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2話 友達がくる
5. 秘密
しおりを挟む「マジで好きなんだな」
「何が?」
電車はもう夜の中を走る。扉にもたれスマホを弄っていたあつしは、そう聞き返してからハッとした顔をした。
見てたのかよとひそめた声で言う顔が必死で面白い。僕が言ったのはさっき部屋であずきと遊んでた時の事だ。
笑いを堪えてたら、苦虫を噛み潰したような顔でため息をついた。いつも通り頬は白いが耳が赤い。
普段は無表情で尊大なあつしは、意外に色んな顔を持ってる。僕はそれをずい分短い間に知る事になった。
こいつとのこの付き合いは奇異な偶然の連続の産物だった。
「なんでお前にばっかり色々ばれるんだろうな」
「僕だっただけまだ良くない?」
「それは本当にそうだわ」
あつしはそう言って眉間に皺を寄せ髪を掻き上げた。
真っ直ぐな細い毛がサラサラと流れる。中々絵になる。
向こうの座席でロゴが散りばめられたリュックを抱いた女の子たちが、口元を隠してコソコソ話しているのが見える。
「また女の子が見てるよ」
「……やめろよマジで」
「だっていつもじゃん、お前の話してるよ」
「やめて! マジで……」
マジで怖いから。あつしはそう言った。
そう、彼は女が怖いのだ。
正確に言うと女性ではなくておっぱいが怖いらしい。世にも珍しいおっぱい恐怖症だ。
大きければ大きいほど恐怖心が増大するらしく、相手がナイスバディであればあるほど、塩対応どころか傷口に塩を塗り込むくらいの勢いで女に冷たくなる。
普通あっても逆なんじゃないだろうか……。
ところが、強めの外見のあつしに寄ってくるのは強めの女の子が多いから、彼の心労たるや凄まじいらしい。
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