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2章 名前のない魔王編

22名前のない魔王

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 まさかのヴェルジークが好きじゃない発言に、イオはしばらく硬直しやっと正気に戻るとフリエスが笑っていた。ロゼットとティオドールは、笑いを堪えている。

「アハハハハハ!どうやったら、俺がヴェルのこと恋愛対象として見るんだよ~。可愛い勘違いだな、イオ」
「え、ぇ・・・だって、前にヴェルジークが振られても俺は見捨てないからって・・・」
「あ~、アレな?まぁ、確かにヴェルの人柄も好きだし騎士として尊敬はしてるけど恋愛対象には世界が滅んでもならないな。俺は可愛い女の子と付き合う!」
「えっ、え・・・ッ!」
「フリエス・ゾラは、ロリコン変態なのです」
「コラァ!ロゼット、嘘を教えるなっての!お前こそ14歳以下の少年にしか興味ないショタコン変態だろ!」
「失礼ですね、穢れた大人になる前の天使達を見守っているのです。エオルがあと2歳若ければ・・・惜しい」
「ヒッ!?」
「どっちもどっちなんだけど・・・」

 名指しされたエオルは、怯えてイオにくっついた。そして暴露された突然の二人の好みは置いといて、イオは勘違いだとわかると恥ずかしさで顔を赤くして俯く。そんなイオに気を使わせないように、フリエスは普通に接する。

「イオがヴェルのこと好きになってくれてよかった」
「あ・・・」
「きっとお前なら上手く続くさ」
「・・・ありがとう。なんでヴェルジークって、恋人になった人と続かないのかな?あんなに大切にしてくれるのに」
「うーん、構いすぎるヴェルが悪いだけじゃないんだけどアレじゃないか?他の女の子から嫉妬されて嫌がらせされた子もいるし。私もうヴェルジーク様とお付き合いするの耐えられないって行方不明になった子も居たな・・・」
「・・・そうなんだ」
「まぁ、男と付き合うのは初めてだからこれからどうなるかわからないけどな」
「ぅっ・・・」

 気持ちを大事にしすぎるヴェルジークも、大事にされながらも去るしかない理由を持つ者もどちらが悪とはいえないが今はヴェルジークが好きな気持ちを大事にしようとイオは思った。
 少しだけ肩の荷が降りた気がして、またイオに笑顔が戻る。

「暗い話はよそうぜ?」
「うん。そういえば、フリエスはこの魔剣を持ってた魔王ってどういうのか知ってる?」
「魔王?なんで?」
「いや、ほら・・・魔剣の所持者ってどんな魔族かなって思って」
「あれから調べたんだけど残されてる文献によると、その魔剣の持ち主は歴代の魔王の中で唯一名前がないな。というかわざわざ名乗らなかったんだろ。自分から攻めて来ないけど、敵対者には容赦なかったみたいだな。魔王に挑んで生き残れたのって、当時の勇者一行くらいじゃないか?」
「その名前のない魔王って死んだんだよね?」
「あぁ、そうらしいな。闇より深い黒髪と、見る者を魅了する紫の瞳の絶世の美人だとかなんとか」



───あぁ、我が親愛なる魔王よ。御身の夜の濡れ羽色の髪は闇より深く、紫の毒の如き妖艶な瞳は心まで溶かし・・


  以前、ケンさんにが魔王に対する気持ち悪いほど恥ずかしいポエムの内容と魔王の容姿が一致している。

「イオも、綺麗な黒髪と紫の瞳だよな」
「絶世の美人じゃないけどね。オレの住んでた世界には、紫の瞳の人はほぼ居なかったからこっちでも珍しいんだね」
「赤とか紫の瞳は、魔族が多いからな。イオは完璧に人間みたいだけど」
「オレは平凡な一般市民だからね」

 フリエスは少し感が鋭そうだと、イオは自分が魔王の生まれ変わりと気付かれないようにはぐらかした。

「じゃあ、今の魔王は?」
「今の魔王は竜神族の竜王ファルドレイ。名無しの魔王と違って好戦的で暴君と呼ばれている。こいつに対抗するのに、聖剣降臨をしようとしたのもあるな」
「竜王か・・・どんなんだろ。やっぱり羽も生えてカッコイイのかな」
「彼が歩くと荒れ地しか残らないと言われるほど残忍極まりない魔族です」
「そんなに・・・」
 
 エオルが少し辛そうに答えたのをイオは気になったがそれ以上は何も聞けなかった。
 食事を終えると、フリエスが午後から仕事になるので王都ソフィエールに戻るようだった。そしてなぜか同行に誘われた。

「イオも一緒に任務同行するか?」
「騎士の仕事だろ?一般市民が同行したらまずいんじゃないか」
「あぁ、大丈夫、大丈夫!任務って言ってもお子様の護衛だし」
「お子様?どっかの貴族の子とか?」
「団長の子供」
「・・・・・・・・え?」
「ハルバースタム団長の子供、ユーリエ・チェインちゃん5歳の散歩の護衛」

「えぇ──────────!?」

 ハルバースタム団長の子供にも驚いたが、幼女の散歩とか護衛内容にも驚きのイオだった。
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