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1話 豆柴の恩返し
2.おとなである
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「あのっ、昨日は拾ってくれてありがとうございましたっ」
「……え? あ、待って警察に連絡するから……」
「えっ!? じゃあ保健所とかがきますかっ!?」
「分かんないけど保護はされると思うよとりあえず」
震える手でスマホを握る。すると少女がぴょんとはねて背中に飛び乗ってきた。
無闇な接触は避けたい。微物検査とかされたら終わる。焦りに手汗でスマホが滑る。
「頼むから離れて……!」
「じゃあっ警察を呼ばないでくださいっ! 昨日はせっかく逃げ出してきたのに、殺処分はいやですっ」
保護した女の子を殺処分はしないと思う。なぜそんな勘違いをしてるんだろ。それに昨日は何から逃げてきたのだ?
振り返ると、彼女の不機嫌そうな顔立ちはそのまま青ざめ、今にも泣き出しそうな顔になっていた。
何かとしがらみが多そうな拾い物をしてしまった……。
「おちついて、人間は殺処分されたりしないから大丈夫だよ」
「犬はどうなりますかっ?」
「犬は……まぁない事もないだろうけど」
殺処分ですか? と聞かれたのでそうだと答えた。
僕は内心それを許せない事だと思ってる。でも嘘をつくのは違う気がして正直に伝えた。
彼女の顔がみるみる血の気を失くしていく。この子もそういう事が許せない性質なのかも知れない。
優しい子だ。早く警察に連れて行きたい。
「じゃあダメですっ!!」
「……なんで!?」
「あのっ、わ、わたしっ死にたくないのでっ……」
「だから人間は大丈夫だよ。あくまで犬の話で」
「わたし犬ですっ」
彼女は大きな声ではっきりそう言った。大きく開いた口からやけに立派な犬歯がのぞく。
たしかに拾った時は柴の子犬だと思ったけど今はどう見ても人間の少女だ。
子どもの冗談に付き合ってるヒマはない。君は犬じゃないでしょ? とできるだけ優しくさとすと、じゃあ証拠を見せますという。
怪訝な顔で見つめていると彼女は身を縮めるような仕草をした。何のつもりなのだ? ……そう思ってふっと瞬きをした次の瞬間、クッションの上にいたのは昨日のあの柴の子犬だった。
しっかり自分の脚で立って、様子を伺うようにこちらを見上げてる。
どうやら命は助かったようだ。黒目がちな丸い目と鼻先がうるりと潤んでる。僕は感慨のあまり子犬を持ち上げ腕に抱いた。
「お前助かったのか!よかったな~~」
「……あのっ」
……ふと聞き覚えのある声が聞こえた。
頬擦りをやめしばし逡巡した。嫌な予感がする。
肩からがばっと子犬を引き離すと、そこにはあの幼女がいた。おわた。さよなら娑婆。
……——しかし一体どういう事なんだろう。子犬がいなくなったと思ったら女の子がいた。女の子がいなくなったら犬がいて、また女の子が……。
「あの柴の子犬がきみなの……?」
「……そうなんですけどっ、あのっ……」
「なに?」
少女は言った、柴は柴でも豆柴なので自分はこれで成犬なのだと。
何を信じていいのか余計分からなくなってしまった。
「……え? あ、待って警察に連絡するから……」
「えっ!? じゃあ保健所とかがきますかっ!?」
「分かんないけど保護はされると思うよとりあえず」
震える手でスマホを握る。すると少女がぴょんとはねて背中に飛び乗ってきた。
無闇な接触は避けたい。微物検査とかされたら終わる。焦りに手汗でスマホが滑る。
「頼むから離れて……!」
「じゃあっ警察を呼ばないでくださいっ! 昨日はせっかく逃げ出してきたのに、殺処分はいやですっ」
保護した女の子を殺処分はしないと思う。なぜそんな勘違いをしてるんだろ。それに昨日は何から逃げてきたのだ?
振り返ると、彼女の不機嫌そうな顔立ちはそのまま青ざめ、今にも泣き出しそうな顔になっていた。
何かとしがらみが多そうな拾い物をしてしまった……。
「おちついて、人間は殺処分されたりしないから大丈夫だよ」
「犬はどうなりますかっ?」
「犬は……まぁない事もないだろうけど」
殺処分ですか? と聞かれたのでそうだと答えた。
僕は内心それを許せない事だと思ってる。でも嘘をつくのは違う気がして正直に伝えた。
彼女の顔がみるみる血の気を失くしていく。この子もそういう事が許せない性質なのかも知れない。
優しい子だ。早く警察に連れて行きたい。
「じゃあダメですっ!!」
「……なんで!?」
「あのっ、わ、わたしっ死にたくないのでっ……」
「だから人間は大丈夫だよ。あくまで犬の話で」
「わたし犬ですっ」
彼女は大きな声ではっきりそう言った。大きく開いた口からやけに立派な犬歯がのぞく。
たしかに拾った時は柴の子犬だと思ったけど今はどう見ても人間の少女だ。
子どもの冗談に付き合ってるヒマはない。君は犬じゃないでしょ? とできるだけ優しくさとすと、じゃあ証拠を見せますという。
怪訝な顔で見つめていると彼女は身を縮めるような仕草をした。何のつもりなのだ? ……そう思ってふっと瞬きをした次の瞬間、クッションの上にいたのは昨日のあの柴の子犬だった。
しっかり自分の脚で立って、様子を伺うようにこちらを見上げてる。
どうやら命は助かったようだ。黒目がちな丸い目と鼻先がうるりと潤んでる。僕は感慨のあまり子犬を持ち上げ腕に抱いた。
「お前助かったのか!よかったな~~」
「……あのっ」
……ふと聞き覚えのある声が聞こえた。
頬擦りをやめしばし逡巡した。嫌な予感がする。
肩からがばっと子犬を引き離すと、そこにはあの幼女がいた。おわた。さよなら娑婆。
……——しかし一体どういう事なんだろう。子犬がいなくなったと思ったら女の子がいた。女の子がいなくなったら犬がいて、また女の子が……。
「あの柴の子犬がきみなの……?」
「……そうなんですけどっ、あのっ……」
「なに?」
少女は言った、柴は柴でも豆柴なので自分はこれで成犬なのだと。
何を信じていいのか余計分からなくなってしまった。
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