇気はなかった。
「今度行ってみたいなあ」
「はい。クリスタル領は辺境にありますので難しいかもしれませんが、機会がありましたら是非お立ち寄りくださいませ」
オリビアはどうせ来ないだろうとたかを括り、社交辞令の笑顔を浮かべた。しかしレオンにはお見通しのようだった。彼から先程までとは打って変わって、やや意地悪な笑みを向けられ、一瞬オリビアは身構えた。
「どうせ来るわけないと思っているね。必ず行くから案内してもらうよ?」
「は! はい! かしこまりました……」
自分の考えを見透かされ、恥ずかしくなったオリビア。軽く俯き返事をすると飲み物を一口飲んでその場を取り繕う。
ふと顔を上げると二階席の反対側に、見覚えのある赤髪の騎士を見つけた。深い緑色の瞳は真っ直ぐにこちらを見ているのがわかる。
「リアム様……」
「ん? どうしたの? ああ、リアムか。知り合いなの?」
レオンの問いかけに「は、はい」とオリビアは頷く。
「ふうん。じゃあ呼んでみようか。ねえ、リアム・アレキサンドライトをここに」
「かしこまりました」
レオンが護衛に指示し、数分後には騎士団の制服に身を包んだリアムが目の前に現れた。彼は到着早々まずレオンに敬礼する。
「レオン殿下、お待たせいたしました。お呼びでしょうか」
「やあリアム。君の小隊、隊員が半減して解体になったと聞いたが今日は警備で?」
「はい! 三番小隊の支援で本日は会場内の警備にあたっております」
「そう。彼女と知り合いなんだって? まあ座りなよ」
「はい、失礼いたします!」
リアムがオリビアとレオンの間のソファに腰掛ける。同じサイズなはずなのに、彼のソファだけ随分と小さく見える。
オリビアがリアムに目を向けると、彼は緊張の面持ちで膝の上で拳を握り、前を見据えていた。
レオンがその様子を見て、グラスを手に持ち酒を一口飲んでから軽く口角を上げる。
「ふたりはどこで知り合ったの? 領地も遠いでしょう?」
>>続く
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