fの幻話

ちゃあき

文字の大きさ
上 下
49 / 73
22.楽園は地下に

X◆

しおりを挟む

◆◆◆◆

 シノムと名乗る男とはじめて出会ったのはいまから500年ほど昔になる。

 彼は今のシノムよりずっと私に似ていた。

 私たちの一族は東から来た。
 長いあいだ地底を落日のほうへ、地上に文明を見つけてからはその痕跡をたどり北上するに至った。

 そしてあるときこの巨大な金脈を見つけたのだ。

 ここはまるでなつかしい日の出の国のようだった。

 金は我々にとって貴重な餌食のひとつなのだ。我々は黄金の国からきたのだから。

 ……——しかし不思議なことがあり、ときどき金脈のむこうから見慣れない人間が迷いこんでくる。

 不思議に思い、好奇心に駆られた我々は金のむこうがわへ境界をこえた。

 それが500年前のことだ。

◆◆◆◆
しおりを挟む

処理中です...