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3話 服を買いに行く
2.お出かけ
しおりを挟む「だからさぁ、選んであげて欲しいんだよね」
「ふぅん……? で、それがお前の妹の友達っていう」
「はじめましてっ」
本当は二度目ましてのあつしを前にあずきは元気よく挨拶した。
悩んだけど服なら彼に選んでもらうのが正解な気がする。SNSでよくファッションの投稿を載せてるし、人気があるから間違いないと思う。この顔だからパン一でも人気出そうだけど。
あずきはシンプルに妹の友達だと紹介する事にした。
流石に妹は巻き込めなくて、急遽来られなくなったと嘘をついたけど。
「はじめまして、名前は?」
「あずきですっ」
「あっ」
あずきは正直に答えてしまった。
あつしが怪訝な顔になる。妹の友達と同じ名前を自分の犬につけたのかと聞かれたので、たまたまだと答えた……というかそうとしか言いようがない。
だいぶ苦しい言い訳だ。でもまさかあの豆柴が目の前の女の子とは思わないらしく、納得いかない顔のままへぇと言った。
今日は駅前で待ち合わせて、あつしの知ってるショップを見て回ろうと話していた。
あずきは興味深そうにキョロキョロとあたりを見回す。街中に出た経験があまりないんだろうか。
「いつも今日みたいな服着てんの? こんなんが好きなの?」
「あずきはお洋服のこととか全然わからないので、あつしくんに教えてほしいですっ」
あずきはあつしをキラキラした目で見上げる。
ふーんと気のない返事をしたけど、彼も満更ではなさそうだ。手元のスマホをスクロールして、いく店を決めたらしくさっさと先に立って歩き出した。
土曜なこともありとにかく人が多い。看板や呼び込み、街頭モニターにさえ目を奪われて道を逸れてしまうあずきを見失わないように、何度も引っ張って元のルートに戻した。
「その子どっかド田舎から来たの? お前の実家ってどこだっけ」
「いや、そう言う訳じゃないんだけど……」
どこから来たのかと言われたら、電信柱の下に落ちてたのだ。
その前は公園で、その前はおばあちゃん家で……
……——そういえばあずきはどこで生まれて、どんな人生? を歩んできたんだろう。
進んで語ることはないから聞いた事がなかった。
赤ちゃんみたいな見た目だけど本人いわく成犬なのだ。実は想像より長く生きてるのかもしれない。
本人に聞いてみたらどんな話が聞けるんだろう……今度試しに聞いてみたい。
今身に付けてる丸襟のブラウスと、エンジ色のジャンパースカートは誰に選んでもらったのかとか。
「ここなんだけど」
「へーっ」
あつしが案内したのは、個人経営らしい小さなショップだった。看板にお洒落なデザインで AEGITitと書かれてる。
ショーウィンドウには女物のメルヘンなワンピースを着たトルソーがきれいにディスプレイされていた。明らかに若い女の子向けのお店だ。
……何でこの女嫌いはこんな店を知ってるんだろ。
疑問に思わないでもなかったけど、興味津々のあずきを連れて入り口のドアをくぐった。
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