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一章
最終試験(1)
しおりを挟む訓練は全て終了し、いよいよ最終試験へ旅立つ日となった。
班の編成としてはこのチームに入ることを嫌がる人が殺到した。そのためアルと少しずつ距離を縮めていた飯を温めてあげていた人達が殆どとなっていた。それでも足りなかった人数はジャンケンで負けた人達となった。
そのため他の班は100人を少し超えているのだが、この班は100人ピッタリの人数となっており、1番人数が少ない。
各班はそれぞれ魔物に襲われたことのある村に半月ほど滞在することとなっている。魔物退治と言っても村自体は既に既存の兵達が守っている。今回はその際逃したり、また村の近辺にいる魔物を狩る事が目的とされているのだ。
それぞれの班が向かう先としては上官が選んでおり、さっき発表された所だった。
アル達は馬に乗って3日程のところにある村へ向かうことになった。保護者組の2人の実家がある場所ではないらしい。
いざ出発となったのだが、アルは自分で走った方が早いため動物に乗ったこともなかった。そう、皆馬での移動だったのだが乗れないアルは護衛対象役のシルと一緒に馬車に乗せてもらうこととなった。
アルの教育係だと思っている2人は帰ってから乗馬の特訓をさせようと各々心の中で決意したのだった。
それを知らない呑気なアルは初めての馬車に喜んで乗り込んでいる。が、数時間も経つと飽きてしまっていた。
そこでシルは戦略についてアルに話して聞かせた。アルは難しい事はわからないのだが、退屈な時間をつぶすのにはちょうど良く大人しく聴いていた。
少し日が陰ってきた頃本日野宿する場所を決め、各自役割分担し準備にかかった。シルはテント張り、カストは火を起こす為の木の収集。アルは食べられる物を集めてくることとなった。
アルは近くに居る動物達を見渡すも小さな生き物ばっかりで100人もの兵士の空腹を満たすには全く足りないだろう。その為大物を探す為少し遠くまで獲物を探しに行くことにしたのだ。兵士は2人以上で行動するように言われていたのだが、アルは全くその話を聞いていなかった為、1人で少し遠くまで獲物を狩に行ったのだった。
アルは満足のいく大きさのウサギと熊を捕まえ、調理担当者の方へ向かった。
調理担当者はアルの持っている規格外のウサギと熊を見て固まる。
ギャーと悲鳴が響き渡る。
近くにいた兵達が何事かと集まってくる。シルとカストもだ。
調理担当係はビクビクとアルを見つめ言葉を発しようとしなかった。
アルの横にあるウサギと熊を見ればある程度予想はつくものの、アルに話を聞く。
「人数が結構いたから、大きめの獲物を取ってきた。」
と得意げに話している。
調理担当係がやっと話せるようになった為話を聞くと、どうやら獲物達が大きく、アルが小さかったことでこの騒ぎが起こってしまったようだ。アルが見えなかった事で、血まみれな巨大ウサギと熊が自分達に襲い掛かろうとしているように見えたらしい。
皆しょうもない理由だった為直ぐにそれぞれの持ち場へ戻ったのだった。アルはカストに手を引かれ一緒に木の収集をすることになった。
アルはその最中師匠と暮らしていた時に食べていたキノコや草も収集していた。カストはアルが毒キノコを取ろうとしているのを見つけ止めるのだが、
「コレは肌の色が変わって面白いし、コレは身体中にブツブツが出来て面白いし、コッチはピリッとした味がして美味しいんだ。」
と説明し出した。要するに全て毒キノコか毒の薬草だったのだ。カストは
「面白いのは僕にくれたらいいから、皆には普通の面白味のない物を取ってあげて。」
と促すと、アルはわかったと素直にしたがった。
だがカストは念のため草やキノコ図鑑を持っている人を探し安全なことを確認してから調理担当者に渡したのだった。
さすがオカンである。アルのフォローまで完璧である。
そうして皆はアルの活躍もあり美味しいご飯を食べる事ができた。
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