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【白羽の諦念】
なんか知らんけど小供の時から損ばかりして居ます
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白羽が倒れた。
彼は職場の健診で、肝機能と血糖が異常値を示したことで受診勧告を受けていたにもかかわらず、面倒で放置していたのだ。仕事が忙しかったのもある。
末期の癌であった。既に手術での切除が不可能な段階まで進行しており、医師は抗がん剤治療を勧めたが、彼はそれを拒否した。
*
白羽草介は周囲から「飄々としている」と評されることが良くあるが、飄々と生まれ飄々と大きくなってきたわけではない。
実は、彼の人生は「諦念」と共にあった。
少々長くなり申し訳ないが、よろしければお付き合い願いたい。
白羽は東京都出身で、都庁に勤める父と、専業主婦の母の元に生まれ育った。
彼は四人きょうだいの三番目、つまり姉、兄、白羽、妹という構成である。
姉は第一子ゆえに可愛がられ、兄は初の男児であり大事にされた。
しかし白羽は姉とは四歳差、兄とは年子であり、両親は多忙で白羽を可愛がるどころではなかった。
対して未子である妹は白羽とさらに六歳差で、未子特有の甘え上手な性格なのと、両親が歳をとり丸くなったのとでたいそう可愛がられた。
自分は損をしている、と物心ついた頃から彼は漠然と感じていた。
お下がりは当たり前、きょうだい間でのお菓子争奪戦にはいつも負けた。両親は他のきょうだいばかり庇い、子どもたちの乳幼児期の思い出話の中における白羽の登場回数は極めて少なかった。
例えば他のきょうだいの思い出話は「ベビーカーで散歩させていたら女子高生にキャーキャー言われた」だの、「生後九ヶ月で五歩歩いた」だの、「五ヶ月の時バナナを丸々二本平らげた」だの言う微笑ましいものだったが、白羽のただでさえ数少ないそれは、「掃き出し窓が開いているのに気付かずもたれ掛かろうとしてベランダにひっくり返った」だの、「野良犬に追いかけられて泣きながら二キロの距離を全力疾走した」だの、「父親が置きっ放しにしていたホット青汁をこぼして号泣し兄貴のねんねタイムを邪魔した」だの、痛みを伴うものばかりだった。
誰も聞いてはいなかったのだが、彼の初めて喋った言葉は「せちがらいよのなか」であった。
小学二年生の時である。
白羽はその日、学校で嫌なことがあって、トボトボと靴の先端を見つめて歩いていた。
欠席した児童の分のパイナップル入りコッペパンを巡るジャンケン大会で見事優勝したにもかかわらず、準優勝した女子が泣き始め、譲らざるを得なくなったのだ。
いつもは派閥を作ってお互い敵対し合っている女子達はここぞとばかりに団結し、白羽を責めた。
担任教諭は児童の自主性を重んじると言う名目で傍観を決め込んだ。
大人にとっては瑣末な出来事だが、八歳の白羽には大事件である。
下校していると斜向かいの爺さんが庭木に水をやっていた。
白羽を見つけた爺さんは「おかえり、どうした二男坊」と話しかけてきた。
白羽は学校での出来事を簡潔に話した。すると爺さんは、
「期待するから失望するんだ。これからの人生、さらに不愉快なことが次々起こるぞ。とにかく期待は禁物だ」
と、およそ小学校低学年の児童に、通常なら言わないようなことを言った。
白羽は彼の言葉にその時はふうんと頷いただけであったが、その夜読んでいた漫画を途中で兄に取り上げられた際にそれを思い出した。
なるほど人を変えるのが無理なら自分が変わるしかない、期待はやめよう。
もちろん完全には無理だった。しかし腹の立つ気持ちが十五パーセントくらいは軽減されたような気がした。
漫画の取り合いは労力を空費するだけだ。こいつも俺もどうせ死ぬ。
白羽はきょうだい喧嘩の際引くようになった。
白羽は期待をしないやり方を徐々に体得していった。小学生にしてそうであったのだから、元来そのような質だったのかもしれない。
彼のきょうだいは段々と白羽に構わなくなった。年齢が上がってきたのもあるだろうが、彼に絡んでも全く面白くないからだ。
すると父親が突然、剣道をやれと言ってきた。小学五年生の時である。
父親には白羽の態度が無気力に映っており、それが彼を苛立たせていた。
白羽はまだまだ甘かった。人に期待しないからと言って、決して人から干渉されない訳ではない。
父親は近所の道場の先生と町内会で天候の話題プラスアルファを話す程度の仲で、度々「四人もお子さんがいるのなら、一人くらい剣道を習わせてみてはどうですか?」と、よく分からない理屈の勧誘を受けていた。恐らくただの世間話の一環なのだろうが、父親は思い付きで白羽に道場に通うよう強制した。
心身を鍛えろ、ということであった。
それは妻に育児のほとんどを任せていた罪悪感を軽くすると共に、先生に対する近所同士の義理を果たすという、つまり父親の自己満足でもある。
同じ町内会のよしみで防具の代金も負けときますよ、という言葉も父親の背中を押した。
父親の言うことは絶対である。白羽は渋々通い始めた。取り敢えずしばらく通っていれば父親も満足するだろう、時期をみて辞めようと思った。
入って当分は礼法や体力づくりや素振り、足捌きなどをやらされたが、直接相手の面や小手に打ち込む稽古が始まると、いわゆる「覚醒」をした。
竹刀で実際に相手を打つと、彼の中の何かが震えた。
俺が求めていたものはこれだ、と思った。
彼は剣道にのめり込んだ。打つのが楽しくて仕方がなかった。
延々と打ち込み続ける地獄の掛かり稽古では、もういっそ永遠にやっていたいとさえ思った。真夏の灼熱の道場で「ヤメ!」の号令の後に「是非まだやりましょう」と提案した日には、稽古後に上級生に袋叩きにあったりもした。
周りには、「あいつはドMかドSか意味不明」と言われていた。
白羽は狙った部位に正確に打突を与える技を習得し、今度は相手を誘導し隙を作らせることに熱中し出した。
そして、やがて道場の先生に「神童」とまで呼ばれるようになる。
彼は中学に入ると迷わず剣道部に入り、六段の段位持ちだった顧問と互角に渡り合った。当然高校生になっても部活を続けた。
最終的に白羽は高校二年生の時に、全国大会で優勝することになるのだが、母親が「あら凄いじゃない」と義務的に言っただけで、家族は特に関心が無いようであった。父親に至っては、自分が二男に剣道を勧めたことすら忘れていた。
白羽は知らなかったが、その頃白羽家では長女が不倫相手との妊娠騒動を巻き起こしており、それどころではなかったのだ。
白羽はその頃には他人に期待しないというモットーに加えて他人との関係を円滑に保つ術をある程度会得していたが、やはり落胆した。
正直に言うとかなり応えた。彼はどこかで、まだ両親に手放しで褒めてもらいたかったのかもしれない。
思春期だったこともあり、剣道やって、で、それで? という心境にもなった。
惰性で部活は続け、やがて三年生になり引退した。
彼はそれから長く剣道から離れることになる。
同級生達は当然のように進学準備を始めていたが、彼は就職を希望した。
兄と姉が二人とも私立の大学に進学し、おまけに一人暮らしをしたため、白羽に残された教育資金はもはやなかった。
大学に行くなら奨学金を借りるよう言われ、そこまでして進学して何になると思ったのだ。ちなみに六歳下の妹は、兄や姉の資金援助もあり私大に進み、異性との交遊にかまけ、ちゃっかり一留までした。
時は就職氷河期真っ只中。
彼は飄々と何社も受け続け、飄々と不採用通知を受け続けた。諦念だけでは腹は膨れないため、仕事を見つけなければならない。
そして四十五社目に受けた会社にようやく内定を貰った。小さな薬品卸の会社だった。仕事内容を簡単に言うと、医療機関に薬品を配達したり、情報を提供したりするのである。
白羽はそこで十年間働いた。
取引先の重役の家の草むしりを貴重な休日にやらされたり、外来が終わるのを長時間待った挙句当直明けの医師に邪険にされたり、調剤薬局に配達に行った際丁度出没した不快害虫の駆除を薬剤師に命ぜられたりしたが、モットーを貫き淡々と仕事をこなした。
しかし、こと恋愛に関しては、モットー故に上手くいかなかった。
交際に至るまでは良いのだ。彼の飄々っぷりは一部の女性には余裕ある大人の男性として魅力的に映るようだった。しかしいざ付き合うとなると、女達は白羽にありとあらゆることを期待した。
やれ記念日だの、やれ何処そこへ連れて行けだの、オチのない話を最後まで笑顔で聞けだの、微妙な髪型の変化に気付いてべた褒めにしろだの、せっかく作った味噌汁に青汁をかけるなだの、相談事には正論で返すのではなく共感しろだの、うるさいことこの上ない。
交際二日目で「式の入場にはゴンドラを使いましょうね」と提案された時は心底ゾッとした。
彼はプライベートまでも人に気を遣いたくなかった。女達はそれを、自分に関する無関心だと捉えた。
あなたと話していると木の人形に語りかけている気になるとか、そんなにオチのある話が欲しかったら寄席に落語を聞きに行け、とまで言われた。
単に彼は、不運にも相性の良い女性との出会いがなかったのであった。
恋愛も結婚も義務ではない、彼はプライベートを一人で過ごすことを優先するようになる。
そもそも仕事が忙しく、月日がピュンピュン過ぎていった。剣道をやっていたことなど思い出さないくらい多忙だった。彼はいつの間にか二十七歳になっていた。
やがて転機が訪れる。取引先のクリニックの待合室に、妖物が出現したのである。
彼は職場の健診で、肝機能と血糖が異常値を示したことで受診勧告を受けていたにもかかわらず、面倒で放置していたのだ。仕事が忙しかったのもある。
末期の癌であった。既に手術での切除が不可能な段階まで進行しており、医師は抗がん剤治療を勧めたが、彼はそれを拒否した。
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白羽草介は周囲から「飄々としている」と評されることが良くあるが、飄々と生まれ飄々と大きくなってきたわけではない。
実は、彼の人生は「諦念」と共にあった。
少々長くなり申し訳ないが、よろしければお付き合い願いたい。
白羽は東京都出身で、都庁に勤める父と、専業主婦の母の元に生まれ育った。
彼は四人きょうだいの三番目、つまり姉、兄、白羽、妹という構成である。
姉は第一子ゆえに可愛がられ、兄は初の男児であり大事にされた。
しかし白羽は姉とは四歳差、兄とは年子であり、両親は多忙で白羽を可愛がるどころではなかった。
対して未子である妹は白羽とさらに六歳差で、未子特有の甘え上手な性格なのと、両親が歳をとり丸くなったのとでたいそう可愛がられた。
自分は損をしている、と物心ついた頃から彼は漠然と感じていた。
お下がりは当たり前、きょうだい間でのお菓子争奪戦にはいつも負けた。両親は他のきょうだいばかり庇い、子どもたちの乳幼児期の思い出話の中における白羽の登場回数は極めて少なかった。
例えば他のきょうだいの思い出話は「ベビーカーで散歩させていたら女子高生にキャーキャー言われた」だの、「生後九ヶ月で五歩歩いた」だの、「五ヶ月の時バナナを丸々二本平らげた」だの言う微笑ましいものだったが、白羽のただでさえ数少ないそれは、「掃き出し窓が開いているのに気付かずもたれ掛かろうとしてベランダにひっくり返った」だの、「野良犬に追いかけられて泣きながら二キロの距離を全力疾走した」だの、「父親が置きっ放しにしていたホット青汁をこぼして号泣し兄貴のねんねタイムを邪魔した」だの、痛みを伴うものばかりだった。
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いつもは派閥を作ってお互い敵対し合っている女子達はここぞとばかりに団結し、白羽を責めた。
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大人にとっては瑣末な出来事だが、八歳の白羽には大事件である。
下校していると斜向かいの爺さんが庭木に水をやっていた。
白羽を見つけた爺さんは「おかえり、どうした二男坊」と話しかけてきた。
白羽は学校での出来事を簡潔に話した。すると爺さんは、
「期待するから失望するんだ。これからの人生、さらに不愉快なことが次々起こるぞ。とにかく期待は禁物だ」
と、およそ小学校低学年の児童に、通常なら言わないようなことを言った。
白羽は彼の言葉にその時はふうんと頷いただけであったが、その夜読んでいた漫画を途中で兄に取り上げられた際にそれを思い出した。
なるほど人を変えるのが無理なら自分が変わるしかない、期待はやめよう。
もちろん完全には無理だった。しかし腹の立つ気持ちが十五パーセントくらいは軽減されたような気がした。
漫画の取り合いは労力を空費するだけだ。こいつも俺もどうせ死ぬ。
白羽はきょうだい喧嘩の際引くようになった。
白羽は期待をしないやり方を徐々に体得していった。小学生にしてそうであったのだから、元来そのような質だったのかもしれない。
彼のきょうだいは段々と白羽に構わなくなった。年齢が上がってきたのもあるだろうが、彼に絡んでも全く面白くないからだ。
すると父親が突然、剣道をやれと言ってきた。小学五年生の時である。
父親には白羽の態度が無気力に映っており、それが彼を苛立たせていた。
白羽はまだまだ甘かった。人に期待しないからと言って、決して人から干渉されない訳ではない。
父親は近所の道場の先生と町内会で天候の話題プラスアルファを話す程度の仲で、度々「四人もお子さんがいるのなら、一人くらい剣道を習わせてみてはどうですか?」と、よく分からない理屈の勧誘を受けていた。恐らくただの世間話の一環なのだろうが、父親は思い付きで白羽に道場に通うよう強制した。
心身を鍛えろ、ということであった。
それは妻に育児のほとんどを任せていた罪悪感を軽くすると共に、先生に対する近所同士の義理を果たすという、つまり父親の自己満足でもある。
同じ町内会のよしみで防具の代金も負けときますよ、という言葉も父親の背中を押した。
父親の言うことは絶対である。白羽は渋々通い始めた。取り敢えずしばらく通っていれば父親も満足するだろう、時期をみて辞めようと思った。
入って当分は礼法や体力づくりや素振り、足捌きなどをやらされたが、直接相手の面や小手に打ち込む稽古が始まると、いわゆる「覚醒」をした。
竹刀で実際に相手を打つと、彼の中の何かが震えた。
俺が求めていたものはこれだ、と思った。
彼は剣道にのめり込んだ。打つのが楽しくて仕方がなかった。
延々と打ち込み続ける地獄の掛かり稽古では、もういっそ永遠にやっていたいとさえ思った。真夏の灼熱の道場で「ヤメ!」の号令の後に「是非まだやりましょう」と提案した日には、稽古後に上級生に袋叩きにあったりもした。
周りには、「あいつはドMかドSか意味不明」と言われていた。
白羽は狙った部位に正確に打突を与える技を習得し、今度は相手を誘導し隙を作らせることに熱中し出した。
そして、やがて道場の先生に「神童」とまで呼ばれるようになる。
彼は中学に入ると迷わず剣道部に入り、六段の段位持ちだった顧問と互角に渡り合った。当然高校生になっても部活を続けた。
最終的に白羽は高校二年生の時に、全国大会で優勝することになるのだが、母親が「あら凄いじゃない」と義務的に言っただけで、家族は特に関心が無いようであった。父親に至っては、自分が二男に剣道を勧めたことすら忘れていた。
白羽は知らなかったが、その頃白羽家では長女が不倫相手との妊娠騒動を巻き起こしており、それどころではなかったのだ。
白羽はその頃には他人に期待しないというモットーに加えて他人との関係を円滑に保つ術をある程度会得していたが、やはり落胆した。
正直に言うとかなり応えた。彼はどこかで、まだ両親に手放しで褒めてもらいたかったのかもしれない。
思春期だったこともあり、剣道やって、で、それで? という心境にもなった。
惰性で部活は続け、やがて三年生になり引退した。
彼はそれから長く剣道から離れることになる。
同級生達は当然のように進学準備を始めていたが、彼は就職を希望した。
兄と姉が二人とも私立の大学に進学し、おまけに一人暮らしをしたため、白羽に残された教育資金はもはやなかった。
大学に行くなら奨学金を借りるよう言われ、そこまでして進学して何になると思ったのだ。ちなみに六歳下の妹は、兄や姉の資金援助もあり私大に進み、異性との交遊にかまけ、ちゃっかり一留までした。
時は就職氷河期真っ只中。
彼は飄々と何社も受け続け、飄々と不採用通知を受け続けた。諦念だけでは腹は膨れないため、仕事を見つけなければならない。
そして四十五社目に受けた会社にようやく内定を貰った。小さな薬品卸の会社だった。仕事内容を簡単に言うと、医療機関に薬品を配達したり、情報を提供したりするのである。
白羽はそこで十年間働いた。
取引先の重役の家の草むしりを貴重な休日にやらされたり、外来が終わるのを長時間待った挙句当直明けの医師に邪険にされたり、調剤薬局に配達に行った際丁度出没した不快害虫の駆除を薬剤師に命ぜられたりしたが、モットーを貫き淡々と仕事をこなした。
しかし、こと恋愛に関しては、モットー故に上手くいかなかった。
交際に至るまでは良いのだ。彼の飄々っぷりは一部の女性には余裕ある大人の男性として魅力的に映るようだった。しかしいざ付き合うとなると、女達は白羽にありとあらゆることを期待した。
やれ記念日だの、やれ何処そこへ連れて行けだの、オチのない話を最後まで笑顔で聞けだの、微妙な髪型の変化に気付いてべた褒めにしろだの、せっかく作った味噌汁に青汁をかけるなだの、相談事には正論で返すのではなく共感しろだの、うるさいことこの上ない。
交際二日目で「式の入場にはゴンドラを使いましょうね」と提案された時は心底ゾッとした。
彼はプライベートまでも人に気を遣いたくなかった。女達はそれを、自分に関する無関心だと捉えた。
あなたと話していると木の人形に語りかけている気になるとか、そんなにオチのある話が欲しかったら寄席に落語を聞きに行け、とまで言われた。
単に彼は、不運にも相性の良い女性との出会いがなかったのであった。
恋愛も結婚も義務ではない、彼はプライベートを一人で過ごすことを優先するようになる。
そもそも仕事が忙しく、月日がピュンピュン過ぎていった。剣道をやっていたことなど思い出さないくらい多忙だった。彼はいつの間にか二十七歳になっていた。
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