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5. 開いた部屋
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ヒンスを見送ってしばらく経ち、庭師の大男を城に呼ぶ時期が来た。
シューベルグ城の召使いは老人や女が多かったため、あの分厚くて硬いカシ材の不思議なドアを打ち破れそうな者は誰もいなかった。
だからシノムは彼に頼んで、そのドアにハサミではなく、斧を振るって貰うことにしたのだ。
真っ昼間に伯爵夫妻と召使い達の見守る目の前で、そのドアは見事に打ち壊された。
歓声すら上がりそうな所で、伯爵が進み出て部屋の中へ入り、真珠色のカーテンをさっと開く。
「あっ……!」
部屋の中は、やはりあの夢と全く同じだった。
シルクのリネンのかかった大きなベッドも、扉と同じ重厚なカシ材の机も、鏡台も、アンネース姫のいた窓辺の揺り椅子も。
足りないのはあの美しい子爵令嬢の姿だけだった。
「……同じかい?」
「そうみたい」
フィオナはまた少し恐怖を感じる。
青い顔をしていたら、シノムが僕がもう少し調べてみるから部屋で休むといいと言うので、召使いに支えられ寝室へ戻って行った。
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