上 下
8 / 10

海へ

しおりを挟む
いったい何時間たったんだろウ?

太陽がまぶしイ。日に照らされて、ボクのボディは熱を帯びル。

ローラーも擦り切れてしまいソウ。

ボクらのボディはもうボロボロ……

デモ、デモ! なにがなんでも行くんダ海へ、バッテリーが切れる前ニ、二台一緒ニ!

海へ、海へ、海へ、海ヘ────


あの約束、一緒に世界を見に行く約束は、果たされなくっても良かったんダ、君と一緒にいる限リ。

写真集で見た渓谷の花々、極地のオーロラ、田園風景、そして黄昏の世界に沈ム太陽──

花畑の中、ボクは花を摘み、君の頭にそれを飾っタ。

オーロラの下、二台でひとつのマフラーを巻いタ。

稲刈りの終わった田んぼで、可愛らしいスズメたちが落ち穂をついばむのを眺めタ。

そして黄昏に染まる君の頭部側面を、ボクは優しく、優しくなでタ。

ライブラリーの、片隅デ。


「ねぇインモ……」

ボクの上で、ワッキーがポツリと言ウ。

「どうして、ここまでしてくれるの?」

「なぜってボクハ──」

ただ、君といられればいいっテ、それダケ。

その時だ。

ミャア、ミャアと、微かな声が降ってくル。

目を上げると遠くに、あの日、写真集で見タ──

「ワッキー! あの、白い、ツブツブは、何ダ?」

「……あれはウミネコよ」

ワッキーはボクのアームをギュッとつかんダ。

「ウミネコっていうのは鳥の仲間で、鳥っていうのはね──」

ボクらの目の前に、オレンジ色の、巨大な水のかたまりがあっタ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

先生!放課後の隣の教室から女子の喘ぎ声が聴こえました…

ヘロディア
恋愛
居残りを余儀なくされた高校生の主人公。 しかし、隣の部屋からかすかに女子の喘ぎ声が聴こえてくるのであった。 気になって覗いてみた主人公は、衝撃的な光景を目の当たりにする…

車の中で会社の後輩を喘がせている

ヘロディア
恋愛
会社の後輩と”そういう”関係にある主人公。 彼らはどこでも交わっていく…

泥々の川

フロイライン
恋愛
昭和四十九年大阪 中学三年の友谷袮留は、劣悪な家庭環境の中にありながら前向きに生きていた。 しかし、ろくでなしの父親誠の犠牲となり、ささやかな幸せさえも奪われてしまう。

溺愛ダーリンと逆シークレットベビー

葉月とに
恋愛
同棲している婚約者のモラハラに悩む優月は、ある日、通院している病院で大学時代の同級生の頼久と再会する。 立派な社会人となっていた彼に見惚れる優月だったが、彼は一児の父になっていた。しかも優月との子どもを一人で育てるシングルファザー。 優月はモラハラから抜け出すことができるのか、そして子どもっていったいどういうことなのか!?

悪役令嬢の嫁、貰ってしまいました!

西藤島 みや
恋愛
アリアス侯爵は苦悩していた。はっきり言って妻が怖いのだ。 美しく、完璧で、できないことのない有能な妻の元に婿に行ったものの、ヒロインのことを諦めきれないでいる。しかも、それがどうやら妻にもバレていて、ヒロインは冷たくされているらしい。 いつかは絶対断罪してやる!…今は怖いからできないけど。 悪役令嬢もの?ですが、主人公は元クズ王子です。二度いいます。クズですし、ヒロインさんはかなり遣り手です。 転生でもやり直しでもない、きっちり悪役令嬢の新妻と、クズ侯爵がもだもだするだけのお話です。

私に告白してきたはずの先輩が、私の友人とキスをしてました。黙って退散して食事をしていたら、ハイスペックなイケメン彼氏ができちゃったのですが。

石河 翠
恋愛
飲み会の最中に席を立った主人公。化粧室に向かった彼女は、自分に告白してきた先輩と自分の友人がキスをしている現場を目撃する。 自分への告白は、何だったのか。あまりの出来事に衝撃を受けた彼女は、そのまま行きつけの喫茶店に退散する。 そこでやけ食いをする予定が、美味しいものに満足してご機嫌に。ちょっとしてネタとして先ほどのできごとを話したところ、ずっと片想いをしていた相手に押し倒されて……。 好きなひとは高嶺の花だからと諦めつつそばにいたい主人公と、アピールし過ぎているせいで冗談だと思われている愛が重たいヒーローの恋物語。 この作品は、小説家になろう及びエブリスタでも投稿しております。 扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。

皇太子夫妻の歪んだ結婚 

夕鈴
恋愛
皇太子妃リーンは夫の秘密に気付いてしまった。 その秘密はリーンにとって許せないものだった。結婚1日目にして離縁を決意したリーンの夫婦生活の始まりだった。 本編完結してます。 番外編を更新中です。

時間が戻った令嬢は新しい婚約者が出来ました。

屋月 トム伽
恋愛
ifとして、時間が戻る前の半年間を時々入れます。(リディアとオズワルド以外はなかった事になっているのでifとしてます。) 私は、リディア・ウォード侯爵令嬢19歳だ。 婚約者のレオンハルト・グラディオ様はこの国の第2王子だ。 レオン様の誕生日パーティーで、私はエスコートなしで行くと、婚約者のレオン様はアリシア男爵令嬢と仲睦まじい姿を見せつけられた。 一人壁の花になっていると、レオン様の兄のアレク様のご友人オズワルド様と知り合う。 話が弾み、つい地がでそうになるが…。 そして、パーティーの控室で私は襲われ、倒れてしまった。 朦朧とする意識の中、最後に見えたのはオズワルド様が私の名前を叫びながら控室に飛び込んでくる姿だった…。 そして、目が覚めると、オズワルド様と半年前に時間が戻っていた。 レオン様との婚約を避ける為に、オズワルド様と婚約することになり、二人の日常が始まる。 ifとして、時間が戻る前の半年間を時々入れます。 第14回恋愛小説大賞にて奨励賞受賞

処理中です...