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コント【魔王城門前にて】
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勇者「あれが魔王の城か……ついにここまで来たぞ! 今こそ皆の力を合わせる時、いざゆかん‼︎」
魔法使い「オー‼︎」
勇者「……人数足りてなくない?」
魔法使い「僧侶と剣士は実家に帰りました」
勇者「はぁ⁈ こんな時に何やってんだよ!」
魔法使い「僧侶の方は、父方のおばあちゃんが倒れたそうです」
勇者「それは心配だな。彼のおばあちゃんに懸ける情熱は並々ならぬ物があったからな」
魔法使い「アドレスも『oba-chankko』ですもんね」
勇者「仕方ない、おばあちゃんの容態が安定するまで待つしかないか……」
魔法使い「実はさっき、SNSですごい写真を見つけたんです。見てください、これ(スマホを差し出す)」
勇者「どれだ?」
魔法使い「真っ黒に日焼けした男が海をバックに、2人のおばあちゃんに挟まれてダブルピースしてるこの写真です。ほら、『#波乗りさんと繋がりたい #10年に1度のビッグウェーブ……』」
勇者「誰だコレ? 知り合いにこんなサーファーなんていないぞ」
魔法使い「これ僧侶です。肩にクワガタムシの形のアザがあるから間違いなく彼です」
勇者「何故お前が僧侶の肩にクワガタムシの形のアザがある事を知っているのかは置いといて、もはや別人じゃないか! 上沼恵◯子クラスの色白さんだったのに、ま~あ松崎し◯るレベルまで仕上がっちまって……!」
魔法使い「ここまでガッツリ写ってるんです、おばあちゃんが倒れたのは嘘だったと言う事です。こりゃあ戻って来ませんね」
勇者「いや、まだ決まった訳じゃない。よそん家のおばあちゃんかもしれないし……」
魔法使い「続きを見て下さい。『#両手に花 #右が父方おばあちゃん #左が母方おばあちゃん #長生きしてね♡』」
勇者「世界の平和よりおばあちゃんを取りやがって! もういい! 剣士はどうした‼︎」
魔法使い「彼は昔の日記帳を破りに実家に帰りました。気になり過ぎて魔王戦に集中出来ない、と」
勇者「恥ずかしいポエムとか書いてあるのかね。すでに親御さんに読まれてないといいけど」
魔法使い「『俺の部屋の押入れの半分は黒歴史で出来ている』との事でした」
勇者「半分やさしさで出来ている解熱鎮痛薬みたいに言うなよ!」
魔法使い「ところでさっき、ニュースサイトでこんな記事を見つけましたよ。『押入れに放火し自宅を半焼させた疑い、剣士(48)を逮捕。容疑者は「俺の部屋の押入れの半分は黒歴史で出来ている」などと意味不明な事を叫んでおり、』……」
勇者「100パーセントうちの剣士じゃねーか! てかあの人俺より10歳も上だったのか。タメ口で喋って悪いことしたな……」
魔法使い「続きがあります。『「黒歴史を短時間で抹消するにはこうするしかなかった」とも供述しているという』」
勇者「逆に黒歴史に、社会的に抹殺されちまってるじゃねぇか‼︎」
魔法使い「彼もまた戻らないでしょうねぇ」
勇者「仕方ない、俺たちだけで臨むしかないか……それにしても魔法使いだけは気持ち悪いくらいに冷静だな」
魔法使い「僕は魔王などちっとも怖くありません。何故なら実家がとても太いからです」
勇者「え? なんで実家が裕福だと怖くないの?」
魔法使い「武器にも装備にも、これでもかってくらい課金してますからね。ちなみに僕のひと月のお小遣いは53億ルピーです」
勇者「サラリーマンの月の平均お小遣いが4万ルピー弱のこのご時世に⁈ どうりでお前のスマホ、常に最新機種だったんだな……」
魔法使い「水を差すと悪いので黙ってたんです。数日かかった中ボス攻略も、僕が本気を出せば瞬殺だったでしょう」
勇者「そういうのはいっそ墓場まで持ってってくれよ。血眼になって雄叫び上げながら立ち向かってた俺たちが馬鹿みたいじゃないか……」
魔法使い「一夜にして全世界を海の底に沈めるレベルの呪文だって詠唱出来ますよ。試してみます?」
勇者「試さんでいいわ! 億単位の課金の効果は、是非とも魔王戦で発揮して下さい‼︎」
魔法使い「世界の平和すら金で買える時代だってことです。さ、行きましょうか」
勇者「何故だろう。お前の背中が急に大きく見えてきたな」
✳︎
勇者「我らは勇者パーティーだ! 魔王を倒しに来た、門を開けろ!」
門番A「悪いが魔王様は不在だ」
勇者「嘘をつくな! さては怖気付いたな‼︎」
門番B「嘘ではない。魔王様は魔王っぽい仕草の演技を極めた結果、演劇に目覚められた。今は俳優を志してN◯Kの朝ドラオーディションに出掛けているのだ」
勇者「有り得ない! もっとマシな嘘をつけよ!」
魔法使い「大丈夫、来年度のN◯K朝ドラと言えば放送開始200周年ですから、倍率も高そうです。きっと落ちますよ」
勇者「お前も真に受けるなよ!」
門番A「(プルルルル……)電話だ、ちょっと失礼 (ピッ)。あ、はーいお世話になっておりますぅ。はいはい、へぇぇ~それはおめでとうございますぅ! はいはい、はーい、お疲れで~す(ピッ)……受かったそうだ」
勇者「嘘だ! 誰か嘘だと言ってくれ!」
魔法使い「本当みたいですよ。ニュースサイトに速報が出てます。『来年度N◯K朝ドラ〈半分、黒い。〉ヒロイン役に元魔王(52)を大抜擢』だそうです」
勇者「よりによってヒロイン役かよ! N◯Kめ、俺たち以上に冒険してやがる」
魔法使い「僕たち、これでもうお払い箱ですね」
勇者「チクショーーーー‼︎‼︎」
✳︎
門番A「勇者の奴、泣きながら走ってったな」
門番B「無理もないさ、ラスボス攻略直前で職を失ったんだから」
門番A「俺たち魔王軍もとうとう解散か」
門番B「存在自体がたくさんの雇用を生み出してるってこと、魔王様はもっと自覚して欲しいよな……これからどうするよ?」
門番A「実家のちゃんこ屋つぐ。今までは門外から城を守ってたけど、これからは門外不出の白味噌ちゃんこ汁の味を守っていこうと思っている」
魔法使い「オー‼︎」
勇者「……人数足りてなくない?」
魔法使い「僧侶と剣士は実家に帰りました」
勇者「はぁ⁈ こんな時に何やってんだよ!」
魔法使い「僧侶の方は、父方のおばあちゃんが倒れたそうです」
勇者「それは心配だな。彼のおばあちゃんに懸ける情熱は並々ならぬ物があったからな」
魔法使い「アドレスも『oba-chankko』ですもんね」
勇者「仕方ない、おばあちゃんの容態が安定するまで待つしかないか……」
魔法使い「実はさっき、SNSですごい写真を見つけたんです。見てください、これ(スマホを差し出す)」
勇者「どれだ?」
魔法使い「真っ黒に日焼けした男が海をバックに、2人のおばあちゃんに挟まれてダブルピースしてるこの写真です。ほら、『#波乗りさんと繋がりたい #10年に1度のビッグウェーブ……』」
勇者「誰だコレ? 知り合いにこんなサーファーなんていないぞ」
魔法使い「これ僧侶です。肩にクワガタムシの形のアザがあるから間違いなく彼です」
勇者「何故お前が僧侶の肩にクワガタムシの形のアザがある事を知っているのかは置いといて、もはや別人じゃないか! 上沼恵◯子クラスの色白さんだったのに、ま~あ松崎し◯るレベルまで仕上がっちまって……!」
魔法使い「ここまでガッツリ写ってるんです、おばあちゃんが倒れたのは嘘だったと言う事です。こりゃあ戻って来ませんね」
勇者「いや、まだ決まった訳じゃない。よそん家のおばあちゃんかもしれないし……」
魔法使い「続きを見て下さい。『#両手に花 #右が父方おばあちゃん #左が母方おばあちゃん #長生きしてね♡』」
勇者「世界の平和よりおばあちゃんを取りやがって! もういい! 剣士はどうした‼︎」
魔法使い「彼は昔の日記帳を破りに実家に帰りました。気になり過ぎて魔王戦に集中出来ない、と」
勇者「恥ずかしいポエムとか書いてあるのかね。すでに親御さんに読まれてないといいけど」
魔法使い「『俺の部屋の押入れの半分は黒歴史で出来ている』との事でした」
勇者「半分やさしさで出来ている解熱鎮痛薬みたいに言うなよ!」
魔法使い「ところでさっき、ニュースサイトでこんな記事を見つけましたよ。『押入れに放火し自宅を半焼させた疑い、剣士(48)を逮捕。容疑者は「俺の部屋の押入れの半分は黒歴史で出来ている」などと意味不明な事を叫んでおり、』……」
勇者「100パーセントうちの剣士じゃねーか! てかあの人俺より10歳も上だったのか。タメ口で喋って悪いことしたな……」
魔法使い「続きがあります。『「黒歴史を短時間で抹消するにはこうするしかなかった」とも供述しているという』」
勇者「逆に黒歴史に、社会的に抹殺されちまってるじゃねぇか‼︎」
魔法使い「彼もまた戻らないでしょうねぇ」
勇者「仕方ない、俺たちだけで臨むしかないか……それにしても魔法使いだけは気持ち悪いくらいに冷静だな」
魔法使い「僕は魔王などちっとも怖くありません。何故なら実家がとても太いからです」
勇者「え? なんで実家が裕福だと怖くないの?」
魔法使い「武器にも装備にも、これでもかってくらい課金してますからね。ちなみに僕のひと月のお小遣いは53億ルピーです」
勇者「サラリーマンの月の平均お小遣いが4万ルピー弱のこのご時世に⁈ どうりでお前のスマホ、常に最新機種だったんだな……」
魔法使い「水を差すと悪いので黙ってたんです。数日かかった中ボス攻略も、僕が本気を出せば瞬殺だったでしょう」
勇者「そういうのはいっそ墓場まで持ってってくれよ。血眼になって雄叫び上げながら立ち向かってた俺たちが馬鹿みたいじゃないか……」
魔法使い「一夜にして全世界を海の底に沈めるレベルの呪文だって詠唱出来ますよ。試してみます?」
勇者「試さんでいいわ! 億単位の課金の効果は、是非とも魔王戦で発揮して下さい‼︎」
魔法使い「世界の平和すら金で買える時代だってことです。さ、行きましょうか」
勇者「何故だろう。お前の背中が急に大きく見えてきたな」
✳︎
勇者「我らは勇者パーティーだ! 魔王を倒しに来た、門を開けろ!」
門番A「悪いが魔王様は不在だ」
勇者「嘘をつくな! さては怖気付いたな‼︎」
門番B「嘘ではない。魔王様は魔王っぽい仕草の演技を極めた結果、演劇に目覚められた。今は俳優を志してN◯Kの朝ドラオーディションに出掛けているのだ」
勇者「有り得ない! もっとマシな嘘をつけよ!」
魔法使い「大丈夫、来年度のN◯K朝ドラと言えば放送開始200周年ですから、倍率も高そうです。きっと落ちますよ」
勇者「お前も真に受けるなよ!」
門番A「(プルルルル……)電話だ、ちょっと失礼 (ピッ)。あ、はーいお世話になっておりますぅ。はいはい、へぇぇ~それはおめでとうございますぅ! はいはい、はーい、お疲れで~す(ピッ)……受かったそうだ」
勇者「嘘だ! 誰か嘘だと言ってくれ!」
魔法使い「本当みたいですよ。ニュースサイトに速報が出てます。『来年度N◯K朝ドラ〈半分、黒い。〉ヒロイン役に元魔王(52)を大抜擢』だそうです」
勇者「よりによってヒロイン役かよ! N◯Kめ、俺たち以上に冒険してやがる」
魔法使い「僕たち、これでもうお払い箱ですね」
勇者「チクショーーーー‼︎‼︎」
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門番A「勇者の奴、泣きながら走ってったな」
門番B「無理もないさ、ラスボス攻略直前で職を失ったんだから」
門番A「俺たち魔王軍もとうとう解散か」
門番B「存在自体がたくさんの雇用を生み出してるってこと、魔王様はもっと自覚して欲しいよな……これからどうするよ?」
門番A「実家のちゃんこ屋つぐ。今までは門外から城を守ってたけど、これからは門外不出の白味噌ちゃんこ汁の味を守っていこうと思っている」
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