fの幻話

26.失したもの

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　傍シューベルグ家の婿ヒューゴがシノムを襲って、二つの家のあいだには亀裂が入った。

　シノムが彼をそそのかしたという疑わしい証言が疑心暗鬼を生んだのだ。

　ヒューゴが欲をかいたのか、シノムが調子づいたのか。


「それだけならまだよかったんです。いつかお三方の間の誤解は解けたかもしれません。

しかしそのあと当のヒューゴさまが姿を消されてしまったんです」


　襲撃事件のすぐあとヒューゴはふらりといなくなり、二度ともどらなかった。

　家族も荷物も執着した財産もすべて置き去りにして。


「……だからエディトさまは旦那さまがなにかしたんじゃないかって」

「なんですって？」


　エディトはシノムが仕返しに夫を手にかけたと疑ったのだ。

　ラースもまさかとは思いながら、誰一人真実を知るものはなかった。

　シノムは曽祖父がしたように再び一家とその姉妹へいくらかの財産をわけ、二つの家はその結びつきを解消してしまったそうだ。

　父を亡くしたばかりのシノムは、それからよけい孤独になってしまった。


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