運命のブーケトス

たんぽぽ。

文字の大きさ
上 下
4 / 4

運命のブーケトス

しおりを挟む
 ユッコの結婚披露宴は滞りなく進行し、やがて中盤に差し掛かった。

「次は皆様お待ちかね、ブーケトスに移りたいと思います」

司会者がにこやかに言ったけど、あたしは別に待ちに待ってないし、参加したくもない。

 すると二回目のお色直しでドピンクのカラードレスに着替えたユッコが、司会者からマイクを受け取った。

「ブーケトスは、アタシの親友たち4人に参加してもらいたいと思ってます‼︎」

 え……嫌な予感がする……。

「リョウコ、ヨシエ、カナ、サナエ! こちらへどうぞ‼︎」

まさかの強制参加だった。場を白けさせる訳にもいかず、あたし達はしぶしぶ前に出た。

 ユッコは何故か目を潤ませて、叫んだ。

「アタシの幸せをォ、可哀想な独身女達にィ、分けてあげたいとォ、思いますゥゥゥ!!!」

 てめぇぶん殴るぞこの花畑女が……主役だからって何言ってもいい訳じゃねぇぞ……‼︎

「参列してくれたささやかなお礼として、ブーケの中に、5,000円分の図書カードを忍ばせています♪」

でもユッコがそう言った瞬間、皆んなの目つきが変わった。5,000円分、だ、と⁈ そんなら話は別だわ……。

 決めた! ブーケ、あたしが絶対手に入れる! そしてユッコの旦那よりいい男を捕まえて、そのお金で絶対にゼクシィを買ってやる‼︎

 思ってることは皆んな一緒らしく、カナは屈伸運動を開始した。ヨシエは座禅を組み精神統一を行っている。サナエはヒールと、ストッキングまで脱いでいる。

 あたしは下半身に力を込め筋肉を肥大させ、ヒール及びストッキングを弾け飛ばした。ブチリブチリ。

「皆んな、いっくよ~~☆ ウェエェェイッ‼︎」

 ユッコの手からブーケが放られた。

「「「「ウオォアォオオォァオア‼︎」」」」

ブーケはあたしから一番遠い、サナエの頭上へ……! まずいわ! あ、カナがブーケを弾き飛ばした! ファインプレイ! でもでも、それをヨシエが掴もうとして……あと一歩届かず‼︎ サナエがスライディングでブーケを奪おうと床を滑る! あたしも負けじと手を伸ばす、カナがあたしの脚を引っ張る! ちょっと、やめなさいよ‼︎ ヨシエもサナエに覆い被さって、サナエを阻止‼︎ すかさずヨシエがブーケを掴みかけ……、

させるかぁぁああぁぁあ!!!

あたしはヨシエのドレスのウエスト部分のリボンをムンズと掴み彼女を引き戻す、ブーケはヨシエの手に当たって上空へ舞った‼︎ あたしはカナをふりほどき……、

 肥大せし脚の筋肉はあたしを素早く上へと跳躍させた。ブーケ、ゲットォ‼︎ ヤッタネ、図書カード‼︎ 

 そのままあたしは式場の屋根を突き破り、その勢いで大気圏に突入した。せっかくゲットした図書カードが燃え尽きてしまう。

チッ……これじゃゼクシィ買えねぇ……。

 突然衝撃があたしの頭部を襲った。視線を上げると、銀色に輝く巨大な塊が頭上を覆っている。どうやら、ふわふわ浮いていた飛行物体に激突したみたい。

 何だ、UFOかよ。よりによってあたしの描くべき放物線の先に浮いているとは……

 飛行物体の扉らしき部分がウィィ~~ンと開いた。謎の素材に頭頂部がめり込んだあたしはUFOキャッチャーの腕のような物で挟まれ、内部に引き込まれた。あぁ、服がズタズタだ……。

「£#♭Å∵∞‼︎ £#♭Å∵∞‼︎」
地球外生命体があたしを指差して何か怒鳴ってる。何言ってんのか全然わかんないし、何なのよコイツは‼︎

 あたしは地球外生命体に詰め寄った。
「ちょっとぉ! この服高かったのに! 弁償しなさいよね‼︎」

 地球外生命体はしばらく首を360度グルングルン回転させたり触角みたいなのをピンピン振り回したりしてたけど、急に動きを止めた。そしてコンニャクの様な物を3本の指で宙から取り出し飲み込んだ。

「ナンテ コト シテクレタンダ フネ ニ キズ ガ ツイタ」

地球外生命体は平坦なイントネーションで、なんと日本語を話し出した。コンニャクは意思疎通を可能にするアイテムみたいな物なのかしら?

「だから! あんたのせいでドレスが台無しなのよ‼︎」

あたしはたかが地球外生命体に負けじと声を張り上げる。

 地球外生命体はあたしをジッと見つめてる……何、この感じ……身体の中がほんわりあったかくなるような感覚……もしや、これは……

「ダンゴッパナ ニ シモブクレ ノ リンカク イナカッペ ミタイ ナ アカスギル チーク……
オヌシ、ゲキカワワワワワ‼︎」

「エメラルドグリーンに輝くツヤッツヤのボディに、顔の4分の3を占めるお目々……あたしのストライクゾーンど真ん中‼︎」

 地球外生命体のボディが虹色に輝き、あたし達は手を固く握り合った。

「「ディスティニーーーーー!!!!」」

 あたし達の愛は、永遠の物ね……。図書カードなんて、もはやどうでもいいわ‼︎ 地球外生命体との出会い、オー、プライスレス‼︎







 これが、あたしとダァとの出会いでっす☆

 サナエもカナもヨシエも、あたしみたいに早く幸せになって欲しいなぁ~~☆
しおりを挟む

この作品は感想を受け付けておりません。

あなたにおすすめの小説

「お前を妻だと思ったことはない」と言ってくる旦那様と離婚した私は、幼馴染の侯爵から溺愛されています。

木山楽斗
恋愛
第二王女のエリームは、かつて王家と敵対していたオルバディオン公爵家に嫁がされた。 因縁を解消するための結婚であったが、現当主であるジグールは彼女のことを冷遇した。長きに渡る因縁は、簡単に解消できるものではなかったのである。 そんな暮らしは、エリームにとって息苦しいものだった。それを重く見た彼女の兄アルベルドと幼馴染カルディアスは、二人の結婚を解消させることを決意する。 彼らの働きかけによって、エリームは苦しい生活から解放されるのだった。 晴れて自由の身になったエリームに、一人の男性が婚約を申し込んできた。 それは、彼女の幼馴染であるカルディアスである。彼は以前からエリームに好意を寄せていたようなのだ。 幼い頃から彼の人となりを知っているエリームは、喜んでその婚約を受け入れた。二人は、晴れて夫婦となったのである。 二度目の結婚を果たしたエリームは、以前とは異なる生活を送っていた。 カルディアスは以前の夫とは違い、彼女のことを愛して尊重してくれたのである。 こうして、エリームは幸せな生活を送るのだった。

政略結婚の約束すら守ってもらえませんでした。

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 「すまない、やっぱり君の事は抱けない」初夜のベットの中で、恋焦がれた初恋の人にそう言われてしまいました。私の心は砕け散ってしまいました。初恋の人が妹を愛していると知った時、妹が死んでしまって、政略結婚でいいから結婚して欲しいと言われた時、そして今。三度もの痛手に私の心は耐えられませんでした。

就職面接の感ドコロ!?

フルーツパフェ
大衆娯楽
今や十年前とは真逆の、売り手市場の就職活動。 学生達は賃金と休暇を貪欲に追い求め、いつ送られてくるかわからない採用辞退メールに怯えながら、それでも優秀な人材を発掘しようとしていた。 その業務ストレスのせいだろうか。 ある面接官は、女子学生達のリクルートスーツに興奮する性癖を備え、仕事のストレスから面接の現場を愉しむことに決めたのだった。

思い出を売った女

志波 連
ライト文芸
結婚して三年、あれほど愛していると言っていた夫の浮気を知った裕子。 それでもいつかは戻って来ることを信じて耐えることを決意するも、浮気相手からの執拗な嫌がらせに心が折れてしまい、離婚届を置いて姿を消した。 浮気を後悔した孝志は裕子を探すが、痕跡さえ見つけられない。 浮気相手が妊娠し、子供のために再婚したが上手くいくはずもなかった。 全てに疲弊した孝志は故郷に戻る。 ある日、子供を連れて出掛けた海辺の公園でかつての妻に再会する。 あの頃のように明るい笑顔を浮かべる裕子に、孝志は二度目の一目惚れをした。 R15は保険です 他サイトでも公開しています 表紙は写真ACより引用しました

裏切りの代償

志波 連
恋愛
伯爵令嬢であるキャンディは婚約者ニックの浮気を知り、婚約解消を願い出るが1年間の再教育を施すというニックの父親の言葉に願いを取り下げ、家出を決行した。 家庭教師という職を得て充実した日々を送るキャンディの前に父親が現れた。 連れ帰られ無理やりニックと結婚させられたキャンディだったが、子供もできてこれも人生だと思い直し、ニックの妻として人生を全うしようとする。 しかしある日ニックが浮気をしていることをしり、我慢の限界を迎えたキャンディは、友人の手を借りながら人生を切り開いていくのだった。 他サイトでも掲載しています。 R15を保険で追加しました。 表紙は写真AC様よりダウンロードしました。

西遊記・亜

宵闇 歩
ライト文芸
『西遊記』の二次創作。妄想したいので原本はそっちのけです。 基本、会話表現での描写となります。 日常会話過多。 場面があっちこっちに飛びます。 不定期です。

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

夫が寵姫に夢中ですので、私は離宮で気ままに暮らします

希猫 ゆうみ
恋愛
王妃フランチェスカは見切りをつけた。 国王である夫ゴドウィンは踊り子上がりの寵姫マルベルに夢中で、先に男児を産ませて寵姫の子を王太子にするとまで嘯いている。 隣国王女であったフランチェスカの莫大な持参金と、結婚による同盟が国を支えてるというのに、恩知らずも甚だしい。 「勝手にやってください。私は離宮で気ままに暮らしますので」

処理中です...