fの幻話

ちゃあき

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5. 開いた部屋

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 フォーリーヴ子爵邸でフィオナからの手紙を受け取ったヒンスは、ゾッとしない物を感じていた。


 シューベルグ伯爵は確かにこの上ない好人物だ。しかし、あんな辺境の深い森の奥へずっと閉じこもっていたら気分も狂ってしまいかねない。


 今度夫婦でこちらへ遊びにでも出てこないかと誘おうとして、その返事の書き方を考えていた。


 ——また、ヒンスがまだ実家に残ったのには理由がある。彼の大叔母に当たる伯爵夫人の誕生パーティに顔を出すためだ。


 大叔母は一族の中で最も高齢で、彼女の誕生日は一族総出で祝うのが慣わしとなっている。
 それなりの人出があるから、バンフィールド子爵の事も何か聞けるかもしれない。


 これが済めばまた、一度西方の国境警備へ戻りその後は恐らく中央へ戻される可能性が高い。


 その頃にでも、伯爵夫妻をあの陰気な城から連れ出せればと考えていた。
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