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2. 城の鍵
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はじめ疑いもしたが、付き合えば付き合うほどシノムは温厚で引っ込み思案な青年だと分かってきた。
フィオナは元来お喋りが好きな明るい娘だから、シノムを捕まえては彼に問答を仕掛けて、時には笑わせ、時には困らせるのが楽しみになっていった。
「旦那さまはどうして、ここにひとりで住んでいるの?」
「先祖代々の城だからだよ。それに召使い達がいるだろう?」
「でも貴方のお父様やお母様や他の一族たちはどうしてしまったの?」
「両親はもう死んでしまった。一族達は父が死んだ時、勝手に財産を持ち出して、散り散りに暮らしやすいところへ移って行ってしまったよ」
寂しくないのかと聞くと、苦笑いしてそれは寂しいという。
だけどこれからは君が、ずっとここにいてくれるのだろうと——、伯爵はその緑の双眸でじっとフィオナを見つめた。
フィオナは見つめられて、なぜかドキドキして顔が熱くなる。その様子を見て、はじめてシノムの方がフィオナを笑った。
何か言い返そうとすると、黙ってその頬に手を添え優しく引き寄せてキスをした。
「君がここにいてくれるから、僕はもう寂しくはないよ」
そう言って微笑んでくれた夫の姿に、フィオナの中にはじめて恋するという気持ちが生まれた。
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