上 下
11 / 41
序 魔剣転生

10騎士の魔剣になりました

しおりを挟む
 降臨の神殿にておこった魔剣騒動を、アーシア陛下に事細かく報告した。前世が魔王である事は、ヴェルジークにも伏せている。
 ちなみにイオが騎士団を蹴散らしたのは、アーシア陛下に火を付ける要因となるのでそれも伏せておいた。

「なるほど、イオは何らかの理由で転生し魔剣と一体化したと。魔剣の声はイオにしかわからぬようなので、今の所確かめる術はないようだな」
「ですが魔剣は瘴気が治まり、イオが所持しても問題はないようです」
「陛下、私も魔剣を手にしましたが瘴気で穢れたり先日のように暴走するなどの異常はありませんでした」
「魔剣とオレは一体化してるみたいで、側にいないとダメみたいです」
「ふむ、イオの滞在場所を考えねばならないようだ。地下牢にずっと置くのは忍びない」
「騎士団に置くのも危険でありますな」

 仮に王国の何処に居たとしても強大な魔力を持つ魔剣が王の元にあるだけで、他国の不信感を抱かれかねない。
 そして魔剣の所有者であるイオ自身も危険に合う可能性が高い。慎重にかつ不自然でない方法で、イオを隠す必要があった。

「恐れながら陛下」
「なんだ、ヴェルジーク」
「私の屋敷に使用人見習いとして置くのは如何でしょうか。私の屋敷ならば王都からも近く管理しやすいでしょう」
「と言って、お前が独占したいのであろう」
「そのような邪な気は一切ありません、陛下よりは」

 一国の王に対して不敬罪に当たる発言を堂々とする、仮にも騎士団の副団長ヴェルジーク。彼の首が飛ばないのがいつも不思議で仕方ない周囲の者達だった。

「やはりメリュジーナ侯爵家より、チェイン公爵家が適任であろうか」
「恐れながら!恐れながら陛下!我が家には目に入れても痛くない程将来有望な嫁入り前の愛娘がおります故に!丁重にお断りいたしますぞ!」
「親バカめ。お前の娘はまだ5歳であろう」
「やはり、私の屋敷に置きましょう。家の執事にしっかり教育をさせます」
「あー、ヴェルの家のスーパー執事すっごいよな」
「腑に落ちぬが、まぁメリュジーナ侯爵家に身を置く事を許可する」
「王様、ありがとうございます!よろしくお願いします、ヴェルジークさん」
「こちらこそ、不憫のないように迎えよう」

 さすがにアーシア陛下や周囲の目がある場では、ヴェルジークに敬称する。イオはひとまずヴェルジークの屋敷に滞在し、使用人見習いとして身分を隠す事になった。

「残る問題はやはり、魔剣か。イオ、魔剣は聖剣に戻るかお前から切り離す事はできぬのか?」
「どうですかね・・・」
『聖剣は眠っておるし、我もわからぬ』
「えっと・・・聖剣は眠っていて、今はわからないそうです」 
「なるほど。ではしばらくは魔剣に関する情報収集に努めよ」
「はっ!」

 一同はアーシア陛下に膝まずき、謁見は終了した。フリエスも兵舎に戻るらしく、後で遊びに行くと告げられ別れた。


 イオは今夜は地下牢ではなく、兵舎のヴェルジークの自室に泊まる許可を貰う。2日後の出立前に、屋敷に書状を届けるとヴェルジークは机に座って居た。
 湯浴みを終えたイオは寝間着用ワンピースに着替えベッドの端に座って、何か魔剣と話していた。書き終えたのかヴェルジークが、イオの隣に座る。

「イオ、魔剣と会話していたのか?」
「傍から見ると独り言の危ない人だよね」
「確かに。外では会話はしない方がいいな」
「魔剣に名前を付けた」
「ほう、どんな?」
「ケンさん!」
「・・・」

 剣だから、《ケンさん》。安直なネーミングセンスである。イオは多分センスはない。

「わかり易い名前だな」
『こやつ、絶対王の事を頭悪いと思ったぞ』
「ケンさんはちょっと大人しくしててね」
『わっ、王よ!?なぜ我に布を被せるのだ』
「後でいっぱい磨いてあげるから」
『絶対であるな!?よいか、約束であるぞ!』

 大人しく布に包まれ、壁に立てかけられたケンさんである。

「神殿でフリエスがお前を守るのは誰かと聞いたな」
「うん?」
「本当は私が守ると答えたかったが、副団長として部下の手前即座に反応が出来なかった」
「あー、うん大丈夫!副団長って大変そう」
「だが今ここに宣言させて欲しい」
「えっ?」
「イオ、俺の命をかけ君を守ろう」
「っ、ぁ、ありがとう。あ、あれだよね!我が剣に誓って守るっていう!」

 イオは男前なヴェルジークに見つめられて照れた。自分が女の子だったら別の意味に捉えそうだ。
 ふとイオの肩に手が置かれ、ヴェルジークの顔が近付いてくる。

「イオ・・・」
「・・・・んっ」

 イオはヴェルジークに、キスされた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【R18】うさぎのオメガは銀狼のアルファの腕の中

夕日(夕日凪)
BL
レイラ・ハーネスは、しがないうさぎ獣人のオメガである。 ある日レイラが経営している花屋に気高き狼獣人の侯爵、そしてアルファであるリオネルが現れて……。 「毎日、花を届けて欲しいのだが」 そんな一言からはじまる、溺愛に満ちた恋のお話。

願いの守護獣 チートなもふもふに転生したからには全力でペットになりたい

戌葉
ファンタジー
気付くと、もふもふに生まれ変わって、誰もいない森の雪の上に寝ていた。 人恋しさに森を出て、途中で魔物に間違われたりもしたけど、馬に助けられ騎士に保護してもらえた。正体はオレ自身でも分からないし、チートな魔法もまだ上手く使いこなせないけど、全力で可愛く頑張るのでペットとして飼ってください! チートな魔法のせいで狙われたり、自分でも分かっていなかった正体のおかげでとんでもないことに巻き込まれちゃったりするけど、オレが目指すのはぐーたらペット生活だ!! ※「1-7」で正体が判明します。「精霊の愛し子編」や番外編、「美食の守護獣」ではすでに正体が分かっていますので、お気を付けください。 番外編「美食の守護獣 ~チートなもふもふに転生したからには全力で食い倒れたい」 「冒険者編」と「精霊の愛し子編」の間の食い倒れツアーのお話です。 https://www.alphapolis.co.jp/novel/2227451/394680824

モフモフになった魔術師はエリート騎士の愛に困惑中

risashy
BL
魔術師団の落ちこぼれ魔術師、ローランド。 任務中にひょんなことからモフモフに変幻し、人間に戻れなくなってしまう。そんなところを騎士団の有望株アルヴィンに拾われ、命拾いしていた。 快適なペット生活を満喫する中、実はアルヴィンが自分を好きだと知る。 アルヴィンから語られる自分への愛に、ローランドは戸惑うものの——? 24000字程度の短編です。 ※BL(ボーイズラブ)作品です。 この作品は小説家になろうさんでも公開します。

一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!

当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。 しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。 彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。 このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。 しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。 好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。 ※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*) ※他のサイトにも重複投稿しています。

膀胱を虐められる男の子の話

煬帝
BL
常におしがま膀胱プレイ 男に監禁されアブノーマルなプレイにどんどんハマっていってしまうノーマルゲイの男の子の話 膀胱責め.尿道責め.おしっこ我慢.調教.SM.拘束.お仕置き.主従.首輪.軟禁(監禁含む)

BLが蔓延る異世界に転生したので大人しく僕もボーイズラブを楽しみます~愛されチートボーイは冒険者に溺愛される~

はるはう
BL
『童貞のまま死ぬかも』 気が付くと異世界へと転生してしまった大学生、奏人(かなと)。 目を開けるとそこは、男だらけのBL世界だった。 巨根の友人から夜這い未遂の年上医師まで、僕は今日もみんなと元気にS〇Xでこの世の窮地を救います! 果たして奏人は、この世界でなりたかったヒーローになれるのか? ※エロありの話には★マークがついています

おしゃべり魔獣の衛兵隊長は平隊員に依存している

清田いい鳥
BL
「そこの御者さん止まってー! ごめんねーちょっと中見せてもらっていい? 急いでる? そっかそっかー、じゃあこっちも急いで中見せてもらうから。すぐ終わるよー大丈夫! どこから来たのー?」 おしゃべり魔獣と名高いうちの衛兵隊長は、今日もよく口が回る。 学園の同級生だったサンダー。うるさいのを差し引いても器量と実力がある男。天に二物を与えられた彼の進路は、てっきり王宮騎士団だと思っていた。……なんで衛兵になっちゃったの? なんで同じ職場なの? なんで私にセクハラするの?? 捕縛するぞこの野郎!! 脅威の捕縛率であっという間に昇進したサンダーと、彼の捕縛から逃れようとする平衛兵マリウスの日常物語です。 現職警官の方が仕事を思い出してスン……とならないよう、出来るだけ現代語を排してあります。 交番勤務と生活安全課の仕事が混ざっているかと思いますが、馬車にスピード違反もクソもございませんのと、馬車の話ばかりだと私が飽きますのでその点ご了承ください。 つまりこういうことです。せーの、「ファンタジーだからー!」

Switch!〜僕とイケメンな地獄の裁判官様の溺愛異世界冒険記〜

天咲 琴葉
BL
幼い頃から精霊や神々の姿が見えていた悠理。 彼は美しい神社で、家族や仲間達に愛され、幸せに暮らしていた。 しかし、ある日、『燃える様な真紅の瞳』をした男と出逢ったことで、彼の運命は大きく変化していく。 幾重にも襲い掛かる運命の荒波の果て、悠理は一度解けてしまった絆を結び直せるのか――。 運命に翻弄されても尚、出逢い続ける――宿命と絆の和風ファンタジー。

処理中です...